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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
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青薔薇隊 5

 遠くに聞こえていた羽音はすぐに大きくなり、クラックホーネットが集まり始める。

 しかし建物が崩れるのを警戒してか、それとも生体兵器が捕食しようと飛び掛かってくるのを警戒しているのか、建物より下にはめったに降りてはこずアサヒたちは引き続き建物の陰に隠れ移動する。


「しかし、変な生体兵器もいたもんだね。生体兵器を乗っ取るだなんて、行動が単純だったのはあいつが操っていたからなんてものありそうだねぇ」

「よく考えてみたんだが、あの生体兵器のベースは虱だった。元は人に寄生するのが目的の第三世代だったんではないかと思っている。時の流れで適用し数の減った人ではなく生体兵器に取り付くようになったと考えれば納得もいく」


「人に? でもあんな動きじゃ戦えないだろう、正面から飛び掛かるだなんて的もいいところだと思うんだけどねぇ」

「もし襲ってくるのが敵ではなく友軍だったら、指揮系統に混乱が起きるだろ。どの程度まで操れるのか知らないが武器の扱いや会話なども操作できたら危険な生体兵器だったと思う。詳しく調べないとわからないがな」


「頭の回転が速いねぇ、いろいろ考えて疲れないかい? 私はみんなで魔都から出ること以外なんも考えてないよ」

「俺は隊長だからな。俺自身だけじゃなくキイやフルタカ、作戦に参加するほかの仲間のことも考えなければならない」


 キイたちの会話中、黙って二人の後をついていくフルタカ。

 戦闘になった場所へと向かうクラックホーネットの数が増し、そのつど建物の奥へと隠れてやり過ごす。


「そういやフルタカ、私たちの話に入ってこないね。どうしたんだい?」

「大型のエクエリ持って走ってるからあんま体力使いたくないんだよ。むしろよなんで二人は話しながら進んでるのかが疑問だ」


「寂しからじゃない、私ら以外誰もいないこの灰色な世界さ、黙って黙々と走ってたら悲しい気分になるじゃないか」

「悲しくなるか? 普通の廃墟と何も変わらないだろうよ」


「そうさ、どこにでもある廃墟。そういうのを見るたびに私は寂しくなるのさ。昔は人が住んでいて楽しいことやうれしいことがたくさんあったはず。生体兵器さえなければ今も続いてたと思うとね」

「まぁ、確かに廃墟とはいえ当時のまま人にいた痕跡があるからな。俺らが居なくなった後のヒバチシェルターもこんな感じなのかと思う時はあるけどよ」


 キイとの会話の最中、急にアサヒのほうへと向かっていきフルタカが進む先を指をさす。


「おいアサヒよ、正面に誰かいるのが見えた。生体兵器じゃない、人だ」

「どこだ?」


 指さされた方向に目を凝らすが何も見えない。

 とはいえフルタカが見間違いをするわけがないとアサヒはその言葉を信じる。


「まっすぐ進んだ先のよ、向こうに見えるシャッタ―の閉まった建物の奥だ。複数人いた。先に逃げた一般兵と精鋭じゃないかとは思うがよ、一瞬すぎて服装は見ていなかったからどっちかはわからねぇ」

「わかった、追いつくためにもう少し走る速度をあげるがついてこれるかフルタカ? 携帯端末の電波が届く距離200メートル以内まで接近したい」


「すこしなら問題ないぜ、行けよついていくからよ。昨日の崩落の時だって俺のほうがお前より足も速く体力あったろうがよ」

「わかった。遅れるな」


 青薔薇隊が人影を見かけた方向へと向かって走り出す。

 そして追いかけていた方向では戦闘が起きていて空に向かって光の弾が撃ちあがる。


「戦ってる、追いついたのかね!」

「合流する位置ではないが、向こうも何かがあって逃げ道を変更したのかもな」

「キイ、アサヒ、隠れろ!」


 戦闘の影響か唐突に建物が崩れ、揺れと土煙を伴って青薔薇隊の道を塞ぎ、フルタカの警告で建物の中に飛び込む。

 そのすぐ後に崩れた建物の無数の瓦礫が三人の横を高速で通り過ぎ壁に穴をあけた。


「乗り越えるぞ、戦闘はすぐそこで起きている。ここで追いつく」

「上にクラックホーネットが来てる、隠れなくていいのかい」

「上ばっか見て、隙間に足を取られるなよ。くそ、歩きづらい」


 瓦礫を乗り越えている最中、倒壊に巻き込まれ生き埋めになった瀕死の生体兵器が這い出てきてフルタカに襲い掛かる。

 体当たりを受け転倒するがアサヒが援護し、生体兵器がフルタカから離れたところでエクエリを構え至近距離からの大型の一撃が入り倒す。


「いきなり出てきてびっくりしたぜ、攻撃受けちまったがよ」

「怪我は?」


「ない、腿を噛まれたけどよ痛くもなんとも」

「なら進むぞ」


 戦っているのは数匹の大型の蜘蛛。

 細い足は長くリーチを生かし数匹いるすべてが、建物の陰から戦っている者たちに向かって大雑把に攻撃をしている。

 さらに大型の蜘蛛は自分の糸を足につけそれを建物に接着していく、粘着性の糸の様で攻撃のため建物より低く飛んできた小型のクラックホーネットがたった一本の糸に触れただけで身動き取れなくなる。


「足に発行体のついた蜘蛛の大型か、おおきいねぇ。体小さいままでさらに足だけが長くなってる。もう足が本体より質量あるんじゃないかい?」

「加勢するぞ、ひとまずあいつらのおかげでクラックホーネットが襲ってくることはない」


 少し前にアサヒたちが戦った寄生型との戦闘音を聞きつけ集まっていたクラックホーネットが、そのままこちら側に集まってきて戦闘の空は混沌としていた。


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