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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
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青薔薇隊 3

 

 アサヒが飛び出るタイミングを見図るため空を見上げている間、キイとフルタカの二人は道の向こう側を見て息を整える。


「行くぞ。先にフルタカ、次に俺、キイ遅れるなよ」

「ああ、俺から行くよ」「あいよ、私が最後だね」


 そして青薔薇隊は建物から飛び出す。

 遮蔽物のない道路に出たところで真上を通りかかった3匹のクラックホーネットに見つかり、生体兵器たちは即座に飛び掛かってきた。


「来るぞ!」


 尻の先から長い針を伸ばし勢いをつけ降下してくる小型の蜂たちをエクエリで迎え撃つが、光の弾を身に受けながら勢い変わらず急降下してきて三人は横に飛んで躱すが追尾してくる。


 キイは向かってくる一匹の腹の一部を切り裂いて毒針を落とす。

 残りの二人はエクエリを盾にして針の直撃を防ぐが、そのままの体当たりの勢いで横へと吹き飛ばされる三人。

 すぐに立ち上がると仲間の無事を確認し、今まで同様逃げることを優先し建物へと向かう。


「そういや、私たちせっかく篝火設置したのに、黄薔薇隊みたいにみんなに報告しなかったね」

「そんな余裕なかっただろ、逃げるだけで精いっぱいだ」


「他もこんな感じに逃げてるのかな」


 建物までもうすこしというところで遠くから今までにない重たい地響きと揺れ。

 そして道路に大きな亀裂が入って地割れが起こる。


「うわっ、ちょいと! 地面が割れて!」

「走れ! 建物の側面と伝って上を確認しながら止まるな!」

「休憩はなしかよ、まったくつらいな。なんなんだこの揺れは」


 亀裂は砲撃支援のある巣の入り口のほうから延びてきていて走る三人のもとへと延びていく。

 そして三人の後ろで割れた地面は建物などとともにゆっくりと下へと沈み込む。

 地面が崩れ倒れてきた建物がぶつかり合い無数の瓦礫となり降り注ぐ道路から逃げるようにアサヒたちを追うクラックホーネットたちは距離を取った。


「崩落だ、落ちたら助からない。ここも危ないぞ」

「何で急に落ちるんだい。これなんなのさ」


 道路を渡りきり建物の脇をそって走り続ける。


「前に言っただろ、クラックホーネットが襲ってくる前、魔都の地下にシェルターを作っていたと。それが今老朽化した未完成シェルターの柱が砲撃の振動で崩壊し潰れている」

「シェルターの規模は、どの程度これは続くんだい?」


「完成はしなかったらしいが、数十万人が避難できる規模のシェルターだったらしい」

「じゅ……え、そんなに? その辺のシェルターの倍以上の人工じゃないか、それってもちろん食料プラントやその他施設とかもこみこみだよね。そんなデカい街一つを地下に移す気だったのかい」


「当時の人間に聞け。そこまでは知らない」

「生きてはいないだろうよ」


 こうしている間にも背後では建物が崩れ地中へと沈んでいき地面のひび割れはアサヒたちへと延びてくる。

 空には小型だけでなく大型の蜂の姿も増え生体兵器たちは魔都の外、砲撃の飛んでくる方向へと向かって飛んでいく。


 崩落した地面は地下鉄やパイプラインの後の遥か下に巨大な空間。

 地割れを起こし落下した地面は土埃を上げていて深さがしっかりとは見えないが、街が丸ごと沈んで大穴として残る。


「これこの規模、他の隊、巻き込まれたりしてないよね」

「わからん、今は自分たちのことだけ考えろ」


「重たい荷物捨てちゃうかい? 身軽になれば少しは……」

「この後も生体兵器と戦う。お前のスキットルなら捨ててもいいがバッテリーやエクエリは捨てるな。刀も捨てるなこっちに渡せ」


 アサヒはキイが走るのに邪魔になっていた刀を受け取り、身軽になった彼女は二人を置いて先へと走りだすが建物を地中へと引き込む地割れが走る三人を追い抜く。


「これはっ!」

「やばいよなっ!」


 三人を追い抜いた地面の亀裂はあっという間に四方に伸び広がりアサヒとフルタカの前に大きなひびが入ると同時に地面が落ちはじめ、自分の前にひびが入るとフルタカは力の限り地面を蹴り大きく跳躍した。


「くっそ、落ちる!」


 フルタカは崩壊の止まった地面に転がりながら着地したが飛ぶのが遅れたアサヒが、先を走り振り返るキイと起き上がるフルタカの視界から消えさる。


「あ、アサヒ!」「おいおい、こんなんで死ぬなよ」


 安全な場所まで走り抜けたキイが落下を警戒し穴の淵に近づいていく。

 アサヒは崩落に巻き込まれながらも崩壊の止まった場所に黒刀を突き立てて崩れた地面の断面にぶら下がっていた。


「フルタカ、引き上げてくれ」

「あいよ、吃驚したぜ心臓に悪い」


 キイが空の警戒をしている間、大型のエクエリを置きフルタカは小さな足場に捕まるのがやっとなアサヒを引き上げる。

 広がっていた地割れは止まり三人は空からの攻撃に気をつけながら近くの崩れていない建物の陰に逃げ込んだ。


「無事か?」

「ああ、少しひやりとしたがぎりぎりのところで崩落が止まってくれたおかげで助かった。そうじゃなかったら十数メートル下に落ちるところだった。お前は無事だったか」


「ああ、ひびが入ってきたのが見えたから少しでも崩落の遅そうな場所に進路を変えて跳んだ」

「そうか、ならみんな無事だな」


 かぶっていたマスクを外しキイが土埃を払っていたアサヒに抱き着く。

 強く強く疲れ切ったお互いの体が軋むほどに。


「まったく生きた心地がしないよ、アサヒが私の前から消えたとき眩暈がしたんだから! この戦いが終わっても私たちはこれからも一緒に戦い抜くんだから、死んだらだめだからね。私の目を見て」


 アサヒの防護マスクを外し眼を合わせる。


「生きて。絶対、みんなでこの魔都から脱出しよう」


 キイの力に一瞬硬直するアサヒ。

 彼女は力をかけ終わると今度はフルタカのほうへと向かっていく。


「フルタカも、三人で生きて敵を討って生体兵器を狩りつくす。それまで死んじゃ駄目だから」


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