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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
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青薔薇隊 2

 最初の一撃以降立て続けに起きる爆発。

 着弾位置はバラバラで広範囲に散らばり飛んでくる高性能爆薬の砲弾は、老朽化した周囲の建物を巻き込んで倒壊する。

 生体兵器の半数はどこからかの攻撃に驚き周囲に散らばり、何が起きたか確認しに青薔薇隊の追跡から離れていった。

 キイは背負った荷物から黒い軍刀を取りだし抜き、鞘を捨て前に回り込んできた小型の蜂の関節部を狙う。


 砲撃の直撃を受けた大型の蜂は跡形もなく吹き飛び、周囲にいた小型の蜂も爆発の破片と衝撃波を受けバラバラになる。

 走る青薔薇隊が建物を抜けると残してきた車両が見え、三人は霧用の防護マスクをつけ霧の中に入った。

 最大の濃さで撒かれている霧は近づけばお互いの影しか見えなくなるほど濃度が濃いがすぐに風に流され当たりに散らされる。


「これ、車両で逃げたほうがいいんじゃないかい? 絶対足で走るより早い」

「なら乗ってけ、巣穴から溢れんばかりに出ようとしているだろうクラックホーネットから見つからずに逃げ切れるのなら。行っておくが戦車も重装甲車でも大型のクラックホーネットの顎の力の前には紙同然だぞ? バリバリ削られる。霧も魔都脱出まで持たないし、風に流されてそもそも走行中は機能していない」


「ならやめておく、霧がないのならよまったく意味がないからな」

「懸命だな」


 追ってくる生体兵器は霧に中には追ってはこず、霧から大きく離れ遠巻きから様子を見ている。

 その間も爆音は響き続け最初アサヒたちが逃げ込んだ建物が崩れ落ちた。

 崩れた後には背の高い建物が吹き飛び見晴らしの良くなった巣のあった場所が見え、生体兵器のつくった建造物、6本の塔も倒れ燃えていた。


 土煙と黒煙の上がる巣穴からは大型の生体兵器が噴き出るように、次々と地面から空に向かって飛び出していて爆風に巻き込まれバラバラになっていく。

 風の流れる方向と同じ方向に走り建物を目指すフルタカは先を走っていたアサヒと並んだ。


「霧のおかげで追ってこないくなったよな」

「ああ、だが霧の範囲から抜ければまた飛び掛かってくる。それまでに建物の中に逃げ込め。小型も飛行能力が生かせず機動性が落ち、大型なら身動きがとるのも厳しくなるからな」


「それ、狭いところに誘い込む典型的な飛行型の対処と大型の生体兵器の対処だよな」

「まぁ、生体兵器だからな。最も飛び道具と頭数がある分この逃げ方も厳しいんだが。霧の効果がなくなってからが本番だ、追ってこないからって気を抜くなよ」


 霧を散らそうと複数匹で集まって羽ばたいてみるが濃い霧が吹き飛ばされることはない。

 高所から毒をまくが防護マスクと迷彩マントを羽織った三人には効き目がない。


「ちょいとちょいと、この雨もしかして毒なんじゃないかい?」

「そうだ、走ってマスクないが曇ったからって不要にマスクを外すなよ。一滴で致死量に近い毒がこの量だ助からない」


「やばいじゃないか」

「どうしようもない、あきらめろ」


 クラックホーネット達は建物の一部を崩すが霧が視界を悪くし、何とか三人は建物の中に逃げこんだ。

 建物内は砲撃の振動で天井から細かな埃が舞い落ち、不安定な位置にある瓦礫が音を立てて倒れている。


「あぶなかった、もう少し瓦礫を落としてくるのが早かったら……」

「毒をまくことにこだわってたのに助けられたな」


 建物内は錆たり腐ったり風化した何かが広い空間を埋め尽くしていた。

 室内は狭く物も多く進むのに困難だが外より安全なため、三人は埃を舞わせ邪魔な物をかき分け進んでいく。


 時折窓のほうへと近づいて外の様子を見るアサヒ。

 外はクラックホーネットの羽音と砲撃の爆発音が響いてきていた。


「早く先に逃げた精鋭たちと合流したいが」

「方向は分かっても今どのあたりにいるのかわからないね。それにしても荷物が多い、ここ荷物多くない? どうなってんの」


「ここは見たところ会社や店が立ち並ぶビル街のようだな。開発系シェルターだと思えばわかるだろう」

「なるほど……来るときも見えた街並みはそのほとんどがお店だった、シェルター数個分にも匹敵するお店の数……きっとこのあたりはすごかったんだろうねぇ」


「ところでキイ、ここではあぶないからその軍刀をしまっておけ。傷口作ってそこに毒が流れたらあぶない」

「それがさ、どうせ戦いで折れちまうからって思ってさ鞘は早々に捨てちまったよ。大きな建物に逃げこんだから、この建物の室内もう少し広いと思ってたんだけど」


 キイは怪我をしないよう強化繊維で守られている足のほうへと刃を下に向け、扉を蹴り破り進んでいく二人の後に続く。

 そこへ室内に隠れていた小型の蜘蛛生体兵器が飛び出してくる。


「そうだよね、ここにいるのはクラックホーネットだけじゃなかった」


 反射的に蜘蛛の体に刃を突き立てて攻撃を躱し、フルタカが援護で大型のエクエリの光の弾が頭を吹き飛ばす。

 まだ頭を失った蜘蛛は動いているがキイは体に刺さった刀を抜き体液を振り払い、アサヒとフルタカの後を追って建物内を移動していく。


 ドアをけ破り建物の裏口からまた別の建物へと入る。

 建物の間からわずかに見える空はクラックホーネットが慌ただしく飛び回っていて不用意に開けた場所に出ることはできない。

 建物の中はどこも同じようにものが散らかり時折生体兵器が這い出てきて、致命傷を追わせ追跡能力を奪いその後は放置し奥へと進む。

 殺しても殺さなくても生体兵器の体液の臭いに別の生体兵器が寄ってくるためだ。


「魔都を出るには向こうに見える建物のほうへ行かないとだめだ。一度建物を出る、次の建物まで走れよ。外にはクラックホーネットが大量に飛んでいる見つかり次第突っ込んでくるぞ」

「重たい荷物持ってたフルタカがへばってきた。この防護マスク取ってどこかで休めないかい?」


 大型のエクエリを持つフルタカが息を切らせてアサヒとキイの後から遅れてくる。


「向こうに渡ったら一度休む。それでいいかフルタカ」

「ああ、助かるよ」


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