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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
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青薔薇隊 1

 巣を確認するとアサヒはキイの肩を掴んで姿勢を低くしたまま移動し来た道を戻り始め、建物の中央あたりまで来てから立ち上がり重装甲車の待つ方へと移動する。

 砲撃が始まり生体兵器の建造物から続々と小型の生体兵器が出てくると羽音を立てて一斉に飛び立つ、キイは生体兵器たちを視線は追って砲撃を受けている土煙の上がる地域を見ていた。


「俺は他の精鋭に連絡をかける。キイはフルタカに連絡を取れ。見つかる可能性があるから急ぎ用件だけを伝えるんだ」

「了解」


 瓦礫だらけの屋内を歩きながら二人は携帯端末を取り出し連絡を取る。

 通信距離は短いが生体兵器に察知される恐れもあり、話す声は小さくどんな小さな音も聞き逃さないように慎重に建物の奥へと隠れ、建物を出て車両のほうへと向かっていると他の精鋭たちも車両を目指して戻ってきていて重装甲車のもとへと集まった。

 連絡で指示を受けたフルタカの指示で強化外骨格をつけた一般兵たちが篝火を白い砂の地面におろすと一般兵たちは重装甲車を盾にするように隠れる。


「これをどこにもっていかせればいいんだよ?」


 フルタカがアサヒのもとへとやってくると篝火を指さす。

 凹凸の少ない四角い鉄の箱は傷なくここまで運び込むことができ、後はこれを起動させ帰るだけ。

 キイは重装甲車の中へと戻っていった。


「篝火の設置は開けた場所という話だったが、そんなことをすれば設置する前に見つかる。できるだけ近づきたいところだが巣のある位置は何かの公園だったのか大きく開けていて近づけない」

「篝火を置く理想的な場所に巣なんて最悪なものが置かれてるな。それじゃどうするんだよ? 建物の中を移動して向こうの建造物のほうまで行くのか?」


「篝火が電波増幅装置という機械である以上建物の上というのが最善なのだが、重量的にこの老朽化した建物の床を踏みぬく恐れがある」

「それじゃどこに仕掛けるよ」


 フルタカの問いにアサヒは重装甲車を指さした。


「この車両の上だ」

「なん?」


「車両の上に乗せ巣とむけて走らせる。巣へと落ちても困るのでゆっくりと走らせ生体兵器の攻撃で地面に落とす。壊れるかもしれないが頑丈さを信じるしかない」

「おい、なんかここに来て急にざつだよな。でもまぁ支援砲撃の的になるやつだし壊しちゃってもいいのか。でもどうやって乗せるよ」


「この重装甲車を建物に寄せろ。その辺の廃車を集めて階段にし持ち上げる」

「ここにきて一般兵を働かせるよな」


「力仕事担当で連れてきたのだから当然だろう。それに一般兵30人連れてきて篝火を動かすのは数人で足りる、残りがひまをしているだろ」

「そうだな、んじゃ俺らは周囲の警戒でもしてるよ」


 フルタカにした指示を一般兵たちにもし、すぐに行動に移させ重装甲車の後ろのコンテナを外し牽引車両の上に篝火を乗せる。

 車内からキイが二人のもとへ水筒に口をつけながら帰ってきた。


「ぷはっ、うま。アサヒ、フルタカ、これ何してんの? みんなでこの重装甲車の上に乗って帰るの?」

「この上に篝火を置いて走らせる。……ところでキイ」


 フルタカとアサヒの視線がキイの手に持つものに向けられると、彼女はそっと内ポケットにそれをしまう。


「なんだい?」

「そのスキットル、確か装甲トラックに置いてきたと思ったんだが?」


「……そうだっけかい?」

「持ち出したな。中身は酒か? 何考えている、帰るまで我慢できなかったのか?」


「寒いんだよぉ、体あっためる程度で済ませるから」

「なんかもう怒る気力すらない。酔うなよ、これから逃げるんだから」


 篝火の電源を入れいつでも装置を起動できる状態にして、精鋭と一般兵たちはその場を離れる。

 出発前にアサヒが霧の発生装置を取り外して回収し鞄に入れる。


「退路を開く精鋭と一般兵は先に逃げろ。運転は青薔薇隊がする自力で追いつくため我々を待つ必要はない。我々が出発後、殿を任された隊は各車両の霧を発生させてから撤退を」


 準備が整い篝火を乗せた装甲車両は広場に向けて走り出した。

 背後で残された車両の霧が撒かれていくのを見て、角を曲がり建物群を抜け巣のある広場を目指す。

 直線で速度を緩め装置を起動させたキイとフルタカが飛び降り、ハンドルとアクセルを固定しアサヒも車両から飛び降りた。

 白い砂にまみれながら立ち上がり素早く建物の中に避難する。


「早く、アサヒ。見つかってる!」


 新たに建造物から重たい羽音を立て飛び立ちアサヒたちに向かってくる小型の生体兵器。

 しかしアサヒたちより先に生体兵器の集団は重装甲車に襲い掛かり重装甲車はあっという間に横転した。

 地面の巣穴からも大型の蜂が次々と顔を出し羽を震わせ白い砂が舞う。


 遅れて建物に逃げ込んだアサヒ、フルタカが手を伸ばし奥へと引き込む。


「早くここから離れろ、砲撃が来る」

「わかってるけどよ、どうする。先に逃げた精鋭に追いつくって言ってたけどよ、もう結構遠くへ行っただろ」


 生体兵器に群がれる篝火、一部の生体兵器がアサヒたちを追って建物へと飛んでくる。

 小型の生体兵器とはいえサイズは2メートルほど。

 自由に飛び回れるかは別として建物の中に入ってくることはでき、顎をカチカチと鳴らしながら入り込んでくる。


「やっぱ飛ぶ生体兵器は早いねぇ! ひゃー」

「もう追いつかれるぞこれ!」


 一匹二匹倒したところでその勢いは止まらない。

 数が増え壁や天井を破壊しながら建物内へと入り続ける生体兵器。

 アサヒが重装甲車から取り外してきた霧の発生装置を起動させ床に落とす。


 広く散らばる霧は、生体兵器と青薔薇隊を分ける。


「これやばいんじゃないかい。思ってる以上にこっち来てるんだけど」

「この霧を避けてすぐに追いつかれる。ここを抜け車両のところまで逃げ切りに濃い霧の中に曲げれて逃げる」

「そこまで来れ行けるのかよ!」


 建物を出たところにも生体兵器が待っていて、羽を震わせ顎を開いて飛び掛かろうとしている。

 その時、爆音がすべてを吹き飛ばした。


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