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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
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白い砂 5

 生体兵器の作った建造物に向かって走っていると朽ちたアスファルトやコンクリートの地面の色が変わり、白い砂が地表を覆っている。

 二両の重装甲車、九両の戦車の車列は白い砂地に入ったところでアサヒの指示で道の中心から離れ停車した。

 バッテリーの入ったカバンを持ちエクエリをホルスターにいれ、迷彩マントを羽織ると霧ように持参した防護マスクをキイへと投げ渡す。


「こりゃなんだい?」

「また、毒液をまく可能性があるからな。霧もだが目や口に入れるなよ」


 そういうとアサヒは携帯端末で連絡を入れる。


「一般兵は待機、精鋭は霧を防ぐ用のマスクをもって目や口を毒雨の攻撃から守るようにして迷彩マントを羽織り外へ。近くの建物の中を移動し生体兵器が出入りできそうな地面の穴を探してくれ。ここで戦闘を起こせば巣から大量の増援が出てくる可能性がある。生体兵器の巣が近い分、通信は察知される可能性があるので最小限でたのむ。なるべく生体兵器に見つからない行動を」


 他の車両に指示を出すとアサヒも外へと出る用意をしドアを開け、エクエリを構えゆっくりと重装甲車から降りると砂に足跡が付く。


「白砂、巣は近いな。特定危険種の縄張りにいつもあるやつだ、さすが災害種ともなると量が違うな。ここからは降りて探す」

「見えてるあれも巣なんだろぃ? しかし、この生体兵器の住処のピリつく感じ嫌いだなぁ。私、この砂嫌なんだよね。見ててすごく悲しくなる。それを踏まないといけないって感じると胸が苦しくなるよ」


「全部、長い時間がたって砕けた骨だからな。人も生体兵器も区別はつかないが。さぁ、行くぞ上に注意し建物の外に出るな」

「この砂、ほとんど人なんだろ? 国だったころの人々、ハギとヒバチの住人に、時折発生する物資輸送や資材回収で起きる奇襲での被害者たち。何万人くらいの骨なのか考えたくもないな、歩けなくなる」


 車内を出て白いサラサラとした細かな砂粒の上に立つ。

 薄く積もっただけの白砂は踏むと周囲に散り下の地面の色が見える。


「フルタカは?」

「何かあったときの連絡要員だ。無線機は壊れているからな、篝火の防衛に置いていく」


「そうかい、というか重装甲車に乗せてあったバイクいつの間にか落ちちゃってるね。小型に群がられた時かな」

「だろうな、どのみちバイク二台じゃ全員で逃げられないから置いていく」


「せっかく持ってきたのにもったいない」

「もうないんだがな」


 キイは足元に手を合わせて少し黙とうしてから降り立ちそこに足跡をつけていく。

 姿勢は低く走って建物の影へ、装甲車からも精鋭たちが降り巣穴を探しに隊ごとに別れバラバラに建物の中へ入っていった。


「アサヒ、何か聞こえないかい? 足音とは違う、何か……」


 キイに言われ耳を澄ませると風に流れてくる小さな音が聞こえる。

 車両に乗っていては感じられなかった小さな揺れ。

 今いる建物の中から外の様子をうかがうことができず、建物を反響し音の聞こえる方向もわからない。


「確かに何か聞こえるな」

「上に登れば何かわかるかも、階段探して上の階に行ってみるかい? 巣も上からのほうが見つけやすいかも」


「いや、上の階だと見つかった際、飛べる飛行型の生体兵器に囲まれ逃げ道を塞がれるから上には上らない。遠いが支援砲撃のようだな。突入位置は2キロと離れていなかったはずだが黄薔薇隊はどこに篝火を仕掛けたんだ?」

「よかった、ここまで来て拠点側が全滅していたら意味がなかったもんね。ふぅ、これで作戦はなんとかクリアできそうじゃないか。案外拠点を攻撃したってのはアサヒの考えすぎだったんじゃないかい?」


「魔都を出て帰ればわかることだろ。なんであれ作戦はまだ続いている、篝火を仕掛けるぞ」

「了解さ。ここまで来たならさっさと決着をつけようじゃないか」


 位置を変えて移動し見えてきた生体兵器による巨大な建造物は6本。

 大きく影を落とすそのまだら模様の壁に小型の生体兵器の姿が見える。


「寒いのに外いるんだねぇ。昆虫型は寒いの苦手なんじゃなかったかい?」

「生体兵器はデカいからな一度動き出せば発生する熱量も大きい。もっともエネルギーの消費が大きいからそれを抑えるために昔からの習性で越冬する個体が多いが」


「そうなると、クラックホーネットは違うってことか」

「他はそう思っているらしい。魔都内に住む他の生体兵器から身を守ったり、魔都の外で活動する中型の目撃報告もあるしな。クラックホーネットは春に他の生体兵器が活動する時期とともに増え、秋に冬をこえる分だけを残し数を減らすとされていて今回の作戦はそれをもととに建てられている」


「思ってるらしいって、アサヒは違うのかい?」

「それだと、冬にシュトルムが攻めてきているはずなんだ。しかし長い間そうしなかったってことは、冬にも戦力を隠している可能性がある。シュトルムがこの地に来たのは人が地中に避難していた時の話だ、その時の縄張り争いの様子はわからない。戦闘で出ただろう大量の死骸は皆餌に代わるからな」


「そう考えると戦車や戦艦と違って、戦った後には有害なものは何も残らない星にエコな兵器だねぇ」

「生態系は破壊されてしまったがな。絶滅した生物が多すぎる、多くを生かそうとあつめたシェルターの箱舟の生き物の復元用DNAデータがあっても、一度壊れた生態系は元には戻らないだろうな」


「アサヒはほんと動物が好きだねぇ」

「人同士で殺しあうのに、動植物が一番被害を受ける。そういうのが嫌いなだけだ」


 建物のを移動しているとキイが身を伏せ窓のほうへと寄っていき携帯端末を鏡に外を見る。


「アサヒ、巣穴。だとおもう、見とくれ」


 アサヒは姿勢を低くキイの隣へと近づき外を覗く。

 巣穴の周囲には細かく砕けていない大きな骨と砕けた外骨格の欠片などが散らばっていた。


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