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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
564/798

白い砂 1

 強風に揺れるアサヒの金髪は月灯りを反射し輝いて見え、キイはその姿を見てコンテナの淵から離れた。


「アサヒ、上がってきたの?」


 騒音は続いていて当然声は届くはずもなくアサヒはジェスチャーで車内に戻るように合図した。

 合図に従いアサヒに続いてキイも梯子を降り車内へと戻り、ドアを閉め聞こえる音が小さくなりお互いの声が聞こえるようになってから尋ねる。


「どうしたのさ? 車体にとりつく生体兵器を取り払うのが目的だったんじゃないのかい? せっかく頭の中に新しい曲のイメージが出てきかけていたのに」

「それは悪かったな、ところで外の生体兵器の強さは? 特定危険種クラスのはあの中に居そうか?」


「そうそう、アサヒの金髪が月灯りでボヤーって輝いて見えたよ綺麗だった」

「お前の髪もな。ほら水だ、一息付け」


 水の入ったカップをアサヒから受け取り一気に飲みほしフルタカの寝ている座席の横に座る。

 エクエリのバッテリーを取り換え彼女はブーツについた生体兵器の体液をぬぐう。


「いや全然、数が多いけどちっとも強くない。小型だけど動きが鈍く他の生体兵器のやられ方を見ても学習はあまりしていないみたいな物量押し、中型がリーチ長くて厄介だったけど、そこまで数は多くないかなぁ。でもまぁ、複数の生体兵器が行動を共にしている時点で司令塔になる生体兵器が居るんだろうけど、探しにまた上に行くかい? あの様子じゃぁ、出てくるとは思えないけどさぁ」

「お前が上で戦っている最中他の精鋭とも連絡を取ったが、現状中型の対処は戦車だけで間に合っている。小型もキイや他の精鋭が装甲車から剥がしたし、数は増えるばかりきりがないためやめさせた。いまだに現れないクラックホーネットをおびき出すための餌だ。いろいろ考えたが明日、帰りの時に全力を出したい」


「というと?」

「魔都に入って半日いまだにクラックホーネットの襲撃がないところ、基地や都市戦艦からのミサイルが飛んでくないこと、中型もいたが小型の生体兵器ばかりが攻撃を仕掛けてきたこと」


「何でミサイルが飛んでこないってわかるんだい?」

「空を見ろ、音がなくても爆発があれば振動も届かなくてもその光は嫌でも見える」


「う~ん? よくわかないない。意地悪しないで私にわかるように説明しとくれ。戦闘後でそんな頭を使わせないでくれ」

「そんなんでよく精鋭の隊長をしてこれたな」


「目の力に頼ってるからね」

「クラックホーネットは今、魔都を離れた拠点と海上の都市戦艦を襲撃している。確かではないがここまで一匹も襲ってこないというのは他に説明できない」


「それってかなりやばいじゃないか。それじゃ、これから私らがするのは無駄になるってのかい? 生きて出るのも難しいと?」

「襲われた基地の被害がどの程度かわからないが流石に、海上の都市戦艦が沈むことはないだろう。しかし拠点のほうは分からない。対空装備もあったし精鋭を含め拠点には人も大勢いいたが飛行型の生体兵器との戦闘は皆経験が浅いはず」


「いくら魔都の中心、クラックホーネットの巣についたとしても援護がなければ意味がないじゃないか。ミサイルと砲撃で巣を破壊するって話だったじゃないか」

「拠点をあきらめるとして作戦の成功は都市戦艦次第だが、俺らが魔都から出るときのことを考えておかないといけない」


「そういや静かだけどフルタカは寝ているの」

「ああ、こんな時でもすぐ寝た。さっきは文句言ってたがな。帰ってきたときも音で起きなかったしそう訓練してきたんだろ? 必要な時に必要な睡眠をとってる」


「アサヒも寝るかい? 交代制で私が起きてるけど、小型なら装甲が壊されることはないんでしょ?」

「ざっと見た限りではな。カミキリや顎の強力な生体兵器ならその可能性もあるが、今いる生体兵器にその力はなさそうだ。今言った型の生体兵器の目撃情報があったら言ってくれ」


 そういってアサヒは自分の携帯端末をキイへと渡す。


「何かあったら連絡が来る。他の精鋭でも対処できないようなよほどのことがない限りはこないが」

「わかった、お休みアサヒ」


 そういってアサヒも座席に座り目を瞑る。

 キイはその端末をポケットにしまおうとするが直後アサヒの携帯端末が振動した。


「アサヒ、どうしよう。連絡来た、私が出ていいのかな」

「まったく、貸せ。連絡を取る」


 すぐに目を開け起き上がるりキイの手から端末を受け取り通話に出ると、携帯端末の奥から太い声が聞こえてくる。

 カメラがほとんど壊され視野に限りのあるたモニターを見てできる限り周囲の様子を見ようとするアサヒ。


「どうした?」

『後方の戦車がやられた! 動きが恐ろしく速い』


「数は、何型の生体兵器だ」

『わからない、小型の殲滅に気を取られ気が付いたら大破していた。姿は見えない小型の生体兵器たちが大破した戦車に向かっていった。いや、いま火を噴いた戦車の明かりで見えた。昆虫型おそらくハンミョウだ、しかし見たことがねぇ。大型の生体兵器だ』


 アサヒが通話中、キイがドアのほうに近づいていく。


「まだこちらに襲ってくるか」

『いいや、戦車に集まる小型の生体兵器をばらばらにしてこっちに来る様子はねぇ。どうやらこの集団とは別の様で食い合いをしているみたいに見える』


 そして彼女はドアを開ける。


「音が止んでる。アサヒ、音が消えたよ」

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