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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
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怪物たちの都 5

 剣先は外骨格に弾かれキイは勢いのまま通り過ぎざまに体勢を立て直し、頭と胸の関節部を狙って刺しなおす。

 今度は弾かれることなく刺さりできるだけ深く刺しこむと、刃の向きを変えるように手首を捻る。


「硬いねぇ、やっぱ小型でもダメか。手がしびれる」


 生体兵器二突き刺した刀を強くつかみ、勢い余って装甲車から落ちそうになった体を引き留めた。

 刀は深く刺さったわけではないが生体兵器自身が体をひねろうと筋肉を委縮し、自ら刃を固定させておりキイはそれにぶら下がり装甲板の上に着地、エクエリを取り出し装甲板を上がってくる別の生体兵器に引き金を引く。


「上に5、横に見える限り8……いや7、周囲にはいっぱい、直上に敵なし……ふぅん、クラックホーネットはどこに行った?」


 刀の刺さった生体兵器が振り返り体を動かすが、キイは刀の柄を強く掴み生体兵器と一緒に回る。

 彼女を見つけ迫る生体兵器を蹴りつけ刀を強く押し込み体重をかけて頭と胸を切り離す。


 --ハギシェルターの戦闘から12,3年、やっぱり小型は精鋭との戦闘経験がない。数が多いけど一匹一匹の戦闘能力は強くない、中型もおそらく同程度。


 頭を失った生体兵器の体はもがきながら車体を滑り落ちていく。

 まだ動く頭を蹴り落とし体液を振り払い次の生体兵器に向ける。


「刃こぼれがひどい無茶したか、これで切れるのもあと二匹ってとこかな、耳がおかしくなる前に帰りたいねぇ。どう思うよ?」


 生体兵器に話しかけるも音はかき消される、それ以前に言葉など通じるわけもないが。

 限定された狭い足場、サスペンションで吸収するとはいえ瓦礫を踏み揺れる車両の上で飛び掛かってくる小型を踊るように回って回避し着地したところに飛び掛かり腹を捌く。

 バックリと開いた体にエクエリを撃ちこむとよろけて車両から落ちていった。


「昆虫型は体液に粘度があっていけないねぇ」


 強く振り払っても落ち切らない刀についた体液を見て躊躇いなく残った一匹に向かって投げる。

 簡単に弾かれ宙を舞い月灯りを反射させながら車両の下へと落ちていった。


「さて、アサヒにどの程度戦っていればいいか聞いていなかった。まいったな、飛行型の生体兵器もいないみたいだし、朝まで戦うってのもしんどいしなぁ」


 エクエリを構え残った一匹に向かい合う。


「……まぁいいか、月が綺麗だし五月蠅いのを我慢すれば踊るにぁ悪くない。私の判断で疲れたら帰ろう」


 側面からも生体兵器が這い上がってくるが、キイは落ち着いて登ってくる生体兵器の足の関節部を撃ち抜きその頭を踏みつけ蹴り落とす。



 音をかき消す大音量が入らないようキイが出ていったあとドアを閉めた車内でフルタカが問いかけた。


「行かせておいてなんだけどよ。上、キイだけで大丈夫なのか? まだキイの目の効果があるうちによ、俺かアサヒのどちらかが援護に行くべきだとおもうんだがよ?」


 携帯食料をかじりモニターを見ていたアサヒは振り返り答える。


「俺が出ていってもいいが、ただでさえ狭い足場で走り回るキイの戦い方だと、俺が邪魔になるだろう。なんかあれば何かしらの合図があるはずだ、馬鹿ではないモニターを見ればわかるがキイが出た後もクラックホーネットの襲撃はない」

「でも一人で行かせるたのはやっぱ流石にまずいぜ。小型ばかりとは言えよ、なにせ数が多い。アサヒも外を見ればわかるけどよ、一人でさばける量じゃない」


「別にすべてを相手にしているわけでもないだろう。移動し続けている限り小型には止められない。それに今はキイを囮にクラックホーネットの動きを確かめたい」

「それなら別にキイを囮にしなくてもいいだろ」


「俺は他の車両とも連絡を取り合わないといけないし、大型を持つフルタカでは避けれない。キイが適役だろう。それに車両から落ちたとしても走って追いつける速度だ」

「そういうことじゃねぇよ、飛行型の生体兵器なら空へ攫って行くのもあるだろ」


「最初はその心配もあった」

「最初?」


「しかし、いっこうに出てくる様子がない。おそらく今俺らが戦っている場所のクラックホ―ネットはいないと見た」

「断言するほどかよ?」


「俺の予感が当たっていれば、クラックホーネットとは明日戦うことになる……今のうちに交代で休む。俺は指示を出すからまだ起きているからフルタカ先にお前が休め、早ければ明日の夜ごろ篝火を設置して帰還するのだから」

「この状態で休めってのかよ」


「大型のエクエリで戦うお前に今できることはない、ドアから撃つもさっきみたいに狙われる可能性もあるしな。小型ばかりなら時間をかければ俺たちで倒せる、やっかいな中型だけを戦車に任せて数を減らせば足は止まらない、だからお前は休め。眠れないのならキイの薬を使え、キイには後で言っておく」


 不満そうな顔をしながらもフルタカはうなずき座席に座る。

 その後、少しの間モニターも見ていてフルタカが目を瞑って眠るのを待ち、アサヒはエクエリをもってドアのほうへと向かっていく。


「少し出てくる、フルタカは休んでいろ」

「何だよ、結局行くんじゃねえかよ」




 重装甲車の上で戦い続けるキイ。

 何匹と生体兵器を倒し装甲車の天井は生体兵器の体液で滑りやすくなっていて、足元に気をつけながら戦闘で息が上がり白い息を吐き、その息を整えようとするキイ。


 --上はとった、後は側面を払い落とすだけ。周囲の戦車や装甲車は損傷は大きくない、数は多いけどこの程度なら十分朝までしのげるけどこれは殲滅しないとずっとついてくるけど。


 暗闇から突然伸びてくる分厚く長い板の様な物。

 回避し攻撃に失敗すると長い板のようなものは薄緑色に発光をして宙へと戻っていく。


 --さっきフルタカを狙った攻撃か。月明かりの届かない暗がりを移動して姿が暗くて見えない、足の長さてきに大型の生体兵器かな? 嫌だねぇ音が聞こえないと発見が遅れる。


 重装甲車の側面を上がってくる生体兵器のために足元を警戒していたが、上からの攻撃にも気を付けならなくなった。

 いまだに空にクラックホーネットの姿はない、建物の中から見ている可能性もあるが襲ってこないなら気にしないことにして戦闘に戻る。

 キイの背後から光の弾が飛んできて暗闇をわずかに照らす。


 光の弾の進む先に薄く生体兵器の影が見えた。

 すかさずキイは狙いをつけ引き金を引く。


 --足は長かったけど本体は小型の生体兵器並みだったか、もっと大きな生体兵器を探してた。ダメだねぇ、今までがアサヒの指示とフルタカの援護に頼りすぎた。


 一度足元を見て上がってくる生体兵器の足を撃ち抜くと背後を振り返る。


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