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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
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怪物たちの都 2

 飛んできたミサイルは車列を飛び越し建物の向こうへと消えていく。

 直後、閃光と振動、わずかに遅れて音がやってきた。

 その音に壁を破壊し装甲車に落としていた生体兵器たちは建物の奥へと隠れる。


「飛び越えていった……どこを狙ったんだよ?」

「他も戦闘が始まっているみたいだな。今のに驚いて落石も収まった、いつまで攻撃が止むかわからないが無事なカメラがあるうちに距離を稼ぎたい」


「というか、腹減ったなと思ったらよ。もう昼じゃねえか、出発してからもう6時間近く走ってたんだな」

「まだ魔都の玄関口から少し進んだだけだけどな」


「仕方ねえよ、道はめちゃめちゃ瓦礫で道が塞がってるし生体兵器にも警戒しながら進んでるんだからよ。それに巣がどこにあるかもわからないんだろうがよ」

「できれば早く見つけて無事に帰りたいな。さてキイに伝えてくるか」


 生体兵器による攻撃がなくなり落ち着くとアサヒは、運転席のほうへと様子を見に行っていたキイの肩を叩く。

 彼女は携帯食糧を限りながら振り返った。


「キイ、昼食を取ったら先に寝ていろ」

「ん? わかったけど、なんでだい? 食べてから横になると食道炎になるんだけども」


「装甲車は鈍足だこれから昼夜を問わず進み続ける。いつ戦闘になっても対処できるように交代で休む。他の精鋭の隊長にも言ってある。それにキイの力なら俺らをいつでも起こせるだろ」

「そんなこと言ってたね、了解さ。んじゃ寝るよ、薬の効いている間は起きれないからその間よろしく」


 彼女は座席に戻り席を倒すと小瓶から錠剤を手のひらに転がし、一息に口に含むとコップに注いだ水を持ってきたアサヒから受け取りあおる。


「んじゃお休み、二人とも」

「ああ、夜になったら起こす。お休みキイ」


 カップを返し二人に小さく手を振り目をキイは瞑った。



 魔都へと入った薔薇の隊がそれぞれ別の場所で生体兵器の襲撃に耐え進んでいる中、魔都の中央近くクラックホーネットに動きがあった。


 索敵に出ていたクラックホーネットの輸送を役割とする中型と狩猟を主とする小型が帰還し巣の入り口で待機していた他の仲間に伝える。

 仲間から仲間へ情報は巣全体に伝播、動ける生体兵器たちはすぐに行動に移った。

 中型たちは筋肉を収縮させ羽を羽ばたかせ巣全体に熱を巡らせていく。

 飢えから身を守るために早い段階から体温を下げエネルギー消費を抑え休眠していた主戦力たる大型や戦闘特化の小型生体兵器が、巣の中の温度の上昇に目を覚ましいくつもある巨大な蜂球がほぐれ大小さまざまな生体兵器が行動を始める。

 目を覚ました戦闘蜂たちは栄養を蓄え自身の体の何倍も大きく丸々と膨れ上がった腹を持つ仲間から蜜を受け取り、食料として育てた第三世代未満の生体兵器を捕食し腹を満たす。

 飛びたつ生体兵器の横で熱を放ち力を使い果たした中型の生体兵器たちが崩れ落ち仲間の食料へと変わる。

 腹を満たした戦闘蜂たちは巣穴から飛び立つ。



 襲撃なく魔都を走り、日も落ちあたりは暗くなる。

 灯りのない町は闇に包まれ、建物の奥は漆黒で塗りつぶされ晴れた星空以外何も見ることはできない。

 さらに生体兵器に破壊されライトはつかず、生体兵器の発見を怒らせるために車内の明かりも付けていないため車内は暗く何とか自分の周囲が見えるだけ。


「流石の俺でもよ、こんな狭い視界で見えるものなんて少ないんだよなぁ」

「残ったカメラの映像でそこは補う。月が出ていたおかげでぎりぎり道が見える程度の明るさはある、進むのに問題はない」


 運転席の後ろにはモニターや通信機が、助手席の後ろにしかない席は二列四席しかなく、前列に座るキイが座席を後ろに倒していているためアサヒとフルタカは床に座って生体兵器の襲撃に備えモニターを見ていた。


「そういや、キイの目玉みたいに特別な力で敵の接近を察知できる能力を持ってるやつが精鋭にいるんだってよ。拠点にいたとき昔の仲間から聞いた」

「ああ、少し前に有名になった北の英雄だった鬼百合隊だな」


「なんだアサヒ知ってたのかよ」

「実際あの基地に来ていたよ。直接は会ってはいないが、来て早々その力を持った奴がダウンした。強さと数を把握するらしく体調に影響をきたし、戦闘不能にこの作戦の前に装甲列車で帰っていったはずだ」


「便利な力だと思ったけどマイナスも大きいな、倒れるほどなのかよ」

「力持ちは生活していくのに不便だからな、フルタカやキイ同様日常生活の邪魔になっているのは間違いないだろうな」


「そうか? 俺もキイもよ、生活に不自由はしてないぜ」

「キイの目も不用意に人と目を合わせられないし、フルタカの目も強い光が苦手だろ。好きにオンオフできない能力、それも強い力となればそれだけでかなり危険だ」


「ほんとよ、何なんだろうなこの力」

「王都の研究では環境の変化で追い詰められた生物によくある突然変異、牙も爪も持たない人類の新たな進化だとかなんとか言ってたな。さぁ、雑談も切り上げてそろそろ交代に時間か、キイを起こすか」


 携帯端末で時間を確認すると座席で寝ているキイのもとへと向かう。


「アサヒ、キイを起こせ! 運転手、霧を!」


 モニターを見ていたフルタカが叫ぶ声が聞こえてくる。

 振り返ることなくアサヒは急いでキイの肩を強くゆすった。


「キイ、襲撃だ起きろ」


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