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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
2章 迫る怪物と挑み守るもの ‐‐私情の多い戦場‐‐
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野に咲く花、3

 とりあえずトハルに報告しないととトヨは大型のエクエリを整備場に預けるという用事が済んだ後ジープのに戻り携帯端末を取り出したがすぐに元の位置の戻した。

 これから基地に戻るのだから直接報告しようと、そう思いながら小雨の降る中トヨは車を走らせていると、基地手前の商店街で見たことのある精鋭の制服の隊員が乗った軽装甲車両が路肩に停まっている。


「あの隊服……」


 追い越し少し先でトヨは路肩に停めミラーで様子を見る。

 見たことのある制服だったが車に乗っているのがしらない男女だったため、トヨは話しかけるのを躊躇した。


 しばらく観察していると軽装甲車両は商店街から雨に濡れながら走って帰ってくる。

 ボサボサした髪の女性を乗せるとその隊を乗せた車は走り出した。


「……バメちゃんだ、やっぱり」


 知人の姿を確認するとトヨはその軽装甲車両を追いかけた。


 基地に入って止まったところでジープを降り小雨の中駆け足で向かう。

 停車した軽装甲車の窓をノックし彼女たちに話しかけた。


「バメちゃん」


 話に夢中になっているのか彼女は気が付いていない。

 代わりに彼女の隣に座っている男の子が気が付いたようで彼の報告で彼女はようやくこちらに気が付いた。


「お、トヨっち、久々じゃん、どうしたの?」


 助手席側の窓が開くと後部座席も同時に開く。


「とりあえず車に乗りなよ。そこ濡れるでしょ」

「あ、はい。そうだね、じゃあ、すこしお邪魔します」


 女性隊員に詰めてもらいトヨは後部座席にのる。


「誰? 初めまして。うぁ、胸でっかい」


 座席を詰めトヨの隣に座るのは眠そうな目をした少女で、彼女はトヨが乗り込んでからじっと彼女の胸を見ていた。


「タオル使いますか? 今さっきツバメが使ってちょっと濡れてるけど」


 思い出したかのように手にしたタオルを差し出す少女。


「ありがとうございます、お借りしますね。えっと……」

「朝顔隊のアモリ・イグサです。初めまして」


「蒼薔薇隊のユキミネ・トヨです。よろしくね、アモリさん」

「はい」


 お互い会釈してあいさつを済ませイグサから受け取ったタオルで、癖髪と制服を拭くとトヨはこの隊の隊長に向き直る。

 彼女は年下だが遠慮のなく話しやすく、彼女はトヨにとって日常でも戦場でも頼りになる存在、アオゾラ・ツバメだった。


「トヨっちもここに居たのか全然気が付かなかった」

「バメちゃんたちの隊もここに来てたんだね」


 トヨが蒼薔薇隊に移動する前、精鋭の隊員としてツバメと同じ隊にいた。



「まあね、しばらく前線から離れてこのシェルターにいたけど、トヨっちがいたの今知ったよ。その隊服、まだ蒼薔薇隊にいるみたいだね」


 ツバメは不意に知り合いにあったということもあり少しばかりテンションが高い。


「全然、足取り掴めなかったけどいったい今までどこに?」


 トヨはその久々の再開に興奮したテンションの高いツバメにどう接するべきか迷いながら訪ねた。


「ん、んー。ちょっと前まで前線基地に居たかな。前線基地でちょっと怪我しちゃってね、ようやく退院、でもまだしばらくはこの子の検査もあるし。少しばかりここで休暇もらう予定。怪我してるから戦力としてシェルターにいないから話し合いとか行かなかったし、行ってればも少し早くトヨっちに会えたのに残念」


 笑いながら助手席から運転席側に足を乗せツバメは足を動かして見せるが、同時に男の子が顔を反らすスカートの中が見えるのだろう、うぶな反応を見せている。


「この三人が今の朝顔隊メンバーなんだね」

「そだよ、この二人が私の部下。シローメが隊長になったから私もいろいろと頑張った」


 そういうと運転席と私の隣にいるツバメの部下二人は小さくお辞儀をする。

 彼女はいろいろと頑張ったとは言っていたが、トヨが他の隊から聞いた話では言った先々で足を引っ張り大変お荷物になったとか無理に手柄を立てて隊長になったと聞いている。


「仲がいいんですね」

「そそ、トヨっちとかシローメがいた昔の私達みたいに仲がいいよ。この二人は見てて飽きないし絡んでて疲れない」


 ツバメの性格からして彼女の言う仲良しというのは、彼女が仲がいいと言えば相手の意思は関係ない一方的な事なのだが、深くは考えずトヨは軽く触れる。


「いじめてるの?」

「いやいや、からかってるだけだって」


 足を下ろす際、かかとが男の子に当たったが軽い謝罪で済ますツバメ。


「いじめられてるの、誰が?」


 そこへイグサがトヨの横から話に入ってきた。


「隊長の話に辺に混ざるなよ、怒られるぞ」


 話しに割り込むなとイグサを止める運転席の男の子。


「怒りませんよ」


 トヨが優しく返す。


「怒らないよ、私そんなに気が短くないでしょ」


 ツバメが男の子の方にデコピンする。


「んで、こんな雨の中わざわざ挨拶だけしに来たわけじゃなよね、夕飯のお誘い?」

「おや、食べていきますか、なら私作りますよ?」


 別に何人増えても問題はなく、料理はトヨの趣味の一つでもあったので彼女としては何の負担にもならなかった。

 他のメンバーが相席を許すか許さないかは別として。


「んじゃ遠慮せず食べていくかなぁ」

「ユキミネさんは料理作れるんですか? お菓子は!?」


 イグサは興味津々でトヨの手を握って調べている。


「お菓子は残念ながら……」

「トヨっちの料理はうまいよ」

「それは期待しちゃいます! それで夕飯は何ですかユキミネさん」


 手を放すとイグサはトヨに寄りかかり彼女の胸に手を伸ばしている。


「今日はオムライスです、皆さんも食べていきますか?」

「ぁ……」

「ぅ……」

「んー……」


 途端に急に車内の空気が変わる、オムライスといった瞬間3人同時に目反らした。


「え、どうしたの?」


 あまりにも急激な変化だったため困惑するトヨ。


「ううん、何でもない。でも今日の夕飯は遠慮させてもらうよ、ごめんね、私たちは他で食べる」


 申し訳ないという感じのツバメに、自分の爪を弄りすでに興味をなくしたかのようなイグサ。


「なんでです?」

「卵料理はちょっと……」


 ――卵嫌いだったかな? しかも三人まとめて? と思ったが気分ではないのだろう。


 トヨは気を取り直して言う。


「そうですか、だったら別のでもいいですよ……っと話変わるけど、ちょっといいかな……いいえ、実はお願いがあるんだけど」

「いいよ。わたし、トヨっちのお願いなら大体は断らないよ、任せとけって。私にお願い事だなんて生体兵器がらみだろ? 私が活躍するから、トヨっちは後ろで見てな」

「そういうと思ってました、助かります」


 やはりバメちゃんは頼りになるなぁと、エクエリの火力以外頼られない自分と彼女を比較すると、トヨは近況報告を済ませ本題に切り替えた。

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