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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
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怪物たちの都 1

 轟音を立てて建物が崩れ土煙が上がる。

 振動は車内にも届くほど大きく揺れ、煙が晴れた後には背後の道路が倒壊した建物の瓦礫で埋まった。


「あぶねぇ」

「意図的に背後の建物が倒された……のかねぇ」

「戦車にもこの車両にも建物をどけるほどの能力はない、別の道もこうなると帰りは歩きになるな」


 重装甲車の背面を映すカメラの映像を見ながら三人は感想をつぶやく。

 崩れた建物の瓦礫の下から小型の蜂型の生体兵器が数匹顔を出したが、襲ってくることはなく他のビルの中へと飛んでいった。

 フルタカが小型のエクエリを構えドアのほうへと歩いていった。


「魔都入ってそうそうこれかよ。でも俺たちを倒すのなら車両の上に倒すのが一番じゃないのかよ?」

「いやいやフルタカ、せっかくの食糧を埋めちゃもったいないだろ。逃げられないように戸を閉めただけだ」


 キイとともに他のカメラの映像で周囲の様子を見ていたアサヒが静かに答え、今にも外へと飛び出しそうなフルタカを止める。


「食糧……それってよ俺たちか!?」

「そりゃそうだろ、ここは兵糧攻めで魔都に潜む生体兵器はどいつここいつも空腹だ。どんな少量でも食料は食料大事な食べ物だ」


「これから腹をすかせた生体兵器たちが一斉に襲ってくるとでもいうのかよ?」

「さあな、だれが最初の一口を取るかでもめているのかもしれない。生体兵器は人とは違うからな、単体は別として集団での行動の予測が難しい」


 建物の倒壊に止まることなく進む車列。

 進むにつれ生体兵器の痕跡が増え、時折建物から触角のようなものが伸びてくるる。

 そして時が来た。


「何だいアサヒ、この滝のような音は? 分厚い壁を突き抜けて音が響いてくるよ」


 ザザザザザと水の落ちる音によく似た音が聞こえはじめ、周囲の建物から生体兵器が顔を出す。


「来たぞ! しかしほんとどれも昆虫型の生体兵器じゃねえかよ」

「全車に通信、周囲に催涙弾をまけ。霧を展開、進み続けろ。この音は戦闘開始か侵入者発見の報か知らないが襲ってくるぞ!」


 報告とともに周囲の戦車が煙幕を張った。

 視界が多少かすむ態度の濃さの白い煙はあっという間に周囲に広がり重装甲車を覆う。

 建物から様子をうかがっていた生体兵器たちは霧が広がってくるとそれを見て建物の奥へと引っ込んでいき、上から飛び降りてきた生体兵器は霧に触れたとたんに跳ね回り戦車の履帯の下に消える。


「霧に触れた生体兵器は、海老みたいに跳ねまわってたねぇ。すごいじゃないか霧ってのは」

「昆虫、動物かまわず生体兵器の五感を潰す薬品らしい。パニックを起こした生体兵器はそのまま理解できない攻撃から逃れようと暴れまわり自壊するらしい」


「みんならしいだねぇ」

「人体にも有害らしい」


 モニターを見たまま腰にぶら下がる小型のエクエリに手をかけていたキイは、生体兵器の戦闘にならないとわかると席に戻った。

 霧の噴射以降もボタボタとビルの上から落ちてくる生体兵器。


「キリギリスに似た生体兵器、音はこいつか」


 車両の上に落ちた小型中型問わず地面に落ちひっくり返って足をばたつかせもがき戦車の下へと消えていく。


「恐ろしいねぇ。生体兵器に同情しちゃうよ」

「毛ほども思っていないくせに、よくそんなことが言えるな」


「そうさ、生体兵器なんて死んでしまえばいい。故郷を家族を友を思い出を人生を平和を幸せを壊し奪ったこつらは害悪だ、この作戦で潰す、絶対に。って程熱い気持ちもわかないくらい戦いに慣れなくなっちゃったねぇ」

「そうだな。でも家族のためにも犠牲になった人たちのためにも残された人のためにも、しっかりと仕留める」


 生体兵器の最初の攻撃が失敗に終わり音源不明の水の落ちる音も止まる。


「音が止まったな、次はどうなんだよ? 霧がなくなるまで突っ込んでくるか?」

「次か? それもあるかもしれないがフルタカは近づいたら危険だとしたらどうする」


 ごんと天井に何かがぶつかる音。

 それは一つではなく二つ、三つと聞こえていきすぐにとめどない音の嵐に変わると、外を見ることなくアサヒは攻撃を理解し運転席へと向かう。


「来たな、音は消え通信もできるようになった。これからは戦車に任せる、また厄介な生体兵器が出てきたときのために出来るだけ節約しよう霧の散布を止めるように」


 アサヒが一般兵に伝えすぐに追伸端末で全車に通達する。

 窓へと寄りフルタカが外を見ると護衛の戦車に人の頭ほどの岩が次々に落ちていた。


「これ小型の生体兵器が襲ってるわけじゃなくて、霧の届く範囲外からの攻撃かよ。攻撃の切り替えが早いな。でもこんな攻撃でよ装甲車も戦車も止まるか」

「止まることはないが困ったことが起きる、魔都に入ったばかりでこの作戦を取られるとこの後がきついな」


 岩は老朽化した建物の壁を削ったもののようで落下した衝撃が砕け車両に踏まれると跡形もなくなる。

 しかし脆くても重量のある岩、装甲に傷やへこみをつけ、車体外部に露出しているライトや車載カメラ、通信アンテナを破壊していく。


「右側のライトがやられたか」

「すべて破壊されるのも時間の問題だな」


 二人が外を見て話しているとキイが声を上げる。


「後方から気化弾頭!」


 彼女の声を聴いて二人はモニターのほうへと向かう。

 割れたレンズ、乱れる画面には魔都の上を飛翔するミサイルの姿。


「援護か? ここからでは見えないがすでにクラックホーネットが傍に来ている」

「頼むから俺らごと焼き払わないでくれよ、味方にやられるためにここまで来たわけじゃないんだからよ」

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