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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
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寒空の下で 6

 その後もキイが目に付いた精鋭を次々に選んでアサヒに報告するが、そのすべてが否定され選ぶのに疲れ溜息をついて彼女は頬杖をついた。


「でも災害種を討伐しているけどだめかい? こっちは確認も取れてるみたいだしさすがにこれは偽れないでしょ?」

「確かにこれを見る感じだと未確認討伐数も現実味を帯びるがそもそもが集団行動には適していないようだ、この評価ではどのみち今回の作戦には適さないだろうな」


「なら討伐数、災害種討伐の記録もある鈴蘭隊もだめかい……ならもっと平均的な隊を探すか……こうなるとほんとに一晩で決めきれるかね」

「もっとも、鈴蘭隊なら黄薔薇隊が取るだろう。あそこには元鈴蘭隊の隊長がいたはずだ、かつての隊長がいる隊と行動するんだ問題児な部隊でも連携とれるだろう。それに黄薔薇隊の隊長はあのフシミ・マホロ。正直、問題児がバラバラに行動したとしても篝火とかいう装置の防衛は彼らだけでなんとかなるだろ。だから彼らに任せる」


 タブレットを見ながらコーヒーを飲んでいたフルタカがつぶやく。


「無双のフシミ……二つ名ねぇ。そういやこの間決まったんだっけか」


 並の精鋭以上の成果を上げ王都が功績を認めたものに与えられる二つ名。

 その呟きにキイとアサヒも一度、同行する精鋭の話を止める。


「これで、歴代4人目だね。どれも人の領域を超えた記録、ていうかみんな元薔薇の隊だよね」

「でもよ、それ隊としての記録だろ? 個人の力じゃなかったはず、なんで隊長だけ持ち上げられるんだ?」

「まぁ、そのへんは王都が決めていることだ。実際、引退や死亡で今いるのは無双だけだが」


「私が知ってるのは英雄譚に出てくる、前線基地に押し寄せた500の小型の生体兵器を倒した蹂躙、対空攻撃に厳しい状態でシュトルムやクラックホーネットと戦い撃退した晴天、何度となく災害種級の生体兵器を撃退したシェルター防衛戦のベテランの城壁だけなんだけど黄薔薇隊にはどういう人がいるの?」

「今日俺らの横に座っていたのが、短時間で異なる中型や大型の生体兵器を複数倒した無双でよかったんだよな?」

「ああ、無双以外の二つ名はエクエリができて間もない時の記録だから、今より生体兵器の数も強さも違う。今二つ名が欲しいとすれば今回のクラックホーネット戦でずば抜けた戦績を上げるか、シュトルムのいなくなった北に行って生体兵器を駆逐していくしかないな」


「私らも二つ名欲しいよねぇ。でも二つ名貰って何か褒章はあるのかい? 今日まで二つ名を持った精鋭に出会ったこともなかったから考えもしなかったけどさ」

「確かに、アサヒその辺どうなんだよ? アサヒのことだからそういうのも調べているんだろ、二つ名持つと特別なボーナスでも出るのか?」

「戦う生体兵器の脅威度が上がる。作戦に参加する精鋭や一般兵の士気が上がることもあるな。あと王都の中央にあるデカい建物に精鋭引退後、絶望的な状況を自身の力で脱した英雄としてその功績と装備が展示される。最も戦闘で命を失ってその装備が回収が困難か不能な場合の精鋭はレプリカを展示しているが」


「ああ、あの建物入り口に飾ってあった精鋭の装備ってそういう奴だったんだ。二つ名貰ってもそんだけか、なーんだ」

「思ったよりいいことはないんだな。もうすこし何かあると思ったのによ」

「まぁ、何であろうと精鋭は生体兵器と戦うだけだからな。むしろ二つ名ついた分、他の精鋭や一般兵から期待されハードルが上がるだけだ。だから今までの二つ名持ちも何人か死亡している者が出ているわけだ」


 そういうとまたタブレットを持ち作戦のための精鋭選びに戻り、雑談でモチベーションの上がったキイが新たに精鋭を見つけアサヒに画面を向ける。


「なら蒲公英隊なんかどうだい。アサヒと同じ生体兵器を調べて弱点とかを探す精鋭で戦闘がメインじゃないけど他の精鋭や指揮官らの信頼性は高いよ」

「それなら俺で十分だろ。戦う生体兵器の情報は命につながる、こういう隊は他の薔薇の隊に回してやれ、それに人数も少ない」


「んじゃぁ次、金木犀隊や土筆隊、紫陽花隊はどうだい」

「確かに実績も評価も高い金木犀隊は残念ながら二人の隊、ただでさえ俺らは三人と五人前後いる他の薔薇の部隊より人数が少ない、なるべくなら手分けして戦う時の負担を減らすため人の多い隊を選びたい。あと、土筆隊は爆薬を仕掛ける罠を使う精鋭だ、倒壊しそうな建物の多い魔都にはむかないな。紫陽花隊も隊長に問題がある。連絡や作戦会議などはみな副隊長が行っていただろう」


 そこまで言われてキイはタブレットから手を放し背もたれに寄りかかるとフルタカからカップを奪ってコーヒーを飲む。


「はー、私の選んだ隊は全却下。というか私ばっかり隊を上げてるけどさ、フルタカはちゃんと探しているの?」

「お前がずっと話しているから離せなかったんだろ。というかコーヒー飲むならさっき聞いたときに言えよおまえの分も入れるからよ」


 そういってフルタカはキイが飲み干したコーヒーのおかわりを取りに行くため席を立つ。

 次の精鋭を探していたキイはその手を止めアサヒに画面を向ける。


「そういえばアサヒ、これこれ。躑躅隊には赤い線が入ってるけどこれはなんなのさ。この拠点には来ているみたいだけど、来る最中に怪我でもしたってことかな?」

「いいや、同じように向日葵隊と八重桜隊にも線が引いてあるな。おそらく、精鋭は精鋭でも戦いに参加しない非戦闘員かこの拠点に置いておきたい精鋭なんだろう、王都の桜名前の隊は兵器開発の科学者たちの隊だ」


 キイに言われアサヒは画面をスクロールさせ躑躅隊の情報に目を通す。

 少し間をおいてからアサヒが口を開く。


「それと情報に目を通した感じだと躑躅隊の隊長は元前線基地の指揮官だったようだな。この拠点は大きな前線基地だ、魔都攻略のために集められた指揮官も完成間近とはいえ今だに各地から集め増え続ける人の数も装備の数も把握できていないはず。戦闘が始まり混乱した際の現場指揮官の予備として必要なのかもしれない。なんともいえないがおそらくそのための拠点防衛用の精鋭だろうな」


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