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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
553/798

寒空の下で 5

 その後も詳しい作戦の説明を受け、夜も更けたころに会議は解散。

 集められた精鋭はドームからでて自分たちの宿泊先へと帰っていく。

 大勢が精鋭のために建てられた宿舎へ向かっていくのに対し、青薔薇隊の3人は駐車場へと向かう。


「おー、ぞろぞろとみんな宿舎に向かっていくね。急に人が減って寂しくなっちゃった」

「居住ペースのある装甲バスを与えられている俺らと違って、装甲車などは寝泊まりできる設備の整っていないからな」


「終わった終わった、同じ姿勢で話聞いてるとお尻と背中が痛くなるねぇ。そんじゃ今日はもう寝るだけか。んじゃ戻ったら酒のも。もういいんでしょ」

「ダメだ、これから俺ら青薔薇隊と同行する精鋭の隊を、俺とフルタカとキイの三人で決める。ともに魔都の中に入る命を預け、命を預かる部隊だ、キイにも選んでもらう」


「それは隊長のアサヒと副隊長のフルタカで決めちゃダメなのかい?」

「お前にも青薔薇隊の一員としての責任を背負ってもらう。期限は明後日だが遅いと他の薔薇隊に優秀な精鋭を取られてしまう」


「了解、んじゃそれが終わったら……」

「さっさと寝る、キイも今日みたいに昼過ぎに起きてくるな。もう夜更かしはダメだ」


 がっくりと肩を落とし歩く彼女の背中を叩くフルタカ。

 突然なにかと彼女はフルタカを睨んだ。


「気を落とすなよ、キイ。早く終われば飲める時間ができるかもしれないだろうがよ」

「たしかに! ほらほら二人とも、早く私たちとともに災害種と戦う仲間をさっさと決めちまおう。もたもたしていると優秀な人材を取られちまうしさ、時は金なり、一品一秒を大事にしないと」


 フルタカにいわれ彼女の表情に明るさが戻ると、速足で前を歩くアサヒを追い抜いて装甲バスのもとへと向かっていく。

 そんな彼女の背中を見てアサヒと並んだフルタカが笑いながら言う。


「ほんと行動原理が単純だよな。たいして酔いもしないのにがぶがぶとたくさん飲んで次の日、二日酔いになるだけなのによ」

「まぁそうだが、人の楽しみをどうこう言うつもりはない。俺からすれば酒もカフェインどちらの中毒も大して変わらない」


「おい、俺は中毒ってほど飲んでねえよ」

「誰もフルタカのことだとは言ってないだろう?」


 一番最初に装甲バスのもとへとたどり着き鍵を開けるとキイが乗り込む。

 エアコンをつけお湯を沸かし彼女はテーブル席へと向かう。


「さむいさむい。はー、冷えるわ。さてさて……」

「飲むなよ」


「何にもしてないよ、私どれだけ信用無いのさ!」

「今タブレットを渡すから先に精鋭の情報を読んで待っていろ」


 自分のカップに暖かいコーヒーを用意するフルタカ。


「二人とも、コーヒー飲むか?」

「眠れなくなるからいい」


 棚を開けタブレットを取り出しているアサヒに断られ、カップをテーブルに持っていくフルタカは今度は手袋を外しテーブルの上に置くキイのほうを向く。


「キイはコーヒー飲むか?」

「私も今はコーヒーって気分じゃないや、熱燗がいい」


 アサヒは電源を入れ画面を操作し作戦に参加する精鋭たちの名簿を開くとタブレットを二人に渡す。


「んで、魔都に連れていく精鋭の話だけど、どう決めていくのさ?」

「幸い薔薇の部隊には精鋭の活動記録と戦績のデータが配られている。親切なことにこの基地にいる精鋭の情報がまとまっている資料も会議の終わりに配られていた」


 タブレットを受け取ったキイは金と黒の髪をかき上げ、画面を触って並ぶ名前を流し見していく。

 フルタカもタブレットをテーブルに置きコーヒーを飲みながら画面をスクロールさせた。


「さて、どこの隊を誘おうかね」

「うっかり触って選択して変なのを誘うなよキイ。戦闘以外で面倒になるのはごめんだからよ」

「あと精鋭を選ぶには活動記録を見ろ。特定危険種討伐数、作戦参加数、前線基地やシェルターでの指揮官の評価、その他備考が見れるはずだ」


 自分の分のタブレットを起動させアサヒが長椅子に座る。


「ああ、ランキングね。王都が勝手に作ってる他の精鋭には見せちゃダメなやつだよね。なんで見せちゃいけないんだっけか」

「基本、生体兵器との戦いは競争じゃないからなか。競争形式にした方が討伐数は稼げるだろうが、戦績欲しさに無謀な戦闘やランキングの上下によるのモチベーションのアップダウン、援護や補給に振り回される一般兵に犠牲が出るんのは良しとしないと、討伐数に応じての昇給や報酬はなく王都でデータを集めるだけ。それでも最強の名前欲しさに薔薇の部隊に入りたいと戦う奴もいるがな。そういうのもしっかりデータとして残されて推薦から外されるが」


「でも結局さ、他の精鋭も少しは知ってるじゃないランキングのこと」

「どこにでも口の軽いおしゃべりはいるからな」


 アサヒが席につき三人そろったことでキイもフルタカも真面目にタブレットを持ち直す。

 作戦に同行する精鋭を選び始めてすぐにキイがアサヒにタブレットを見せる一つの隊の名前を指さす。


「普通にランキングで選ぶなら、戦績がその辺の薔薇の隊より上な朝顔隊かい?」

「いや、討伐数と作戦参加数は多いが、未確認討伐数と同伴した精鋭たちの評価が低い。未確認討伐数は前線基地より奥に行けば確認することが困難になりいくらでも盛れるからな」


 素直に生体兵器の討伐数や特定危険種や災害種との戦闘経験のある隊を選んだが、精鋭紹介の説明文に持ち場を離れたり作戦に遅刻したりと問題行動も多いとありアサヒに却下される。

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