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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
551/798

寒空の下で 3

 


 会議場に集まりつつある精鋭たちを、座席に座り周囲を見回していたキイが携帯端末を操作していたアサヒの体を大きくゆする。

 フルタカは携帯端末で誰かと話していて押し付けることもできず仕方なく、アサヒは携帯端末をしまって彼女の相手をした。


「なんだ、こっちは今回共闘する他の精鋭の戦闘記録に目を通しているんだ」

「精鋭一隊が3,4にんでもこれだけ集まるとすごい数だねアサヒ。それとこの建物ってこの会議するためだけに作ったんでしょ? すごいね、見てみてあの隊、私たちと薔薇の隊になるまえに何度か一緒に行動した隊だよ、懐かしいね」


 ドーム内は再会懐かしむ声や思い出話などで盛り上がる声であふれかえり騒がしく、それに負けじとはしゃぐキイはドームの入り口から新たに入ってくる精鋭たちを見てアサヒをゆする。


「まぁ、ここの壁は厚く最悪の場合を想定して避難区画としての機能も持ってるだろう。さすがに今の状況で無駄なものを作っている余裕はないだろうし、魔都の目と鼻の先だからな」

「なるほど、これだけ広ければたくさんいた一般兵も全員避難できるか。ふーん、作るだけ作っての無駄にはならないのね」


「あんまりきょろきょろするな、キイ。前を見て座ってろ子供じゃないんだから」

「そうなんだけど、ここにだれが来てるか気になるから。アサヒやフルタカ、私の前いた隊はいるかな」


「携帯端末でここにきている魔都攻略作戦の参加精鋭のリストがもらえるから、気になるならダウンロードしておけ」

「……わかった、そうするよ」


 落ち着きのないキイを座席に押さえつけ姿勢を正させていると、青薔薇隊の隣に褐色肌の精鋭がやってきて席につく。

 彼らの着る白い強化繊維の制服には黄色い刺繍で薔薇が描かれていて、一目で彼らが自分たちと同じ王都所属の薔薇の隊だとわかるとアサヒは彼らにあいさつをした。


「お久しぶりです、黄薔薇隊のフシミ・マホロ隊長」

「ん、ああ、蒼薔薇隊。たしか新しい薔薇の隊が二つ結成したときに祝賀会で会ったきりでしたか。どうですか新部隊として。新部隊として戦い慣れてきたところでしょうか?」


 褐色肌の額に傷のある男性が手を伸ばしたアサヒと握手を交わしながら会話する。

 黄薔薇隊4名、データベースには全精鋭中トップの実力を持つ隊長のマホロのほかに、過去にクラックホーネットに襲われたシェルターヒバチや精鋭殺しと挟み撃ちにあったシェルターハギで戦いぬいた熟練の精鋭がいる隊。

 彼らでさえ少し緊張した面持ちで席に着く。


「それぞれ別の隊と隊長として活動していたものの、何度も合同で作戦に参加していて青薔薇隊としてすぐに特定危険種とは戦える程にはなりました」

「ならよかった。薔薇の隊はどこの隊からも自由に指名できる分、討伐記録や継続年数などの強さだけで集めてしまう傾向があって、戦い方の個性がバラバラでうまく連携が取れるようになるまで時間がかかるなんてこともありますから」


「王都の方から薔薇の隊を新たに増やすという話を聞いたときに、もともとこの二人を誘う予定でしたから。しかし、いよいよ魔都ですね」

「本当です。王都の個人情報を読ませていただいたところ青薔薇隊の皆さんはヒバチ出身だそうで」


「ええ、シェルターから脱出し無事にヒバチの周囲のシェルターに助けを求め避難できた1割にも満たない数少ない生き残りです」

「13年前、俺らはヒバチ襲撃の際はまだ年端もいかない子供でしたが、うちの隊のハザマさんとクルマキさんはここらに来て戦っていたそうです。その時の話を聞きましたが悲惨な話を聞きました」


「ええ、資料で見る限り参加した精鋭の半分がヒバチで、次に襲われたシェルターハギに住んでいた人口も6割が犠牲になったとか」

「ハギの場合は精鋭殺しのこともありますが、でも実際それだけの相手の災害種。いよいよ戦闘となるとなんか落ち着かないものがありますね」


「そうですね、災害種戦ともなれば精鋭の総力戦。薔薇の精鋭をすべてつぎ込んでの戦い」

「しかし、失敗すれば今いる精鋭の大半を失う大きな勝負。負けることは許されない。お互い、今回の作戦で無事に帰れるよう頑張りましょう」


 入り口だった分厚い扉が閉ざされドーム内が少しずつ暗くなり始める。

 それに気が付いた精鋭たちの騒がしかった話声が小さくなっていくとフルタカも携帯端末をしまい姿勢を正し、そこへ一人で暇をしていたキイが身を寄せてきた。


「暗くなってきた。全体会議が始まるみたいだね、ところでだれと話してたのフルタカ」

「俺が元いた隊の人を見かけたから挨拶してたんだよ」


「ああ、居るんだやっぱり。私の隊もどこかにいるのかな、終わったら探す時間あるかねぇ」

「終わってからのこと考えるのもいいけどよ、まずしっかり最後まで聞いていろよ。寝たらアサヒにどやされる」


「いやいやいや、それはフルタカのほうじゃないか。フルタカは暗いところだとすぐ寝るじゃないのさ、こないだも……」

「あの時はよ任務終わりだったから疲れてたんだよ。俺は必要な時に必要な睡眠をとってるだけだ。いつでも動けるように」


「言い訳かい?」

「非戦闘時はいつでも寝れるように訓練してるんだよ。ほらキイ、そろそろ黙ろうぜ」


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