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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
14章 魔都侵攻作戦 ‐‐死と慟哭の街‐‐
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寒空の下で 2

 


 二人が一息ついていると車内後部の扉が開き、ゆらりと長い黒髪のいくつかの房を金髪に染めた女性が現れた。

 大きなあくびを一つし彼女はテーブル席に座っている二人を見ると頭を押さえながら歩いてくる。


「おはよう、アサヒ、フルタカ。今何時? イテテ、こりゃ二日酔いか、頭にズキンとくる。痛み止めは薬箱に入ってたっけ」

「もう昼過ぎだぞ、キイは寝すぎだ。頭痛もそのせいだろ。いくら作戦開始まで自由時間とはいえ体がなまるぞ、生活のリズム直しておけ」


「あいよ。でも、休めるときに休んでおくのが私さ、それにここに来てから頭ん中で音楽が流れてて曲作りが止まらない。それにいうけど私はこれでもしっかり体力つくりはしてる、いつでも戦えるよ」

「そうか、朝ごはんは冷蔵庫にしまってある。勝手に食え」


 夢見心地のままふらふらと冷蔵庫からラップのかかったどんぶりを取り出しそれをもってテーブル席へとやってきた女性に二人は顔を向ける。

 寝間着姿で髪はぼさぼさのシナノ・キイはどんぶりをテーブルに置き、アサヒの持ってきたコーヒーを奪って口をつけるとフルタカの横に座った。


「着替えろ、今夜は精鋭が一度に集まっての全体会議。同期の薔薇の部隊は全員出席だ、キイも出てもらう。今日はさすがに酒は禁止だからな、昼間から飲むのは控えろよ」

「了解、さすがに大事な時に飲んだりしないよ」


「絶対だな、だったらいつも胸元にしまってるスキットルを渡せ」

「信用ないなぁ、大丈夫だって飲まないって。それよりさ、会議があるってことはいよいよ、魔都に出発するのかな?」


「そこら辺についての話もあるだろう。今日のうちには鞄に必要な荷物はつめておけよ」

「ふーん、私らがここでのんびりできるのももうあと少しかぁ。コーヒーあったかい、入れたてかな?」


「ああ、今回の相手は災害種、おそらく今まで見たいに俺たちが倒してきた相手と違って簡単とはいかないだろう。ここ数年の間に、拠点壊し、ウォーカー、シュトルム、アシッドレインと立て続けに災害種が討伐されているが、今回は別格に厄介な相手だ。何せ災害種がいることは分かっていても魔都のどこに巣があるかわかっていないのだから」

「私たちが薔薇の隊に入って初の災害種戦、気を引き締めないとね。景気づけに一杯いっとく?」


「おい、お前何も聞いていないな」

「聞いているよ、私たちは国を滅ぼした元凶の一角と戦おうとしている。私たちあるいはここに集まった人たちの中にも自分の家に帰れない人がきっと出る。それでも私たちは戦わなければならない」


「その通りだが、ボタンを掛け違えているキイのそのだらしない姿で言われてもな」

「ふへ、ほんとだ恥ずかしっ。夜までには髪もちゃんと直すよ」


 アサヒに指摘されて彼女は自分の姿を見つめなおし、赤らめた顔を隠すように手櫛で自分の髪を撫でつけその様子を見てアサヒとフルタカは笑いだす。


「キイ、そのうっかりは、魔都に入ってからはやめてくれよな。お前だけじゃなく俺らまで笑われる」

「ほんと、子供んときから変わらないなキイはよ。まぁ、表裏逆さできないだけ成長してるか」



 時は経ち夜、紺色のスーツをきてコートを羽織りその上から迷彩マントを羽織った三人は砲台のエクエリで囲まれた大きなドーム状の建物へと向かって歩いていた。

 朝と比べ物にならない寒さにキイが身を震わせ首に巻いたマフラーの位置を直すとアサヒの腕に絡む。


「さむい、さむい。酒がなきゃ凍えちまうよ」

「これから会議だというのに何を言ってるんだお前は? 昼間起きてきたときに俺らと話したこと忘れているな?」


「少しだけ。体がポカポカする程度、酔わないくらいだからさ」

「ダメだ、それにそれは酔ってるだろ。他の薔薇の隊も来るんだぞ、そんな失礼が許されるわけがないだろ」


 拝みながら甘える声で頼み込むキイだったが、アサヒに厳しめにいわれ彼女は今度はフルタカのほうへと身を寄せた。


「フルタカは分かってくれるよね? 空には良い月も出ている、これは酒が飲みたくなるよね」

「薔薇の隊以外に古参の精鋭、新しく精鋭になった者たちも集まる。俺ら新青薔薇隊は、前の蒼薔薇隊と何かと比べられるんだぞ。ちゃんとしておけよ」


 背中をバンと叩かれてキイは小さく跳ね上がるが、仕返しにフルタカの首元に彼女は細い指を伸ばす。


「んじゃフルタカ、私を温めてよ。指先冷えやすいんだから、赤切れおこしたりしもやけでむくんだりしたら痛むし大変なんだからさ」

「俺の手袋貸してやるからおとなしくしとけよ。大きな声出して目立つな周りも見てるから、薔薇の精鋭にもなって怒られるのは辛い」


「皮の手袋……臭いつかない?」

「ここ来る前に勝った新品だ、いやなら返せよ」


 キイはフルタカから手袋を受け取るとそれを手にはめて大人しく歩く。

 周囲には同じく建物を目指す精鋭の姿が見え始め青薔薇隊3人は彼らとともに建物の中へと向かう。

 建物入り口から少し階段を下りた先にある分厚い扉その先の細い通路を通ってドームの中の会議場へとやってきた青薔薇隊。


 正面にあるスクリーンに向かって扇状に座席の配置されている大会議場。

 広い空間は三階までぶち抜きで階段状に座席が設置されていて、そこにこの拠点にいる100以上のすべての精鋭が招集され集まってきていた。

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