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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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炎天の花 1

 セイランとともにツルギはテントを出る。

 ツルギが気を失っている間に基地の様子は大きく変わっていて見覚えのない建物が立ち並んでいた。

 倉庫が立ち並び敷地の内側にあった土嚢やバリケードが前線基地を囲むように配置されている。


「はー、ずいぶんと景色が変わった。砲台のエクエリなんかいつの間にそろえたんだ?」

「ええ、一度資源と工具を取りにシェルターへ帰っていますし。報告でほかの前線基地も困難を跳ねのけ順調に建設中とのこと。生体兵器の襲撃の頻度も落ち数も減っている、ここはもう大丈夫でしょう、悲願だった前線基地完成ですわ」


 前線基地という言葉を強く発音しセイランは手を強く握り自分の腕を見る。

 細かいところを見れば真新しい壁についた爪痕や血痕、破損したバリケードが敷地の隅に集められている生体兵器襲撃の痕跡がまだあちこちに残っていた。


「何度も失敗してるんだもんな」

「今後はここを拠点に精鋭が生体兵器の排除をして、シェルター付近の安全を確保していくのです。シュトルムが倒され奇襲攻撃がなくなり北への進軍もしやすくなったから次第に前線基地をより奥に作り放棄された廃シェルターまでの道を作っていきますわ」


 基地の建物を見てうれしそうに語るセイラン。

 シェルターを出て生体兵器の襲われ失ったセイランの腕、彼女を含め前線基地を作るために命を失った一般兵たちがこの基地の完成によって報われる。


「特定危険種級の生体兵器たちの相次ぐ奇襲、昼夜を他わず襲ってくる波状攻撃、シェルターに災害種が現れてやむなく撤退……いろいろありましたわ」

「大変だったんだなセイランさんは」


 前線基地襲撃時に居なかった紫陽花隊たちがツルギが気を失っているうちに返ってきていてハナビと楽しげに話をしている。

 新品だった向日葵隊の強化繊維の制服は汚れていたりほつれていたりしてるが、ハナビと並ぶほかの精鋭たちにはそういったものはない。


「やっぱり本物の精鋭は生体兵器と戦っても怪我しないんだな」

「彼らは生体兵器と戦ってきた経験値が違いますもの、それとツルギさんを比べるだなんておかしな話ですわ。今まで戦ったことのないツルギさんが生体兵器と戦って生き延びただけで十分すぎるくらいでしょう」


「俺は精鋭としてやっていく自信がない」

「いまさら何を、自分の命を守るのにやっとな戦闘で自らハナビを助けに行く勇気があるというのに」


「それは……やっぱり目の前で人に死なれると辛いものがあるから」

「人が死ぬ誰かが死んでしまうのが嫌だから守れる力が欲しい、それだけなら他に何十人もいるでしょう。でも実行し生き残れる人は数える程度しかいない。卑屈に言っていますけど誰にでもできないんです」


「それはこの制服のおかげで……」


 ぶつぶつ続けるツルギのが背中をセイランは思い切り叩いた。

 二人の様子を見ていたハナビが精鋭たちとの話を切り上げツルギたちのもとへとやってくる。


「楽しそうだね何の話してたの?」

「ツルギさんがどうしても精鋭をやめたいそうなんです」


「まだ言ってんの? ダメだよ逃がさないって。キリギリ君は整備兵として中型のエクエリを整備してもらうんだから。まだ、塗装だってしてもらってないし」

「そこなんですの?」


 二人の中に割ってい入りハナビはツルギの肩に腕をまわす。

 彼女のつけるコロンの香りがし気を許したが、彼女に無意識に傷に触れられ表情を引きつらせてツルギは少し身を引いた。

 ハナビの顔はいくつもの絆創膏が付いていて、彼女は離れようとするツルギを追う。


「あきらめろって、私に目をつけられた時点でキリギリ君は死ぬか戦い抜くかのどちらかしかないんだから。いいじゃない、高嶺の花の女の子三人に囲まれて。非戦闘時のキリギリ君の色を見る限り、まんざらでもなかっでしょ」

「それは……」


 ハナビは先程まで話していた紫陽花隊たちに別れを告げて手を振り、ツルギに腕を回し体を密着させると上目遣い気味に話を戻した。


「これからも頼んだよ、私とフウカを守れるのはセイランとキリギリ君だけなんだから」

「いや、ハナビさんも自力で戦えるようになってくださいよ。守るって毎回こんな傷だらけになって守れるわけじゃないんだから」


 上目遣いをするハナビに見つめられ顔を赤くするツルギ、


「わかってるよ、私だって死にたくないし痛い思いもしたくない。他の精鋭に守ってもらいながら戦うなんてもう期待しない、まじめにやるよ。だからさ、ツルギ君も一緒にがんばろ」

「……わかりました」


 ハナビとの話を聞いていたセイランが対応の違いに苛立ちツルギを小突いた。


「私が言うとウダウダ言うのに、ハナビに言われると簡単に首を縦に振るんですのね」

「そりゃ、ハナビさんは王都の人間だから。ただの一般人の俺が反抗なんかしたらどうなるか……」


 ハナビとセイランに見つめられツルギは目を逸らす。


「やっぱ男はこれに弱いねニヒヒ。セイランにも男性への甘え方教えてあげようか? 練習も難しくないし、効き目は今通り」

「そうですわね考えておきますわ」


「さて今聞いた通りツルギ君は私たちと戦うんだから、これからもよろしく」

「そうですわね。これからもよろしくツルギさん」


 セイランとハナビの二人に手を引かれツルギは前線基地を連れまわされる。


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