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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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真価 9

 負傷したハナビではツルギを支えきれず何度かよろけ床に膝をつく。

 体中の傷が痛み二人は呻き声と上げながらゆっくりと階段を上がりセイランたちのもとへと向かった。


「セイランさんたちは」

「いるよ、二人とも。真正面に……目、見えてないの? 大丈夫?」


「いや大丈夫、疲れて目がかすむんだ。休めば治るさ」

「だといいけど。キリギリ君、あんまり無茶しないでよ」


「精鋭になったことが無茶なことなんだ」

「それね。大丈夫頑張れてるさ、私もキリギリ君も」


 ハナビを見つけフウカの動きが止まる。


「ハナビ!」

「待ってフウカ、今火力が減ると!」


 攻撃が弱まりセイランとフウカを突き飛ばして生体兵器が強行して部屋から出てきた。

 逃げるではなく起き上がり背中を見せてハナビのもとへと向かうフウカへと飛び掛かかり押し倒す。


「なぁ! 離れろ化け物が!」

「フウカ!」


 ハナビが小型のエクエリを構えるがフウカと生体兵器との距離が近すぎ引き金が引けない。


「フウカに当たるかも……撃てない」


 セイランが立て直す前にフウカ頭を守る腕を噛みそのまま建物から出ようとする生体兵器。


「俺はいい、捨てて行け」

「ごめんキリギリ君」


 支えていたツルギを手放しハナビはフウカのもとへと駆けていく。

 ハナビからの支えを失いツルギは力なく床に倒れた。

 小型のエクエリを構え窓へと向かう生体兵器に引き金を引いて、放たれた光の弾は生体兵器の体に小さな穴をあけるが生体兵器は止まらない。


「フウカを放せ!」

「ハナビ、私のエクエリを」


 床の落ちているフウカのエクエリを抱え上げ引き金を引く。

 フウカのエクエリは落ちた衝撃で弾種が変わっていて放たれたのは青白い光。


 生体兵器を中心に青白い稲妻が走り、体から湯気を上げる生体兵器はフウカを放して窓から落ちていく。

 フウカのもとへと歩くとハナビも床に倒れた。

 倒れた二人のもとへとセイランが駆け寄る。


「セイランさん二人は」

「ハナビは無事、近かったから炸裂式雷撃弾の影響があったのかも。フウカちゃんも失神してるけど生きてはいますわ、でも危うく黒焦げにしてしまうところでした」


「よかった、助かるんだな」

「その様子ならツルギ君も無事そうね、そんなところで寝ていないでこっちに来て二人を運ぶのを助けて」


「それは、無理だ」

「なんでですの?」


「動けない。俺も自力で立てないんだ」

「……あなたもですの? ハナビもツルギもひどい傷、強化繊維がなかったらなんかい死んでいたことやら。私は全員を背負って移動はできませんわよ、この義手は強化外骨格ではないのですから」


 セイランは窓の外を覗き込み建物の外で倒れている生体兵器にとどめを刺す。


「至近距離で受けただけあって体の自由が利かなかったみたいですわね。窓から落ちて失神していましたわ」

「倒したか、生体兵器を」


「誰に言っていますの? もちろん、貫通榴弾で頭を粉砕しましたわ」

「もう襲ってくる奴はいないな」


「ええ、あなたたちが追っていった方の生体兵器も倒していればここには生体兵器は来ませんわ」

「それなら、蒲公英隊が何とかしてくれたはず」


 自力で立てないツルギは這ってハナビたちのほうへと進んでいく。

 気を失ったハナビとフウカを窓側から壁に寄せたセイランがツルギのもとへと向かい彼を抱きかかえる。


「今日の朝とは逆になりましたわね、全員戦闘不能になるとは思わなかったけど。外見た感じですけどほとんど戦闘も終わりに近い」

「もう動けないから早く終わってくれないと、ハナビたちも診療所に安久家に行くことすらできない」


 自力でハナビたちの横に移動したツルギは壁にもたれかかり深く息を吐く。


「見た感じあなたの傷も結構深いのですよ、ツルギも自力で立てないくらいにやられて。みんな治療が必要ですわ」

「外に重機が止めてある。戦闘が終了したらあれで運んでくれ」


 乾いた血をぬぐいツルギが水筒を取り出し休憩しようとすると、がりがりと音がして窓から生体兵器が入ってきた。

 体には無数に穴が開き黄色と黒の体は赤黒くなっている血だらけの生体兵器。

 片目を負傷し息は荒くツルギたちを見て、牙をむき出しにして飛び掛かってきた。


「蒲公英隊は仕留めてくれなかったのか」

「追跡を引き離したところでこっちに帰ってきたんでしょう。弱った獲物を放っていくわけないですもの」


 セイランがハナビたちを守るように前に出てエクエリを構え生体兵器を狙う。


「俺は戦えない、腕を動かすのもやっとだ」

「わかってますわ。でも背後から襲われたくないでしょ、生体兵器を警戒しながら後ろに下がって」


 エクエリを構え撃ちこむも片方視界がつぶれていながらも光の弾を避けて向かってくる。

 回避で左右の壁にぶつかり灰色い壁を血で汚し建物全体が小さく揺れた。


「今のうちに拾って」

「わかってる」


 壁に手をつきハナビが持っていた小型のエクエリを力の入らない震える腕で手にしツルギは立ち上がって引き金を引く。

 それでも止まらず生体兵器はエクエリを盾にするセイランを突き飛ばす。


「セイランさん!」

「大丈夫」


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