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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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真価 8

 

 ツルギは周囲を見回し生体兵器が襲ってこないか心配なながら重機に気を失ったハナビを持ち上げ操縦席に乗せた。

 運転席は高い位置にあり見通しはいい、大きなタイヤの横にあるステップを踏んでエクエリを持ち上げ操縦席に乗り込む。

 鍵はついたままでエンジンをかけるとハナビの隣に座り重機を操縦して建物へと寄せる。

 このまま建物の入り口まで向かう予定だったがそれを生体兵器は許さない。


 重機の進路上に飛び出し運転席目掛けて跳ぶ。

 操縦席の窓は簡単に壊れエクエリを構えると衝撃からハナビを守り両手を話したことで重機は向きを変え建物から進路を変える。


「ダメか、逃げ切れなかった」


 進路を変えた重機は土嚢にぶつかり強制的に停止し、壊れた運転席から放り出された二人。

 ハナビをかばってツルギは衝突した土嚢を飛び越えて地面にたたきつけられ、エクエリだけが重機の中に残された。


「しまった……エクエリが……、武器が……」


 起き上がりエクエリを構えようとしてその手にエクエリがないのを確認すると、立ち上がるのもやっとなツルギが体に鞭打ちハナビを抱えて土嚢のそばまで移動する。


「おきてくれハナビさん、もう担いで走れない」


 軽くゆすってもぐったりとしたまま目を覚ます様子のないハナビ。

 ゆするたびに彼女のつけているコロンの香りが漂う。


「匂い……いい匂いだな……」


 起きないハナビを自分のそばに寄せ周囲の様子を見る。

 戦闘の音が響く前線基地内で孤立し、いまだにセイランたちが助け来る様子はない。

 セイランたちのいる建物と道路を挟んで向かい側にもう一軒同じ形状の建物。

 その二つの建物の間にある道の真ん中、少し離れたところに生体兵器にやられた一般兵と小型のエクエリが落ちている。


「あそこまで走れればなぁ……、このままここにいてもだめなら取りに行くしかないよなぁ……」


 ツルギが残った力を振り絞り生体兵器の姿を探しながらしゃがんだまま、小型のエクエリのもとへと動き出す。

 生体兵器が現れないことを祈りツルギは土嚢のそばを離れて道の真ん中へ。

 しかしハナビから離れたとたん生体兵器が向かい側の屋根の上からツルギ目掛けて無音で降ってくる。

 地面を滑る陰で存在に気が付き足を回避しようとするが生体兵器は目の前に降りたちツルギを吹き飛ばす。


「ケハッ……まだ……」


 ツルギは血を吐きながら膝立ちし小型のエクエリを生体兵器へと向けた。

 持つことすらやっとな小型のエクエリから放たれた光の弾は、生体兵器のそばを通り過ぎて土嚢に当たり土の詰まった袋に穴が開く。


「来るか……っく……、こわい」


 弱ったツルギにとどめを刺すべく生体兵器は駆け、短い距離で勢いをつけてツルギにぶつかっていく。

 効果があると学習し何度も行ってパターン化した動き、回数を重ねるごとに無駄がなく速度と勢いが増している。

 小型のエクエリの攻撃が数発当たった程度では致命傷は与えられない。

 数発当たるつもりで突っ込んだ生体兵器は、避けることもできないツルギにぶつかっていき完全に沈黙させた。


 手足を動かせず生体兵器の接近をぼやける視界で捉えるツルギ。

 声も出せず逃げることも守ることもできないツルギに向かって生体兵器が迫る。


 ツルギを咥えて力任せに邪魔の入らないところに運んでいる最中、建物へと向かっていた生体兵器にエクエリの弾が飛びその横を二台の大型バイクが通り過ぎる。

 生体兵器の行く手を遮る二台のバイク。


 彼らから放たれる小型のエクエリの光の弾は的確に顔を狙う。

 攻撃を受け生体兵器は注意をバイクに向け、ツルギを放して攻撃を続けるバイクへと飛び掛かった。

 バイクは生体兵器が追いかけてくるとエンジンをふかし煙を上げて走りだす。

 生体兵器は走り出すバイクを追いかけ土嚢を超えて見えなくなった。


「……蒲公英隊、たすかった」


 命を救ってくれた精鋭にかすれた声で届かない感謝を述べ、ツルギは這ってハナビのもとへと向かう。

 立ち上がる力はなく助けを呼ぶ声も出ない。

 強化繊維の制服も何度とない攻撃を受け至る所がほつれている。

 ハナビのもとへと向かう途中で小型のエクエリを拾いなおしハナビのもとへと体を動かす。


「セイランさんのところに行かないと……、もう体が動かないい……」


 小型のエクエリを抱え這っていると正面にツルギを見下ろす人の気配があった。

 彼女はツルギに向かって手を差し伸べる。


「ああ、キリギリ君もボロボロじゃん。ヒヒッ、体中痛いよね。蒲公英隊に帰ったらお礼言わないと、自力で立てない? 私も辛いからあんまり力かけないで起きて」


 ハナビはツルギをもたつきながらもおこして、再び地面に倒れないように支えセイランたちのいる建物へと戻ろうと歩き出す。


「おっもい、ヒヒッ、傷に当たって痛いよ。泣きそ」

「もう俺、戦えないから……」


「戦ったって、生体兵器にまともなダメージ与えられたんだ」

「……小型のエクエリを、数発当てた」


 重機の横を通り建物へと入る。


「そういえばキリギリ君のエクエリは、どこ?」

「戦闘中にどこかに行った……。こんな状態で探している時間もないだろ」


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