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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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真価 6

 屋内に避難した向日葵隊はガラスのない窓の外を警戒しながら建物の中にいる生体兵器を探し通路を進む。

 武器を持たないハナビを守るように先を歩き生体兵器の姿を探すセイランとツルギ。

 壁も天井もコンクリートがむき出しで配管や配線を通す穴があけられている。

 新築の床にいつ蜘蛛の爪痕を発見し4人は気を引き締めてその後を追う。


「この床の傷後を追えば生体兵器がいるけど……」

「ツルギさんあまり前に出すぎないように、角で待ち構えられていたら避けることなんてできませんわ」


「本当に昨日作り始めた建物なのか、上に続く階段があるぞ。作るの早すぎるだろ」

「何度も言ってますけど、私たちが血を流して前々から少しづつ作っていますもの」


「いないな……さっきも一般兵を狙っていったように見えたし、俺たちを襲うのをあきらめてもう建物にはいないのか?」

「わかりません、近くにいれば感覚があるんですけど。生体兵器は私の感覚より外から一気に攻撃仕掛けてくるから」


「あの大きさの生体兵器が建物で移動できる場所なんて無いはずなのに」

「私に言われても困りますわ」


 床についた傷を追って建物の進んでいくと足跡は二階へと続きその先の部屋へと続く。


「寂しい感じがする建物だな。コンクリの壁がむき出して建物ってよりトンネルとか物置に近い感じがする」

「まぁ、戦線基地の建物なんて雨風しのいで防御力があれば十分ですもの。でも人が住むとなると、食堂や銭湯なんか娯楽施設なども必要になってきますけど」


「ここ何に使うんだ?」

「さぁ? 建築担当ではないからどこに何があるなんて聞いていませんわ。整備兵のツルギさんのほうがわかるのでは?」


「こっちはシェルター勤めの機械の修理担当だ」

「私だってシェルター勤めの戦闘専門ですわ」


 部屋に近づくにしたがって四人は息を殺しブーツの足音を立てないようにゆっくり歩く。

 目的の部屋のすぐ横の壁まで来るとセイランが制止を駆ける。

 彼女のジェスチャーで中に生体兵器がいることを知り、ツルギとフウカはエクエリを部屋に入り口に向けハナビは三人のそばに体を寄せた。


 ついてくる合図を出すセイランに続いて一気に部屋の前に飛び出て部屋の中に銃口を向け中にいる生体兵器に狙いをつける。

 部屋の中には何も置かれてなく、部屋の真ん中に黄色い体に浮かぶ黒い模様が茶色い瞳を輝かせこちらを見ていた。


「いた!」


 待ち伏せし姿勢を低く待ち構えていた中型の生体兵器。

 声を上げたフウカを合図に大きな体をばねにして一気に飛び上がる。

 真正面から突っ込んでくる生体兵器はエクエリの弾を受け頭部に穴が開くはずだったが、狙いはツルギたちの上。

 入り口の上の壁を蹴り天井に体をぶつけながらも姿勢を変えて空中でツルギたちに向き直る。

 誰も怪我をしなかったがしかし三人の攻撃を躱し生体兵器は着地した。


「天井!?」

「何の意味が……」

「後ろですわ!」


 部屋の背後の窓から外にいたもう一匹が飛び掛かってくる。

 後ろを振り返ろうとするが三人が密集していたこともあり、お互いの銃口が誰かにぶつかって引っ掛かり反応できない。

 大きな窓ではなかったが豹型の生体兵器はするりと飛び込んできて、ツルギたちの後ろにいたハナビの腕を噛んで引き寄せる。


「引っ張られ」

「ハナビ!!」


 そしてハナビの腕を噛んだまま生体兵器は入ってきた窓から体を落とす。

 落ちる勢いと重量にハナビは抵抗できないまま窓の外に吸い込まれていった。

 残った三人が窓から落ちていったハナビを追おうとするが、そこへ部屋の中の生体兵器がセイランを背後から襲い掛かり邪魔をする。



 強化繊維が強い衝撃に強ければ強いほど硬化し衝撃を吸収するといこともあり頭を守って落ちると体に大きなダメージはない。

 しかし、仲間と孤立し単身での戦闘力がほとんどないハナビにとって安心できる状態ではなかった。


「痛った……ニヒヒッ、笑っちゃうね……」


 自分の怪我の具合を確かめることもできないまま、慌てて立ち上がり周りの様子を見る。

 周囲を見回していると死角となる背後から一気に加速した生体兵器が体当たりを仕掛け、ハナビはメートル単位でいとも簡単に突き飛ばされ並んでいた土嚢にぶつかって止まる。

 一瞬で訪れた死の恐怖に足は震え自力では立てず土嚢に手をついて立ち上がる。

 腕も頭も擦れ血が流れる。


 口の中も切りハナビの顎を伝って地面に血が滴った。

 生体兵器を見るとそのかなり奥で走る戦車の姿が見える。

 しかし別の生体兵器と交戦していて襲われているハナビに気づくことはなく、砲塔を回しながら基地を走っていく。


「誰か……、私を」


 戦闘中かさっきまでいた建物の二階からハナビが逃げるのを援護してくれる射撃はない。

 一人では勝てない、ハナビは口にたまった血を吐き頭を守るよう腕で構え土嚢を背に生体兵器から距離を取ろうとする。

 だが、エクエリを持っていないハナビが逃げ切れるはずもなく。

 回り込まれその背後から二度目の体当たり。


 今度は腕に噛みつきハナビは吹き飛ぶ勢いを殺せず振り回され、逃げ道も武器も失い生体兵器の牙から離されたハナビは地面に倒れた。


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