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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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真価 5

 並べられた土嚢にそって進み角から覗いて前線基地内をバラバラになって暴れまわる生体兵器を探す向日葵隊。

 前線基地に入り込んだ豹型の生体兵器は孤立した一般兵を襲ってその血肉を食らっていた。


「強化繊維がなければ、俺らもとっくにああなってたんだよな」

「そうですわ。朝の戦闘はたまたま頭を狙ってこなかっただけで、強化繊維のない部分を噛まれれば、私たちもああなる可能性はありますわ」


 バリケードまで移動し覗き穴からエクエリの銃口を生体兵器へとむけると、息を整え四人は引き金を引く。

 飛んでいった光の弾の二発が生体兵器の体に当たり、不意打ちをくらい驚いた生体兵器は助走なしで飛び上がりそのままエンジンのかかったまま止まっていた重機の屋根に上った。


「すごい脚力」


 ハナビがそう感想を述べ改めて狙いをつける。

 体に空いた穴から血を流し生体兵器の重機に血が垂れ、重機の上から見回しツルギたちを見つけると低いうなり声をあげた。

 そして、そのまま重機の裏へと降りて消えていく。


「追うよ、傷を負って弱った色してた、致命傷だ。エクエリ当てたんだから今度こそ私たちで倒す」

「当てたのは、私とツルギさんですわ」


 バリケードから出て重機のほうへと向かうハナビの後に続いてツルギたちもはしりだす。

 フウカがエクエリの銃身をバリケードに引っ掛け大きな音をたてたが周囲に気配はない。


「びっくりした脅かせないで、エクエリの持ち運びは気を付けて」

「ごめん」


 生体兵器に襲われた一般兵はすでにこと切れており、破けた戦闘服から血と内臓が飛び出ていた。


「腹部が……うぇっぷ……」

「手遅れですわね」


「俺がもっと早く警報が押せていれば」

「無理ですわ、どんなに早く警報を鳴らしても生体兵器との戦闘には犠牲者が出ますわ。それに、今回の相手は中型の生体兵器。特定危険種扱いですわ」


 逃げた生体兵器を探して先頭を走っていたハナビがさっきまで生体兵器の登っていた重機をこえたところで突然踵を返す。

 セイランがどうしたのか尋ねようとしたところで、重機の陰から手負いの生体兵器が飛び出しハナビへと飛びついた。


「「「ハナビ!!」」」


 生体兵器は慌ててエクエリを構えるツルギたちを確認すると安全に食事をするためハナビを加え走り出す。

 強化繊維の肩口を噛まれ中型のエクエリでは狙えない至近距離、そのまま引きずられるハナビの手からエクエリが落ち生体兵器は素手で抵抗する彼女の引きづったまま走り去った。


「ハナビが、追わないと……」


 慌てて追いかけようにも中型のエクエリは重く長くバランスの悪い武器は移動の妨げになる。

 銃口を下ろしてエクエリを抱え直して走り出すフウカをセイランが呼び止めた。


「待って、今の私は早く走れないの忘れましたの! フウカちゃんだって足は速くない、一人で追いかけていってまた待ち構えられていたらおなじことですわ。足並みをそろえて」

「でもこのままだとハナビが殺される!」


 フウカを説得しセイランが不完全な足で出せる最大の速さで生体兵器に連れていかれたハナビを追いかける。

ハナビのエクエリは錘になってしまうためその場に置いていかれた。



 生体兵器の傷口から垂れた血の跡を追って、ハナビを探して近くの建設中の建物の中に入ってきた三人。

 高い天井広く作られた通路はまだ電気は通っておらず、窓や扉は無いものの壁はしっかりとできていて、三脚に立っている工業用のランプの明かりだけが頼り。

 しかし、血が止まったようで建物の中に入ったところでたどってきた血痕は消えていた。


「ここからは慎重に行った方がいいですわ」


 そういってセイランが気を引き締めて建物に足を踏み入れた時、建物の奥から上着の脱げた状態でハナビが走ってきた。


「「ハナビ!?」」

「ヒヒヒ、逃げてきた」


 走るハナビのすぐ後ろから生体兵器が追ってくる。

 エクエリを当ててダメージを与えたにもかかわらず弱った様子のない生体兵器に驚くツルギ。


「無傷?」

「いえ別のでしょう! 頭を下げて!」


 ツルギとセイランがエクエリを構えハナビに向かって叫ぶ。

 ハナビが通路の端に避け射線を通すと生体兵器は狙われていることを察し近くの部屋に飛び込んだ。

 壁伝いに逃げてきたハナビが息を切らせツルギの肩を借り息をつく。


「キリギリ君、私の、エクエリは」

「持ってきていない、ハナビさんの救出を急いで置いてきた」


 話しているとセイランが急に後ろを振り返る。

 ツルギが視線を追うと土嚢の上に立つ豹型の生体兵器の姿。

 その体には傷がない。


「二匹目かよ」

「建物の中へ、自由に動ける場所を与えないために」


 土嚢の上にいる生体兵器向かってエクエリを構えるセイランとツルギ。

 フウカは建物の中に逃げた生体兵器を警戒しエクエリを持たないハナビはツルギの後ろに隠れた。


「ハナビさん、なんで服を」

「力任せに引きずられているうちに脱げた。そしたら上着だけ引っ張って行って逃げるチャンスができて慌てて走った。ヒヒッ、死んだかと思ったよ、怖かった」


「怪我は?」

「ない。大丈夫。強化繊維、強化繊維、あれのおかげ。武器もないから私はどうしようもない」


 外の生体兵器に攻撃をしかけると案の定、攻撃はかわされ土嚢の裏へと消える。

 4人は攻勢はあきらめ建物の中へと避難した。

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