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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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真価 4

 午後になって日が高く上がり気温が上がると、日差しを避けるため資材を覆うテントの中に移動したハナビたち。

 急ピッチで進められていた基地設営もお昼休憩に入り工事の音は何か所かを残すだけとなり静かになる。

 基地の入り口近くにあった資材に腰掛け休んでいた彼女たちのもとにセイランとツルギの二人が帰ってきた。


「おかえり、暑いね。ご飯食べた?」

「お待たせしましたわ。ええ、ツルギさんと一緒に食べましたわ」


「それで、手は直った? 戦えそう?」

「完全ではないですけど、握力は戻りましたわ。あと、足もしっかりと歩けるように直してもらいました」


 そういってセイランは足を上げ強く地面に下ろして見せ、自分のエクエリをもってハナビたちと同じように資材の上に座る。


「修理したって言っても、完全ではないから無茶しないでください」

「さっきハナビが決めた配置的には後衛なので、作戦通りに戦えればそれはないだろうとは思いますわ……戦えればですけど」


 話しているとハナビたちの視界に基地を出ていく車両の姿が見えた。

 基地を出て行く車両の天窓からは精鋭に支給される強化繊維の制服の姿が見える。


「そっか、朝顔隊と紫陽花隊たちが生体兵器の巣を叩きに出ていくのか。まぁ、まだほかに精鋭もいるから戦闘になっても大丈夫だろうけど」


 ツルギが装甲車を見て不安げにつぶやく。


「さっき一回あっただけで、あれ以来生体兵器の襲撃もないし出てきても一般兵たちで対処できる小型でしょ。そろそろ私たちだけで戦果上げたいよね」


 精鋭を乗せた車両は森の中へと消えていきそれを目で追いかけていたハナビは視線を戻す。


「もうそれにこだわらなくていいんじゃないですか? 普通に生きて帰ることを目的にしましょうよ」

「そのために戦うんじゃん」


 結成から終始平行線な会話を続けるツルギたちを見てセイランはため息をつく。


「あの二人、ずっとおんなじこと話し合っていますわね」

「まぁ、ハナビにはハナビの覚悟あるし。逃げてきたけど逃げたくないんでしょ」


「何にいってますの?」

「戦闘。王都からはいろいろ嫌になって逃げてきたけど、こっちに来て新しい場所ではしっかりしてたいんだと思うよ。逃げっぱなし負けっぱなしは嫌いな人だから。誰よりも向上心と他人を認めさせようとする気持ちが強いし」


「だから、隊の結成当初から張り切って仕切っているのですのね」

「ツルギは嫌だ嫌だと言ってるから、なおさらハナビが命令して押さえつけたがってるの。ああ見えて楽しんでんだよ」


「戦えって、戦いたくないから整備兵になったかもしれないのに、その整備兵に戦えって無茶言いますわ。そこは、王都の人間だからなのでしょうけど」

「まあね」


 生体兵器との戦闘もなく時間が過ぎる。



 ガサリ。

 音の聞こえたほうにフウカが首を傾けると森の奥、木漏れ日の中に生体兵器がいた。

 中型の生体兵器一匹、まっすぐゆったりと基地へと向かって歩いてくる。

 あまりに突然なことでフウカは一瞬呆け生体兵器を認識すると立ち上がって指をさす。


「ここに来る途中に見た豹型の生体兵器!」

「一匹いたから他にもいるでしょう、ボサっとしていないで! 戦闘戦闘」


 慌ててエクエリを拾い上げ構える向日葵隊。

 警戒をしている一般兵たちは気が付いておらず、他も作業を続けていて生体兵器の出現を知らせるためツルギがそっと警報装置へと向かう。


「すごい警戒してる、いつ飛び掛かってくるかわからない油断しないで」


 森を抜け切り株だらけの基地周辺をゆっくりと歩く生体兵器は、エクエリを構えているハナビたちを見ている。


「気配、一つじゃないですわ」

「え」


 森の奥から続くように4匹、同じ中型の生体兵器が同じくゆったりと歩いて出てきた。

 五匹は隠れるでも飛び掛かってくるわけでもなく歩いて出てくる生体兵器。


「なんで歩いてくるの?」

「そんなことわかりませんわ」


 警報装置にたどり着いたツルギが鉄柱についた赤いボタンを押し基地全体に生体兵器出現の警報鳴り響く。

 赤色灯が回り基地全体から重機の作業の音が止まる。


「これで増援が来る。よし戦闘開始」


 エクエリの射程距離に入りハナビの掛け声で一斉に引き金を引いたが、光の弾が出ると同時に生体兵器は横に飛び射線から外れた。

 そして着地と同時に後ろに控えていた仲間とともに一気に飛び掛かってくる。


「何で当たらないかな、この」


 速度は向日葵隊が朝に出くわしたものと同じもの、素早く機敏でその動きは目で追えてもエクエリで狙いをつけることはできない。

 五匹は土嚢やバリケードを飛び越え生体兵器たちは基地内に入り込むと、警報を聞きつけ駆け付けてきた一般兵たちへと向かって飛び掛かる。


「クッソ、体大きいのに素早い……でも私たちに飛び掛かってこない? 服装で精鋭だって認識してる?」

「基地に被害が出たら、また作戦は失敗ですわ。せっかく順調でしたのに」


 一般兵たちの陣形を乱し基地内に入った生体兵器たちは、ばらばらに散らばり建物の陰に消えていく。

 負傷兵を下げ指揮官の指示に従い再編成された一般兵たちと遅れて走り出す戦車がそれぞれを追うため基地内を走り回る。


「どうするんだ?」

「追うに決まってるでしょ! キリギリ君もエクエリ持って、いくよ」


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