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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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真価 2

 あちこちに大きな土嚢が壁として詰まれ迷路のようになっている基地内を走り回り、マクウチシェルターの旗の立てられている指揮所を見つけ向日葵隊は装備をもって装甲車を降りる。


 並べられた太陽光パネル、資材には雨避けとしてシートとテントが立てられ、簡易的な野戦病院として使われているテントの中には負傷者が寝かされているのが見えた。


「んじゃ、話聞いてくるよ。私らここにきて何すればいいかわからんし」

「私も行く、おなかすいたからなんかもらってくる」


 装備をツルギに押し付けハナビがフウカを連れテルとともに指揮所に向かっていくと、テル以外の紫陽花隊は装甲車を走らせどこかへ行ってしまった。

 指揮所の手前で残されたツルギたちは、基地設営の邪魔にならないように建物の壁により装備を下ろして作業風景を眺めている。


「どこも手際がいいな。来る時より車両の数が? ああ、放棄された車両を修理したのか」


 整備兵であったツルギの目から見ての感想を述べると、元一般兵で以前作戦に参加していたセイランが自慢げにこたえた。


「当り前ですわ、この作戦何度目だと思っていますの。手順は頭に刻み込まれ、目をつむってでも作業ができますわ」


 一般兵たちが壁を設置する位置に大きな袋を組み立て、重機がその中に土を入れていくことで大型の土嚢が出来上がる。

 それを道沿い並べ迷路のような壁をつくり基地を囲んでいく。


「ところでセイランさん、壁作ったところで、匂いとかで発見してくる生体兵器に意味はあるの?」

「何か燃やせば人の匂いなんて覆い隠せますし、土嚢やバリケードも岩や瓦礫を投擲してくる生体兵器の攻撃を防げますわ。それに大型中型の足止めになりますし、小型の体当たりのような攻撃もある程度防げますし、視界を悪くすることで逃げ出すタイミングができますわ」


 折りたたみ式の脚立のような鉄柱をいくつも組み合わせジャングルジムのように組み立てたフレームに、いくつもの装甲板を取り付けフレームの間に小さな土嚢を入れることで即席のトーチカを作り上げた。


「あれは?」

「見ての通り即席の壁ですわ、銃口の出せる覗き穴があって隠れながら戦えますの。熱感知とか音で距離や獲物を探す生体兵器からそこそこ身を隠せます」


「それにしても、車両から装備から道具まで見たことないものがたくさんあるな」

「そりゃ、この作戦を成功させるために王都の指示であちこちのシェルターから物資をもらっていますもの。回数を重ねるごとに物も種類も増えていますわ」


 見たことのない基地設営装備に興味を持つツルギ。

 二人が話しているとそこへ両手に携帯食料を抱えたフウカが戻ってくる。


「ん、二人とも朝ごはん」


 フウカの持つ携帯食料を手に取り三人はその場で食事を始めた。

 食事が終わるころハナビがテルとともに指揮所から出てきて、別れたのち3人のもとへと向かう。


「ご飯食べ終わったら私たちも基地の防衛するよ。音、匂い、熱を感知して全方位から生体兵器が襲ってくるんだってさ。私たちが来るまでに6回襲撃されてるって」

「俺らがここに向かってるときも戦ってたもんな」


 ハナビがツルギが答える。


「私たちは、この後紫陽花隊と朝顔隊が近くにある生体兵器の巣に乗り込んで戦うから、私たちはその防衛網の穴を守ってほしいってさ。作戦開始は午後になってからだからそれまでは他の精鋭が戦ってくれる平和な時間が過ぎるでしょ」

「精鋭が減った状態の基地防衛……」


「戦車もいるし、協力して戦っていけば問題ないっしょ。ダイジョブダイジョブ」

「またそうやって……」


「まずは補給、バッテリーとか用意しておこ。忘れると大変だから」


 フウカから携帯食料を受け取りハナビは自分のエクエリをもって歩き出し三人も荷物をもって彼女の後についていった。



 大きな岩をどかしている重機の脇を抜け基地と森との境目へとやってくると、木々が切り倒され切り株だらけの景色を見てハナビは基地に一番近いところにあった切り株に腰を掛ける。


「次の戦闘に備えていろいろと作戦会議しないとね」

「いまさらですか」


 近くにある戦車や砲台の位置を確認していたツルギがつぶやく。


「必要でしょ? 初仕事でも、湖でも、川でも、今日の朝でも、今まで一度となく隊としての連携がなく好き勝手に戦った結果、戦果は小さいんだもん」

「そりゃセイランさん以外みんな素人ですから、狙って引き金轢くだけで精一杯ですよ。生き残ろうとするだけでいっぱいいっぱい、陣形だって狼との戦いで全く役に立たなかったじゃないですか」


「そこで考えたんだけど、私とキリギリ君が前衛、フウカとセイランが後衛で戦うの。私の散弾は後ろじゃ誤射るし、ツルギ君は力があってエクエリを持ってても私たちより足が速い」

「まぁ……」


「後衛に選んだのは今回は足がってのもあるけどセイランは私たちのカバーをしてくれることも考えてる。フウカはツルギ君とは逆で足が遅いから。質問は」

「突然決めて、うまくいくと思うんですか?」


 鞄からコロンを取り出し髪に付与する。


「それはこれから確認するんだよ」


 まるでその言葉を待っていたかのようにハナビの言葉の直後、基地に生体兵器出現のサイレンが鳴る。

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