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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
537/798

真価 1

 

 黒煙も近づいていくと誰かの通信に反応し携帯端末にノイズが走り始めた。

 ノイズの中から誰かの声も聞こえるが応答しても向こうからの返事はない。


「だいぶ近づいてきた。そろそろなんか出てくるかもですね。すみません、そろそろ俺ら行きます。精鋭が少ない分苦労しているでしょうし俺ら二人でも行かないと、そちらも気を付けて」

「あ、ちょっと。置いていくの、私たちを?」


 ハナビが引き留めようとするもコウヘイとノノがバイクにまたがり、エンジンをふかして黒煙のほうへと走り出す。


「あ、ちょっ……」


 引き留めようとしたハナビを残しバイクは森を出て道を走っていきすぐに見えなくなる。

 森の中に置いていかれた向日葵隊は居なくなった蒲公英隊を追いかけるようにハナビが歩きだす。


「んじゃ私たちもさっさと合流しよう、こんなところで生体兵器に見つかりたくないし。向こう着いたらなんか車両借りて、セイランを置いて、ちょこっとだけ戦闘に参加しよう」

「また戦闘……もう帰りたい」


「嫌そうだねキリギリ君、さっきもかなり危なかったしね。私たちは束になっても生体兵器一匹殺せないし。このまま向こうに行っても足手まといになるって考えてるでしょ。あ、答えなくていいよ色で分かるから」

「行くなら早く行きましょう、ここにいても襲われるだけですし」


 ツルギがつらそうな声を出しハナビが頷く。


「そうだね。んじゃ、向かおうか私たちの目的地だし。朝から疲れたよもう」


 向日葵隊は森の中を道沿いに歩きだす。



 半時ほど歩いて向日葵隊は黒煙のたもとへと到着する。

 周囲に転がる生体兵器の死骸、火は消えたものの薄っすら煙を上げるトラック、前線基地設営地点は戦闘の後があった。


「ついた……生体兵器に合わなくてよかったね。ふぅ、足が痛い」

「俺はセイランさんを背負って歩いたんだけど」


 何回目かの作戦で放置された錆やほこりをかぶっていた重機がせわしく動き回り道の整備、死骸やがれきの撤去、建物の土台を作っている。

 基地の周囲に数台の戦車が仮の防壁として並べられ生体兵器を警戒していて、その近くに組み立て式のエクエリの砲台が並べられていた。


「お疲れ」

「それだけか」


 失敗しているがこの場所に何度か来ていたこともあり、ゼロからのスタートではなくすでに壁や天井のある建物も見える。

 生体兵器の襲撃に備えピリピリした空気の中一般兵たちはいつでも戦えるようにエクエリを持ちながら工事に手を貸し、精鋭たちは基地の周りをばらけて警戒していた。


「ハナビ、私たちはこのあとどこ行くの?」


 基地に入り構えていたエクエリを下ろして空腹でうなだれたフウカが尋ねてきた。

 彼女の空腹は限界で生体兵器の死骸をみて腹を鳴らせている。


「とりあえず、バッテリーの補給と生存報告かな。他何すればいいかもわからないし」

「なら、おなかすいたからご飯食べよ」


「確かに、お腹すいたね。昨日も夜も朝ごはんも食べてないし」

「ひもじい」


 向日葵隊の緊張がゆるみ今まで黙っていたセイランがツルギの背中から静かな声で話かけ、耳元で話しかけられた彼を驚かせる。


「ところでツルギさん。ここで私の足は直せませんの? こんな状態では戦えませんわ」

「たぶん無理だと思います。整備士は作業で忙しく、ここに義足の替えになる部品があるとも思えないし。俺が直した時みたいな強化外骨格のパーツを使いまわして動く程度になるだけかと」


「じゃあ、私このまま荷物として扱われるんですの?」

「仕方ないでしょう、サージ対策してなかったんですから。電気を持つ生体兵器なんているとは思わなかったわけだし」


 セイランの言葉にハナビが笑いながら。


「別にいいんじゃない? キリギリ君は荷物持ちなんだし、そのまま」

「私は荷物じゃないですわ!」


 ハナビたちが工事の様子を見ながら指揮所を探していると、紫陽花隊の乗った装甲車がやってきてふらふらとしていた向日葵隊の横に止まる。

 戦闘の後がありその側面に大きな凹みと小型の生体兵器らしき細く長い爪痕が無数についていた。

 窓を開けテルが顔を出す。


「ごめんね、私たちがいない間になんかいろいろあったみたいで。怪我は、司令部まで車乗ってく?」


 ハナビはツルギに背負われているセイランを指す。

 セイランはテルと目が合うと小さく会釈した。


「お願いします、うちの隊員が足を怪我してうまく歩けなくて。私たちも乗せていただければ幸いです」

「わかった、後ろに乗って。見たところここなんかさっきまで戦闘があったみたいだね、ツバメにでも話聞こうかな」


 後部のハッチが開けられ装甲車へと乗り込む。


「お邪魔します」

「失礼します」


 車内は脱いだ衣服やお菓子の袋などで散らかっていた。

 天井も高く拾い車内でガタイのいい紫陽花隊の男性隊員がいて向日葵隊4人を見て場所を開ける。

 男は足で床に散らばるゴミを片付けていく。


「ヒグマ、も少し端に詰めて。あんた図体デカいから向き合って座るとみんな委縮しちゃう」

「と言われても困る」


「ごめんね。デカいのはヒグマ、運転手が隊長のコウガ。男くさくてごめんね、朝顔隊や向日葵隊みたいに女の子だらけだったらもう少し綺麗にしてたんだけど」

「散らばる私物の半分はアメノのだろう?」


 向日葵隊が装甲車に乗り込むと基地の中心へとむけて走り出す。


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