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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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前線基地設営作戦 11

 ツルギたちと中型の生体兵器はしばらくにらみ合う。


「今の攻撃を受けてかなり警戒してるけど、向こうの戦闘が終わる前に倒さないと」

「お腹すいて力はいらない」

「勝てないと判断して逃げてくれないかなぁ。追わないから」

「怪我をしたらその分襲ってくるって今言いましたわよね」


 流れ出る血が止まると生体兵器は休んでいた木の上から降りる。

 向日葵隊の前に降り立ちツルギたちが銃口を向けると、それよりも素早く横へと飛びセイランへと飛び掛かった。

 先ほど同じようにエクエリを盾にしようとするが、セイランの目の前で停止し攻撃のタイミングをずらす。


 突き飛ばし覆いかぶされるように乗ってくる生体兵器にハナビたちはエクエリを向けるが生体兵器は三人を飛び越える。

 引き金を引くも光の弾はかすりもしない。


 ハナビの散弾も大きく飛びのくとことで躱され、フウカの地面に撃った炸裂式雷撃弾も電流が流れない位置まで退避。

 大きな体に対し驚くほど機敏で細かな動きをする生体兵器は、向日葵隊の周りをまわり今度はハナビへと飛び掛かった。


「早い、このエクエリ銃口向けるのが追い付かない」

「小型のエクエリだったなら……ないものねだりですわね」


 地面へと突き倒しハナビを陣形から孤立させるが、すぐに開放しまた向日葵隊の周囲を跳ねまわる。


「とどめを刺しに来ない」

「一人づつ弱らせるつもりだよ、ヒヒッ。痛てー、うわ、血が出てる」

「強化繊維のおかげですわ。先ほどの一撃、強力な牙で噛み千切ることができず戦闘力を判断しなおしているのでしょう」


 額から赤い血を流したハナビがツルギの手を借りて立ち上がり、再びエクエリを構えて引き金を引く。


「何とかならないのか」

「私の力、未来予知でも思考の先読みでもないんだよ。生き物の纏う色を見るって言っても、知らない色だってあるし」


 ハナビが苦笑いしながら中型の生体兵器を目で追いかける。

 ふいに二人の後ろでセイランがしゃがみこんだ。


「バッテリーが切れましたわ。ツルギさん悪いけど替えてもらえません」


 プラリと動きの悪い腕を前に出すセイラン。


「ああ、わかった」

「急いでよ、また突っ込んでくるかもだから」


 セイランからエクエリを受け取りバッテリーを取り換えるツルギ。

 何も持たなくなったセイランは腰から軍刀を抜く。


「その剣切れるのか?」

「刀ですわ。生体兵器相手にどれだけ通用するかわかりませんけど、ないよりかましでしょう」


 そういって軍刀を構えるが、飛びついてきた生体兵器の牙で受け止め咥えられセイランの手から離れる。

 勢いで尻もちをついたが怪我はなくすぐ立ち上がって、バッテリーを取り換えているツルギを守にいく。

 その際に動きの悪かった修理されていない腕がガチリと音を立てて下を向いた。


「どうした」

「完全に壊れましたわ!」


 そうしている間に軍刀を咥えた生体兵器にフウカが突き飛ばされ、ハナビが銃口を向けるとすぐに中型の生体兵器は飛びのいた。

 ハナビが駆け寄り倒れたフウカをおこしに行く。


「お姉ちゃん、血が」

「何かで足止めしてくれないと当たらないね。キリギリ君、犠牲になって」


 土煙をまき散らし暴れる大型の生体兵器から距離を取るように移動して、向日葵隊は中型の生体兵器と交戦を続ける。

 大型の生体兵器の木々をなぎ倒し土煙を上げる戦闘に巻き込まれないようにゆっくりとだが戦闘区域から離れていく。

 地面を転がり土まみれのフウカを連れ戻ってきたハナビが軽口をたたいた。


「嫌だよ、なんで俺をいちいち囮に……。セイランさん、バッテリー取り換え終わりましたよ」

「ありがとうございます」


 生体兵器を倒すことができずもたついていると遠くからエンジンが聞こえてきた。


「ん、何か聞こえる。エンジン音」

「助った」


 大型の生体兵器の巻きあげる土煙の向こう、エンジン音を響かせ二台のバイクが走ってくる。

 バイクは大型の生体兵器の戦闘から離れるように大きく迂回し森すれすれを走ると中型の生体兵器へとむけて小型のエクエリを向け引き金を引く。


 生体兵器は攻撃を避け通り過ぎていくバイクを追いかける。


「今の蒲公英隊ですわね。私たちより人数が少なかったからでしょうか?」

「合流できなかったけど、助けてもらえた。辛いね」

「おね……ハナビ血が」


 バイクは離れていき曲線をたどって森に消えていくと直後に連続した爆音と土煙が上がった。


「爆発した」「爆薬でしょうね」

「事故か?」「見に行くの?」


 土煙のほうを見ていると先ほどのバイクが引き返してくる。

 その後ろに中型の生体兵器はおらず、ハナビの携帯端末に蒲公英隊の隊長コウヘイから連絡が入った。


『無事ですか怪我は?』

「大丈夫、みんな擦り傷程度だよ」


『生体兵器同士が戦ってたから、紫陽花隊と遠くから見てたんですけど。エクエリの弾の光が見えたので助けに来ました』

「ありがとうございます。紫陽花隊は?」


『離れたところにいます。さすがに装甲車であの戦闘を横切るのは危険だから。とりあえず移動しましょう。ここは危険です、第七世代との戦闘に巻き込まれる』

「ダイナナセダイ? あの大型の名前ね。今はどうでもいい、早く本隊と合流したい」


 ツルギがセイランに肩を貸し、蒲公英隊の後を追ってその場を後にする。

 振り返れば豹型の生体兵器は地面に押し付けられるように倒され、爬虫類型の生体兵器が両腕でつかんで持ち上げるとその喉元に食らいついていた。

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