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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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前線基地設営作戦 9

 夜明け、日が昇り朝日が装甲車の壊れた運転席や覗き穴の隙間から入り込んでくる。

 眠っていたハナビたちが目を覚ます。


「おはよう朝だ、よく寝た! さぁ、出発だ」

「おはようハナビ。座って寝るの疲れたね、髪洗ってないからごわごわだ」

「おはようございます。誰も見張りをしないで翌朝が迎えられたと驚いていますわ。私も寝てしまったし」


 ハナビとフウカは包まっていたシートから抜け出し埃っぽい車内から表に出る。


「仕方ないよ、みんな疲れてるんだから。うわ、キリギリ君、セイランの足抱きしめて寝てる」

「なるほど脚フェチだったか」

「いや、無意識のうちにたまたまだと思いますわ。ツルギ君、夜通しで修理していてくれたもの寝落ちしたんでしょう。悪く言うのは酷ですわ……えぇ……」


 森に囲まれた一本道の傍らにある壊れた装甲車。

 地面に降りると同時にハナビとフウカは車内の床に置いていたエクエリを取り構える。


「さぶっ、朝冷えんなぁ。ハナビ、お腹すいた」

「そういっても、食糧なんか持っていないよ。フウカの鞄に入ってなかった?」


「昨日の湖の前の休憩で小腹がすいて食べちゃった」

「じゃあないよ。早く先行った前線基地の設営部隊と合流して食べ物もらわないと」


 外の空気が車内に流れ身震いしながらツルギが目を覚ます。

 寝ぼけて埃だらけの床にもう一度横になろうとする彼にセイランが声をかける。


「おはようございます、ツルギさん。その、足は直りましたか」

「ん、ああ? んん……おはようございます。義足ですか、直ったというか動くようにしたです」


「では、足をつけていただけません? その状態で覚えているかわかりませんけど、私片腕が使えなくてボタン一つまともに外せませんの」

「ああ……そうでしたね。ふぁぁ」


 ツルギが大きくあくびをしそれが外にいたハナビに伝染した。

 立ち上がり大きく体をひねって運動をしたツルギは、修理した二足の義足をもってセイランのもとへと向かう。


「お姫様のガラスの靴は直ったの?」

「一応動くようには」


 外から話しかけてくるハナビにツルギが答えると、スカートを上げるセイランの前に跪きツルギは直した義足を添える。


「お姫さまって、実物のお姫様に言われても困りますわ。あ、ツルギさん左右間違えないようにおねがいしますわよ」

「わかってるって」


「今回はベルトは結構ですわ。跳んだり滑り込んだりする過激な運動でとれないためのサポートなので、どのみち直り切っていない足での戦闘は無理ですわ。軽く走る程度なら取れませんし」

「わかった」


 留め具を固定しツルギの手を借りてセイランは立ち上がる。


「違和感とかはありますか?」

「ええ、でも動く分にはそれほど問題なさそう。倒れないように手を貸してもらえれば」


 直した義足が少し歪とはいえ動くことを確認すると一度座席に腰を下ろし、脱いだ強化繊維のタイツとブーツを履かせてもらう。

 準備の整ったセイランとツルギもエクエリと鞄を持ち装甲車から降りるとハナビたちと合流。


「ところでその義手ってどうなってるの? 指とか普通に動かせてるっぽけど」

「ああ、この義手に生体電流を感知する装置が付いていてそれで思うように動かせます。もちろん普通なら指一本動かすにも嫌になるほどの気の遠くなる練習が必要です、それも手足となると何年かかるか」


「でもセイランは普通に手足動かせてるよね? セイランが手足失ったのそんな昔なの」

「いいえ、詳しく説明してませんでしたわね。私の何となく誰が隠れていたり距離のわかるあの感覚で、指がこんな感じに動くなぁと。そしたらほかの人が何年、何か月もかかるリハビリを一日の大半練習して、二か月くらいで終わらせましたの」


「そう聞くとすごい便利な力だね」

「力だけで言えばですけど、シェルターの日常には不向きな力ですわ。日常で手足を失うなんて滅多にないんですから」


 4人は緩やかなカーブを描いて先の見えない一本道の先を見る。


「どれくらい先に前線基地を作るんだっけ」

「地図がないとわかりませんけど、あの川がシェルターから3分の2の地点ですからすぐにつくはずですわ」


「車なら、ね。ところで何で知ってるの? 説明あったっけ?」

「携帯端末にこの作戦の内容のうつしが配布されていますわ。使い方ちゃんと覚えるためにいろいろ操作して見つけましたの」


「そういや、この携帯端末エクエリの反応をキャッチして位置教えてくれる機能あったよね」

「落としたエクエリを探す機能ですわね。でも探知距離が短いですわ」


「ダメか、やっぱ途方もなく歩くしかないのか」


 どこまで歩けばいいかわからず落胆するハナビ、空腹を訴えるフウカ、少しぎこちない足取りで歩くセイラン、大きなあくびをするツルギ。

 彼女たちはいつ遭遇するかわからない生体兵器に備えてエクエリを構え歩き出す。


 そんな時だった、四人の前に木々を倒し森の中から中型の四足獣の生体兵器が4人の前に現れた。

 黄色い体に黒い斑点軽やかな動きで木の幹を蹴り跳ねまわるように移動し先ほどまでツルギたちのいた装甲車の上に飛び乗る。

 一瞬で数十メートルの距離を詰めてくる巨体に思考が麻痺し、それを目で追いかけるだけで反応などできない。


 セイランが反応し振り返るよりも早く、折られ倒れていく木々が倒れるよりも前に、二体目の生体兵器が現れた。


 同じく中型の四足獣生体兵器、

 二匹とも戦闘の後のようで頭や体に流血を伴う細く長い爪の後が引かれている。

 今まで音もなく森の中から急に目の前に現れるまで全く気が付かなかった生体兵器2匹が向日葵隊の前に現れ、牙をむき出しにして威嚇をしたときようやく我に返りエクエリを構えた。


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