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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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前線基地設営作戦 7

義足は膝の上まであるようでセイランのたくし上げるスカートの中へと消えている。


「ハタタギャ……言いずらいセイランさん、これ取り外しは」

「ええっと、両方とも激しい運動である戦闘中には外れないように腰のベルトから引っ張り上げ装着する感じになっていますわ。脱ぐには……そのこの状態では少し難しいですわ」


自分の手を握り戸惑うセイラン。


「それじゃこのまま直せるかやってみます」

「お願いします。それとですねもう一つお願いがありますわ」


「え、俺にできることは少ないけど」

「大丈夫、足が直せるならできますわ」


「それって」

「義手も直してほしいのです」


そういうとセイランは土で汚れた白い手袋を取る。

そこには足とは違い手首や指先など関節部があからさまな機械の義手の腕。

セイランはツルギに背を向け片腕だけ服を脱ぐと手を肩へと伸ばして体と固定しているベルトをはずすと彼女の肩からその義手の腕は落ちる。


「これは……」

「生体兵器との戦闘で食われましたわ。こちらだけではなく両腕。もう何年も前の話、でも手足がないだけで済んだのは幸運。普通なら命を落としてもおかしくはないのですもの」


話しながらセイランは腕を拾いツルギへと差し出す。


「それでも、その体は痛々しい」

「普段は誰にも見せませんわ。今だって、腕が壊れてなかったら見せたりなんてしませんもの」


「ひとまず足が先でいいよな」

「お願いします。とりあえず足さえ直れば明日からは歩いて移動できますからそれだけはおねがいしますわ」


シートに積もる埃を払ってハナビたちが戻ってくる。

しっかりと戸を閉めツルギたちのそばへとやってきた。


「びっくりした。戻ってきたらセイランがスカートめくりあげてるし、そこにキリギリ君がライト当ててるし何してるのかと思った。ニヒヒ、暗くてすることがないとはいえ夜は長いぜ、あせるなよ」


ハナビの言葉に暗い中、セイランとツルギは顔を赤くして慌ててスカートを下ろしそっぽを向く。

ツルギも弾かれるように強化外骨格のほうへと移動した。


「べ、別にそんなつもりじゃ!」

「変なこと言わないで、こんな時にするわけないじゃない。もう、恥ずかしくなってきましたわ!」


それからしばらく廃棄された装甲車に置いてあって錆びた工具箱を取り出し強化外骨格の部品をはずしていく。

やることもなくシートを羽織ったセイランとフウカは自然と寝息を立てている。


「こんな状況なのに二人ともよく眠れるな。セイランさんは一般兵だったからそういうのに慣れてるのか疲れただけなのか」

「ニヒヒ、フウカはどこでも眠れる子だから。それに一度寝たらちょっとやそっとじゃ起きないっていうね。それでセイランの足は直りそうなの?」


ライトはツルギが強化外骨格の部品をはずすために使っているので背後の暗闇からハナビの声だけが聞こえてくる。


「一応、ここにあるのでそれなりには動くようにはなると思う。さすがに義手や義足の修理はしたことがなくて、壊れた部分の代わりに強化外骨格の部品を交換して差し込んでいくだけだから細かい調整はできないけど、とりあえずこの借りた腕で練習してみる」

「ふーん」


強化外骨格の部品をはずして取り外したセイランの腕を分解し始める。

暗がりからハナビがまた話しかけてきた。


「ねぇねぇ、その腕にエクエリつけたりできないの? 引き金とか内部にしまい込んで完全に腕と同化するような奴」

「できなくはないけど、小型でも重さが重さだからずっと装着していると姿勢とか骨が曲がる可能性がある。それに片腕が手として使えないのは行動に制限が出るとおもう。絶対に手放さないと考えれば利点だけど、やっぱり手として使えないのなら意味がないかも」


「まぁ、確かに言われればそうだ。かっこいいと思ったんだけど、実用性がないのなら仕方がない」

「しかし、セイランさんが義手なのは驚いた。生体兵器に襲われて、ああまでなってしても戦ってるんだな」


「彼女の姿を見て背徳てきな感情でも沸いた?」

「わかない、どうしてそこでそうなる」


作業の手を止めハナビのほうを振り返るり、暗くて見えない暗闇の奥で笑い声が聞こえてくる。


「もしここが王都だったら手足が義足とか知ったらそっこうでセイラン攫われてたかも、意図的に作るのは禁止されてるから」

「王都の進んだ医療でなんとかしてるれるのか?」


「そんなことするわけないじゃん。玩具だよおもちゃ、ニヒヒ。手足外して虫みたいに這ってるところを見て笑うの」

「最低だな」


「そうだよ、今の王都の流行りはワーストから何人か人連れてきて、色のついた服を着させ防壁の外に放って食べられる順位を賭けるの。もちろんドローンで生中継でね。面白そうでしょ、心が汚れ感情がゆがみ下種と外道の巣窟。それが今の王都、これだけ聞くと素敵なところでしょ」

「いや全然、どこが素敵なところだよ。なんだよそれ最低最悪じゃないか、ハナビさんもそういうので喜んだりする人なのか」


「まぁ、たしなむ程度には。怒るなよ、私は今は違うから」

「今はって、そう簡単に人が変わるのか?」


「そう。そう簡単に人は変わらない。変わるとしたらそれは変わらざる追えない状況に陥ったとき。実際フウカの色は変わったし」

「変わったのか。あのシェルターに来たのが王都に出たのが初めてならまだ二週間くらいしかいないんだろ?」


ハナビは横で寝ているフウカの頭をなでる。


「変わったよ、この間死にかけてから。ニヒヒ、だいぶやわらかくなった。もっと言えば最近セイランも少し色が変わったし。実際わたしも少し変わってるんだよ、気が付いた?」

「目に見えないものは気が付けないだろ」

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