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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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前線基地設営作戦 6

 周囲を見れば戦っていた精鋭も援護してくれていた戦車もいなくなっていた。

 橋はかかったままだがその付近に人の姿も車両の姿もない。


「他の大型の生体兵器は?」

「橋に近寄らせないため戦車の前におびき出して何匹か倒し、残りは蒲公英隊がバイクで崖に降りて大型の生体兵器を引き連れていったよ。エンジン吹かして爆音で、土ん中にいた二人には聞こえていないか」


 ハナビも参ったと頭を掻きながら設営部隊が向かった方を見る。


「先に行かせた一般兵たちが生体兵器と遭遇したみたいでさ、ここにいた精鋭たちはみんな行っちゃって、来るの遅いから見に来たら二人が引きずり込まれて。もう慌てて体当たりだよ」

「流石姉さま、強引」

「なんであれ、あれのおかげで助かったのですから」

「でもこれからどうするんだ。いつさっきみたいな大型の生体兵器が襲ってくるかわからにような場所を、俺たちだけで歩いていくのか?」


 周囲に失った車両の代わりになりそうなものを見回し無言になる4人。

 風に揺れる木々のざわめく音の後にフウカが口を開く。


「当り前じゃん?」

「それしかないじゃんね」


 周囲を見回し警戒しながらも危機感のないハナビとフウカ。


「私の義足、両足とも壊れてしまっていて」


 ツルギの肩を借りてなんとか立っているセイランがつぶやく。


「背負うよ、それでいいんだろ。早く行こうこんなところに生体兵器が出てきたら大変だ、どこかの精鋭の車が戦闘していて合流できることを祈るしかないか」


 この場に残っていても仕方なく4人は新しい轍の跡を追って歩き出した。


 しばらく歩くも誰の姿も見えず、後ろから生体兵器と戦うために離れた紫陽花隊や蒲公英隊の姿もない。



 昼間とは対照的に夜は冷え風も吹き始め、すでに日は傾き空は薄暗くなり始めていた。

 そんな中、向日葵隊の前に路肩に止まる装甲車を見つける。


「やった、だれか知らないがあそこに止まってるぞ」

「ほんとに? 付近に生体兵器いないみたいだけど、乗ってた人の姿が見えないよ」

「トイレ休憩じゃない?」


 近づくにつれその装甲車は放棄されたものだとわかるとツルギが大きく肩を落としため息をついた。

 タイヤはすべてパンクし草が絡んでいる。

装甲には大きな傷が複数ありそこから雨水を伝って流れた錆が縦線をいくつも引いていた。


「過去に前線基地設営のために来た装甲車ですわね」

「紛らわしい」

「中は埃まみれだけど、一応中に入っておく?」


 じきに夜になる森の中を進むのは危険と4人は装甲車の中へと入る。

 生体兵器の攻撃を受けたのか運転席は破壊されていて、扉を閉めると手元がギリギリ見える暗さの荷台。

 荷台の半分を残されたままの荷物が占拠し、埃をかぶった物資を覆うシートをさけて座席にセイランを下ろす。


「お、重くありませんでした? ぎ、義足も含めて」

「いやそんなには? エクエリ持って移動したけど苦になるほどじゃなかったですよ」


 赤面するセイランにツルギが返すとフウカが不満そうな声を上げた。


「私の時は重いって言ったよね? ねえハナビ」

「フウカ、私より体重あるじゃない。そんなことより冷えない、なんか寒いんだけど」


 扉を閉めれば風はおおよそ防げるものの、壊れている運転席からも隙間風が入り込んできて完全ではない。


「じきに夜になりますし、このままだと何も見えなくなってしまいますわね」

「鞄の中に一応エクエリにつけられるタイプのライトなら持ってるけど、暖を取るものはないな」


「かさばるから持ってこなかったけど、マントとかポンチョとかもらっておけばよかったですわ」

「確かに、あれば寒さをなんとかできたかも」


 ツルギはライトを取り出し明かりをつけると車内を照らす。


「やっぱ、明かりがあると落ち着くな。でも光が車外に漏れそうで怖いな」

「だね。あ、この荷物覆ってるシートはがしてみんなで包まればよくない? 埃すごいけど、ないよりはましかも」


 扉を開けハナビとフウカがそっとシートを持ち上げ外へと持っていき埃を払う。

 装甲車について少ししか時間がたっていないはずだが、そとはすっかり夜闇に包まれていた。


「やば、何も見えね。早く戻ろうフウカ」

「こんなところで戦闘にはなりたくないね」


 ハナビたちがシートを取り払った下には工事用の強化外骨格が置かれている。

 それを見て足が壊れて動けないセイランがつぶやく。


「これを使って、工事するのですね。こんなところに置いておいていいのですの?」

「おいてかれてるってことは廃棄されたんでしょう? 一機一機が高いのにもったいない。重たい資材を下ろしたり運んだり支えたりするのが役目だな……あ、ハタカガミさん」


 ツルギが強化外骨格のほうへと歩いていき、それらを一つ一つライトで照らし確認していく。


「なんです?」

「その足の義足ってなんの人工筋肉ですか? 水圧式のだったりします?」


「ええ、その通りですわ見ていないのによくわかりましたわね」

「いや適当です。これ、この強化外骨格がちょうど水圧式の人工筋肉だったんでもしかしたら壊れた足は直せるかもしれないです」


「本当!?」

「もしかしたらですけど。ここのやつの劣化がひどくなければ……とりあえず、ハタカガミさん、足を見せてもらっていいですか?」


 セイランは長スカートを膝上までたく下げツルギに動かなくなった義足を見せようとする。


「すみません、そういえば制服と一緒に支給されたタイツをはいていましたわ。これのおかげで義足も折れなかったんです」

「言われるまで全然義足だとも気が付かなかった」


「普段は丈の長いズボンをはいて目立たないようにしてますから。脱ぎますから少し肩を」

「え、ああ」


 ブーツを脱ぐとツルギの首に手を回し腰を浮かしてスルリとタイツを下ろすセイラン。

 タイツを脱ぐと彼女の壊れた義足に向かってライトを向ける。

 遠目から人の足に見えるように肌色に作られたカバーの部分が焼け黒く泡立った炭になっていた。


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