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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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前線基地設営作戦 5

 


 崖の下に落ちた生体兵器が再び上がってくるのをエクエリを構えたまま待つ。

 生体兵器が気になり崖から目の離せないツルギはセイランに尋ねる。


「車両はまだ渡り終えないのか?」

「見える感じだともう一息、向こうに見える車両はあと6台ほどですわ」


「早く、ここから離れたいのに」

「でも、帰りもこの道ですからあの生体兵器を倒さないと帰りも戦闘になりますわよ?」


 そこへ無線から精鋭からの指示。


『車両の大半は渡り終えた。精鋭の半数は車両を連れ先に向かってくれ』

「ですって」

「なら早く行こうぜ」


 話を聞いて向日葵隊は橋を渡ったハナビの待つ装甲車へと向かう。

 ツルギたちの足元の土が盛り上がると、崖を掘り地面の下から大型の生体兵器が現れる。


「やば、ちかい!」


 フウカを突き飛ばしツルギも逃げ出す。

 戦車が慌てて砲塔を動かすが向日葵隊が射線にいて撃つことができない。

 大型の生体兵器は別の方向に飛んで避けたセイランのほうを向き、ツルギがエクエリを向けると体に激痛が走る。

 地面から湯気が上がり体が硬直しエクエリを手放し地面に手をつく。


「いてぇ、体に力はいらねぇ……」

「あっ、ぐぅ……」


 ツルギの前で同じように倒れるフウカ。

 地に付したツルギたち真上を戦車の主砲が通過し、大型の生体兵器の体に大きな穴をあけ生体兵器は自分の開けた穴に落ちていく。


「しっかりしろ。フウカ、走れここから早く離れろ」

「そんなことわかってる! 先行くよ、私」


「まって、ハタカガミがくっそ。死んでないよな」


 生体兵器が消えツルギはふらつきながら立ち上がり、地面に倒れているセイランのもとへと歩み寄る。

 セイランからは何かが焼ける焦げ臭いにおいがした。

 気を失っているセイランの脇を抱えて引きずるように運ぼうとするが、そこへ穴から出てくる大型の生体兵器。


 首をねじり大きく開いた口から舌を伸ばしセイランの足へと絡め大きく開いた口へと引き込もうとする。

 突然足をすくわれて倒れ、強く引かれ後ろへと引きずられるツルギ。


「まだ生きてたのかよ!」


 鞄の紐に手をかけ力強く踏ん張るも力量さになすすべなく引きこまれるツルギ。

 目の前で飲み込まれようとするセイラン。


「だめだ、引き込まれる!」


 目覚めてすぐそばに生体兵器の大きな頭を見てとっさにツルギの体に腕を伸ばし抱き着くセイラン。

 足をばたつかせもがいて舌から抜け出したセイランを立たせて連れて逃げようとするが、口を開いたまま首を伸ばす大型の生体兵器から逃げ切れずに、岩同士がぶつかり合うような重たい音とともに彼女の方足が噛まれ抵抗できない強力な力に引きずられて転倒する。

 直後、セイランを掴むツルギの体に激痛が走った。


「はなさないで」

「っ、気が付いたか。なんだ、痺れるような……腕がちぎれそうだ、その手絶対離すなセイラン」


 先ほどの一瞬だけの痛みとは違い、セイランに触れている間その痛みは続く。

 セイランを咥えたまま自身の掘った穴の中に戻ろうとする生体兵器。

 何度となく戦車の一斉射を受けても大型の生体兵器はセイランを放さず、継続定期な痛みに耐えるツルギを引きずったまま穴の中へと戻っていく。


 セイランを掴んだままツルギは生体兵器とともに穴の中に落ちる。

 大型の生体兵器の掘った穴は大きく、自らが出す粘液と木の根によって土が固まっていて今すぐに穴が崩落してくることはなかったがツルギとセイランの上に大量の土が落ちてきた。


「このままじゃ、川まで連れて行かれちまう」

「何とかしてください、殺されます!」


 そこへ、木々をなぎ倒し装甲車が突撃してくる。

 穴の中を通り川へと下がってきた大型の生体兵器の体の上に、分厚い装甲の装甲車をまるまる崖から落とす。

 体をくの字に折り曲げ体液を吐きながら生体兵器は暴れだし、その影響で穴が崩れて埋まり大型の生体兵器が見えなくなった。


 セイランが解放されツルギは急ぎ痺れの残る体で彼女を引っ張って粘液でぬかるんだ穴の中を移動する。


「なんだ、何が起きた」

「とりあえず、安全な場所へ。生き延びないと何もわかりませんわ」


 別々の方向を向いた歪な方向に曲がる彼女の両足。


「痛くないのか、足。そんなに曲がって」

「ええ、言ってませんでしたね。両方とも義足ですわ」


 再び地面から湯気が上がった。

 湯気が上がると同時に地面を伝わってくる痛みに耐えるツルギとセイラン、同時に近くで爆発音が聞こえ穴の土が大量に落ちてくる。


「この穴あまり持ちませんわ。私はもう自力で歩けません。あなただけが頼りですの」

「急いで出たいのはやまやまだけど、体が動かない」


「男でしょう、何とかなさい」

「ここまで無茶した俺に、これ以上無茶なこと言わないでくれ」


 落ちた枯れ葉、ぬかるんだ土、消耗した体力、そのどれもがツルギたちが穴の上に上がることを邪魔する。

 柔らかい地面に手を突っ込みセイランを引き上げて上に上がっていると、穴の淵になっていたハナビが手を伸ばし二人を迎えた。


「二人とも生きてたか、さすが丈夫な色をしているだけはある」

「そんなこと言ってたっけか」


「私が見える色の話をいちいち説明していると、日をまたぐよ。ニヒヒ、手を伸ばせ、私とフウカで引き上げる」

「先にセイランを、俺が下から押し上げるから」


 フウカとハナビに手を引かれ下から肩車をするようにツルギが押し上げられるセイラン。

 セイランを引き上げた後、壁を蹴るツルギをハナビたちが引き上げ4人はその場に座り込む。


「二人とも怪我は?」

「体中痛い、電気にやられた」

「同じく。私も怪我無いですが、両足の義足を破壊され自力では匍匐前進くらいしか。腕も言うほど自由には動かないんですけど」


 生体兵器からの電流を受け自分のエクエリの破損を確かめるツルギ。


「よく義足の部分だけ噛まれたもんだね」

「こういう状態は初めてじゃないので逃げ切れないと悟り、うまく義足だけを噛ませましたわ」


「ニヒヒ、そんな器用なことできるんだ」

「私、目で見なくても近場なら距離を測ることができますから。感覚を掴むことに苦労はしませんでしたわ」


 ひとまず破損がなく無事を確認したエクエリを抱えツルギが立ち上がった。


「とりあえず、もうここから離れよう。戦闘の音を聞いて他の生体兵器がここに来るかもしれない」


 それを聞いてハナビが遠くを見る。


「……んー難しい。装甲車はキリギリ君を助けるために崖の下に落としちゃった。あいつ自分の電気で燃料に引火させて大炎上。ニヒヒ、今もすっごく燃えてる」

「なら、ほかの精鋭に頼んで同乗させてもら……」


「二人が穴に落ちている間に橋を渡り切って移動開始したよ。私たちは置いていかれた。ま、前線基地を作るのが目的だから車両段の護衛が優先なんだろうけど。ひどいよね王都の王族人間を置いていくなんて、精鋭だから大丈夫だろうって思うなっての。ねぇ」

「え、置いていかれて車両もないってこれからどうすんだよ。どうやってここから移動すんだよ」


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