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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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前線基地設営作戦 2

 防壁前に集まってしばらくして一般兵を鼓舞する指揮官の演説が終わり、シェルターの外と内側をつなぐ大きな門が開く。

 ベテランの精鋭たちに続いて向日葵隊などの新部隊が続いて外へと出る。


「私たち以外に二つ新部隊がいるみたい。やっぱ最新兵器は欲しいもんなんだね」

「生体兵器と戦うのに、より強い武器を求めるのは当然ですわ」


「……んー」

「どうしました?」


「今の子、見たことない色してた。すごく、なんか寂しい気持ちになる色」

「ハナビの力については自分しかわからないことなので何とも言えませんわ」


 後部座席でセイランが鞄に詰め込んだ荷物の整理をしていて、彼女の向かい側でエクエリを抱えたツルギはため息をつく。

 前線基地を作るというだけあって戦車や装甲車だけでなく大量の資材や重機を乗せたトラックや架橋車や補給車などの様々な車両が並ぶ。


「なんで、ろくな実績もないのにこんな作戦参加するんだ……このシェルター前線基地がないからこのあたりにも強い生体兵器がいるんだろ……」

「キリギリ君はそういいながらも、ちゃんと戦闘準備してついてきてくれているんだから優しいなぁ。いったでしょ、このエクエリはこの作戦に参加することが前提でこのシェルターに届けられたの」


 シェルターを離れしばらくして大きな湖が見えてくと、一団は速度を落とし湖から少し離れたところに停車する。

 湖の近くにはコンクリートで固められたトーチカのような施設がいくつか点在していて車両はそのそばに止まった。


「目的地に着いたのか?」

「いいや、ここから分かれて行動するの」


「どうして? このままみんなで行動しないんだ、生体兵器も多いんだろ? なおさら……」

「数か所、何か所かは知らないけど一気に前線基地を作らなきゃならないらしい。それでここで精鋭を先行させて建設地の付近に特定危険種がいないかを確認しに、その間私たちは待機」


「この間の数の多い生体兵器みたいなのと戦うんだよな」

「それらはみんなで協力して倒すから」


 話している間にバイクや軽装甲車が何台か湖の向こうがわの森へと走っていく。

 残った精鋭たちもエクエリを構え周囲を警戒している。

 向日葵隊も指示を受けエクエリをもって装甲車から降り周囲を見回す。


「ここはなんだ? 前線基地には見えないけど」

「シェルターに水を引く浄水場と地下水力発電施設の真上ですわ。一応この近くにも前線基地はありましたわ、でも今回の設営任務はもっと奥地になりますの」


「もういいじゃないかここで、シェルターからも離れたし。ここなら行き来も楽だろう?」

「それはシェルターのお偉いさんや王都から来た頭のいい方々が決めることなので、私の知るところではありませんわ」


「ハタカガミさんも高層の人じゃないのか?」

「私の家は前線基地の最高指揮官でしたの。多くの人の命を預かる大役、この刀もその証拠ですのよ」


 セイランは腰にぶら下げた軍刀をさする。


「この間装甲車内で入ってきたときに振り回してくれたらよかったのに」

「この刀、腕のある人が振らないと生体兵器の丈夫な皮膚を切ることなんてできませんわ。私は飾りで持っているだけ、剣の腕なんてありませんわ」


 湖にツルギに向かってセイランが話している間、フウカとハナビは他の精鋭のもとへと向かっていき二人も彼女たちの後を追う。


「さて、ここからがいよいよ前シュトルムの支配圏内。今は空からの脅威もなくなり大きく動けるようになって縄張りを広げようとする生体兵器の戦場、接敵率が上がるよ」

「過去何回ものこの作戦の失敗で多くの犠牲者が出てしまいましたわ。今度こそ成功するといいのですけれども……」


「するさ、精鋭がこれだけ集まっているんだから大丈夫でしょ」

「以前も精鋭に協力を求めいいところまで行ったのですが、災害種にシェルターを襲撃され作戦は失敗になったんですの。今回も何からの事態に陥って失敗したらと思うと」


「それについては防壁側の人間に頑張ってもらわないと。私たちは前だけを見て進むだけ」

「生体兵器を倒せる精鋭のセリフならかっこいいですけど……説得力ありませんわ。おっと、私たちが来たのを察知し湖から生体兵器が上がってきたみたいですわ、生きましょう戦力となりに」



 それから間もなく偵察に行った精鋭たちが帰ってきて一団は動き始めた。

 前線基地を作る班を4つに分けそれぞれ精鋭を先頭に森へと入っていく。

 人の手の入っていない密度が濃く深く木々が生い茂る森。


 過去に何度も前線基地の設営任務があったため、大型の車両が通れる道だけが切り開かれていた。

 次第に生体兵器の襲撃を受け破壊された車両がちらほらと見え始めると、ふざけていたハナビたちの口数も減り車内は木の枝がぶつかる音だけが響く。


『正面に生体兵器。私たち紫陽花隊が対処するから止まらず進んでいって』


 ふいに入る無線にエクエリを持つツルギの手に力が入る。

 刹那、轟音。

 覗き穴から外を見れば装甲車両が、道を外れ木々をなぎ倒しながら停車しているところだった。


「派手ですわね。下手したらエンジンとか壊れてそうですわ」

「精鋭が一隊減ったぞ、大丈夫なのかこの先」


 停車した装甲車はすぐに後ろのほうへと消えていき見えなくなる。

 フウカが後部座席へとやってくるとセイランの横に座った。


「いつ戦闘になってもいいよう、出口の大きい後ろにいろってハナビが」

「そうか、前の警戒は他の精鋭がしてくれてるもんな」


「ツルギさん、手が震えていますけどそれで戦えますか」

「フウカさんはそのエクエリバッテリー切れおこさないように、しっかり管理していてくれよ」


 再び無線が入る。


『全体停止。正面に川、橋が落とされている。架橋車を前に、前もって連絡されていてよかった。橋をかけている間、周囲の警戒をこれだけの車両だ音を聞きつけてくる生体兵器がいるかもしれない』


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