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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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前線基地設営作戦 1

 向日葵隊の借りている屋敷の食堂で椅子に座ったまま眠っていたツルギは物音で目が覚める。


「あ、起きた。夕飯だよ、しっかし着替えもしないか汚ったないなぁ」

「キリギリさんはどれ食べます? とりあえず目に付いたのは片っ端から買ってきたけど」


 買い物から帰ってきたハナビたちが長机の上に荷物を置き、ビニール袋から取り出された弁当が並べていた。


「え、弁当なの?」


 思わずツルギの口から出た言葉にハナビが弁当を並べる手を止めて聞き返す。


「うん、出前がよかった?」

「いや」


「まさかとは思うけど、使用人に囲まれ蝶よ花よと育てられたお嬢様である私たちに料理を作れとでも言う気? 包丁すら握ったことなんてないんだから」

「それは偉そうに行くことじゃないと思うんですが」


 フウカはペットボトルの飲料を並べ終わると厨房のある奥へと消えていく。


「一応私は炒め物くらいならできますわ」


 一人胸を張るセイランを放ってハナビとツルギは話を続けた。


「だったら使用人の一人くらい連れてきてないのか」

「いないよ、文句言うなら食うなよ。私たちは王都から逃げるように出てきたんだもの、そんなもの用意している時間はなかった。まぁ、そのうち親友に頼んでその辺は送ってもらう予定だけど。しばらくはこれで勘弁してよ、それとも作ってくれるの」


「逃げてきたって、なんでそんなことに」

「簡単に言えば私たちは今の王都にとって邪魔だから追い出されたって感じ。王都は今一丸となって生体兵器の討伐に力を注いでいる。そんな中、人命重視と私が精鋭の強化と装備の一新を優先すべきだって言ったんだけど受け入れられなかった。普段こういうのに口出さない私が横から口を挟んだらなんか私に対する風当たりが変わった。上に姉いるし、私以外の姉妹たちが私を排除しようとしたんじゃない?」


「排除……命を狙われたのか?」

「いやいや、さすがに殺したらまずいでしょ。いやがらせ的なやつだよ」


「ニヒヒ、技術開発も少し待てば……いつとは聞いてないから知らないけど、私の親友が生体兵器との戦闘でより優位に戦える兵器を作ってくれるはずだった。結局、完成がいつになるかわからないものに任せられないって、生体兵器への一斉攻勢の流れは私の反対では止められなかったけどさ。誰が決めたか知らないけど、王都の発言力なら3番目なんだけどね」


 ツルギが選ばなかったためハナビはテーブルに置かれた弁当を適当にとって彼に差し出す。


「あーあ、攻勢の準備もそろそろ最終段階だろうね。ここでの前線基地が完成したら、多分始まるよ魔都攻略」

「魔都……このシェルターの前線基地と関係あるのか?」


「戦力をそこに集めるから、他のシェルターからも精鋭の徴兵が出る。一つのシェルターに住んで守り続けている精鋭にも招集がかかる」

「このシェルターからも精鋭がいなくなるのか。……それで二人は王都でのいやがらせから逃げて精鋭になったのか」


「私は逃げてきたんだけど、フウカは私についてきただけ。つっても何か月と準備してたからばれてたんだろうけど、妨害も何にもされなかったってことは私が逃げるもの想定内だったのかもだけどさ」


 そこへコップを持ったフウカが戻っきて食事の準備ができ皆席につく。

 弁当を開け食事を始めてからフウカが話す。


「ついてきただけじゃないもん。ハナビが今言ってたのは建前、私たちはお見合いから逃げてきたんだよ」

「それ話す? 私のことは言わないでよ」


「政略結婚、王都での人間の価値は役職と総資産だから、私には前々から会わなかった。聞いてよ、私のはすでに何人とも所帯持ってるやつだった、バツいくつなんだか」

「なら私たちの父親はどうなの?」


「……いや、お父さんがあれだから人のこと言えないんだけどさ。でも、そのぶん私は私が一番の人じゃないとやだし、そうなると重婚の許される王都の人間は信用できない。だから私は運命の人を探すの、ハナビの力で」

「ほら私の目、色でどんな人かがわかる分、嘘で固めた性格なんかもわかるし、結ばれる先が決まっていて幸せになれないのなら、地獄の中で希望を見つけるって志願して精鋭に」


「ハナビのいうとおり」

「ニヒヒ、生体兵器と戦うのであれば下層の人間も高層の人間も関係ないからね。手のひらを返し始めた王都を出るにはちょうど良かった。精鋭は皆王都で管理されているから、いつでも監視することはできるってすんなり精鋭にね」


 ハナビとフウカの話を聞いて場が静まり返る。


「それじゃ、ご飯食べようか。食後に次の任務について話すからよろしくね!」


 一転、ハナビが明るく振舞うも暗く重い空気は変わることはなかった。



 十日後、向日葵隊は北側の防壁の前にいた。

 彼女たちの周囲には複数の精鋭と大勢の一般兵。

 装甲車に乗り込み戦闘準備を整え出発の時を待っている


「さぁ、前線基地設営の護衛、頑張っていこう!」

「おー」

「本当に……行くんですわね……」

「なんでこうなる……安全な戦いでもっと戦闘に慣れていこうって昨日話したじゃないか……ああ……」


 青ざめた頭を抱えるツルギとセイラン。

 無機質な防壁は禍々しいオーラを放ち、今にも逃げ出しそうな二人だがハナビは自信満々に胸を張った。


「仕方ないでしょ、このシェルターに届けられた中型のエクエリを持つ条件としてこの作戦は前々から絶対参加だったんだから。精鋭に見限られたこのシェルターに精鋭を呼び込むために、わざわざ最新のエクエリを用意した。私たち4っつももらっておいて知らんぷりはできないの。今回は大丈夫だって、このシェルターに集まっている精鋭のほとんどが作戦に参加するんだから。今度は朝顔隊も遅刻していないみたいだし、あなたもそう思うよね?」

「え、あ、はい。よろしくお願いしますっす!」


 向日葵隊の乗る装甲車のもとへ挨拶にやってきた小さな精鋭の子はハナビに話を突然ふられ戸惑う。


「ところであなた誰?」

「どうも、新部隊ガーベラ隊のクゼ・エンブっす。今日はお互い厳しい任務ですが頑張りましょう!」


 深緑色の制服の少年はハナビに向かって改めて自己紹介と敬礼する。


「今日は新部隊で固まって行動、少なくともここにいる新部隊の精鋭は最低でも皆セイランより強いはずよ。エンブ君、向日葵隊はお荷物になるかもですけどよろしくね」

「うっす。こちらこそ、まだ不慣れな実戦ですがお願いします」


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