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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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初戦闘を終えて 4

 

 軽装甲車のもとへと戻るとツルギへ変えのバッテリーを差し出しコリュウが口を開く。


「このまま帰るのもなんだし、もう一匹くらい探してもらおうか?」

『時間の無駄だと思う』


 返事を返したのはバッテリーを取り換えているツルギではなく蒲公英隊のノノ。


「相変わらず言い方がきついな。キリギリ君だって頑張っただろ、もう少し優しく」

『サカキさん、後輩に頼られて先輩風吹かすのはいいけど、それでこっちは巻き込まれてる。成果が出ないならやる意味はない』


「何度かやれば克服できるかもしれないじゃないか。誰もが最初から生体兵器と戦えるわけじゃない」

『悪いけど、私たちはそろそろ行く。一応は仕事で来てるから、成果を上げなくてはいけない』


 ノノとの会話にイグサが割り込む。


「何の仕事?」

『詳しくは言えない、王都からの勅命。黄薔薇隊の仕留め損ねた、とある生体兵器を追ってる。とはいえここより北に行ったとなったらこれ以上捜索はできないけど、その痕跡を探さないといけない』


「あれ、ノノちゃんなんか飛行型の生体兵器追ってなかったっけ」

『あれも継続中、あちこち行ってて忙しい』


「ふーん。ノノちゃんガンバ」

『うん。ここに来る途中にもいくつか痕跡見つけたから、近くにいる。用もないときに外にいると危ない。私が言いたいのはそれだけ。もう行くね、バイバイ、イグサ。また』


 通信を切り蒲公英隊のバイクはエンジンをふかし土煙を上げて去っていく。

 姿が消え遠ざかっていくエンジン音を聞きながらコリュウはツルギのほうへと振り返る。


「それで、キリギリ君の意見を聞いていないけど、どうする?」

「えっ、あ、もう一度お願いします!」

「うんうん。それはいいけど、そろそろお腹すいたからわたしはご飯にするよ?」


 イグサの食事を待ってツルギの訓練は続いた。


 夕暮れ涼しくなってくるころ泥にまみれなって高層区画へと帰ってくるツルギ。

 すれ違う人々は彼の汚れた姿を見て距離を取る。


 ――結局倒すことができなかった……。


 朝顔隊に借りていた中型のエクエリも返却し、向日葵隊の借りている屋敷へと帰ってきた。

 屋敷の前には装甲車と見覚えのない車が止まっている。

 何かと思いつつ門を開け敷地内に入ってくると入れ違いに、屋敷から出てくる普段着に着替えたフウカとセイラン。


 普段着といっても彼女たちは王都と高層区画の住人、重質な生地で作られた衣服と高価な装飾品で着飾っている。


「おや、おかえりなさい。……どこ行ってたんですのキリギリさん?」

「これから買い出しだけど……ツルギは汚いから着替えたほうがいいよ。着替え、その制服の寸法と同じのがあるから多分サイズは合うはず。ツルギに似合うの買っておいた」


 長袖長ズボンで普段着でも白い手袋をはずさないセイランとドレスの胸元と腰の帯に大きなリボンをつけたフウカはそういってツルギの横を遠巻きに通り過ぎると二人は乗用車に乗り込んでいた。

 後から帰ってきたツルギを見てハナビが玄関の奥から出てくるとその背中を音がなるほど強く叩く。


「やぁ、キリギリ君。帰ってこないから鍵をかけていくところだった、んで、戻ってくるなら連絡くらいほしいなぁ」

「ああ、ごめん。端末の電源落としていたのを忘れていた」


「一人で行動するとき今度からはちゃんといつ帰るか連絡してよ。そうそう忘れないうちに鍵のスぺア渡しておくよ」

「ああ」


 チャリッと音を立てハナビから向日葵の花のキーホルダーのついた鍵を渡される。


「へとへとだね、お風呂洗って沸かしておくといい、帰ったら私たちも入れるから。そんで、私たちはこれから足りない日用品を買いに行くからゆっくり休んでて。ニヒヒ、お疲れ。どう、戦えるくらい強くなった?」

「い、いや……」


 問いに目を逸らすツルギにハナビは制服の汚れも気にせず肩に腕を回す。


「まぁ、一日やそこらで強くなれるなら一般兵なんてみんな精鋭だから。せいぜい頑張って私らに楽させてくれよ」

「いや、ハナビさんも一緒に行きましょうよ」


「お誘い? 私と二人っきりだったら考えてあげてもいいよ、フウカ達には内緒で」

「二人で防壁の外なんて出たら、すぐに死にますよ!」


「ニヒヒ、冗談だよ。そんぐらいわかるさ。てか冗談くらいわかってよ」

「疲れてるんです勘弁してください」


「それは君の勝手だろ? 私たちの仕事はお昼過ぎに終わったでしょ、一人で勝手に精鋭に頼み込んで防壁の外に出ていった。中型のエクエリをもって小型の生体兵器三匹と戦うも仕留められず、逃げ回っていたと」

「どうしてそれを」


「朝顔隊の隊長さんからしっかり連絡あったよ。私たちに黙ってこっそり強くなろうとしたのも筒抜け。まぁ、その前に私は色で分かってたけどさ、んじゃ待たせるわけにもいかんし。もう行く、続きはまた帰ってきてから」

「ああ、そうしよう」


 そういってツルギの背中を何度も強めに叩くと、ハナビは止めてある車の運転席へと小走りで走っていった。

 屋敷を出ていく車を見届けることなく屋敷内に入っていくツルギ。

 自分の部屋もわからずまっすぐ進んだ先、ハナビたちと初めて出会った大きな部屋である食堂で休んでいるとそのまま眠りについた。


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