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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
523/798

初戦闘を終えて 3

 生体兵器を探ししばらく防壁付近を歩いていくツルギたち。

 とはいえ、シェルターに襲ってくる生体兵器は3人が見つけるよりも先に防壁側が発見し砲台型のエクエリで吹き飛ばしているため戦闘にならない。


「いないな。うーん、戦闘の記録はこっち側でも日に何度か戦っているはずなんだけどなぁ」

「すみません」


「いいや、悪いな。隊長がいないから遠出できない。生体兵器に負ける気はないけど、特定危険種もこのあたりは多い俺らがもっと強ければ外を走り回って生体兵器を探しに行けたんだけど」

「いや、あの、大丈夫です」


 三人が話しながら歩いていると大型バイクが二台、防壁のほうから走ってくる。

 向かってくる二人の姿を見て朝顔隊の二人は手を振って歩み寄っていく。


「バイク、蒲公英隊か」

「ノノちゃんだ、おーい」


 朝顔隊の二人が手を振りそれに気が付いたバイクが向きを変えて向かってきた、

 バイクを降りヘルメットをかぶった女性がツルギたちのもとへと向かってきて、イグサとハイタッチするとコリュウへと質問する。


「何してるの、こんなところで? 生体兵器に襲われるよ?」

「いや、ここで生体兵器を探してる。どっかにいないか?」


「そりゃ、隙を見て襲い掛かろうとしている生体兵器なら。探したらこの辺にも隠れていそうだけど」

「悪い、見つけてきてくれないだろうか。一匹だけ必要なんだ」


 イグサもノノに頼み込み彼女は首をかしげながらもうなずく。


「わかった、コウヘイと話してくる」

「お願いします」


 離れていくノノにツルギも慌てて頭を下げる。

 そしてバイクは三人を追い越しシェルターの外へと走っていきエンジン音が遠ざかっていく。


「さて、ノノちゃんが帰ってくる前にお弁当でも食べる?」


 イグサが手にした袋を二人に見えるように高く上げ、近くに外れて落ちていた装甲車のタイヤのホイール上に座る。

 そして彼女がお弁当を取り出そうとしたとき携帯端末に連絡が入った。


『いました、今から連れて帰ります。戦闘の用意をして待っていてください、小型で低空飛行、体が重くて機敏性はないけど早いよ』


 コリュウが小型のエクエリを構えエンジン音の聞こえるほうに向く。


「見つけるの早いな、蒲公英隊は。そして案外近くにいたのか、索敵足りないなぁ」

「流石ノノちゃん」


 エクエリを持っていないイグサはコリュウの後ろに回り携帯端末をもって通話を中継する。


「それじゃ、キリギリ君。とりあえず弱らせるからとどめを刺して倒してくれ」

「りょ、了解です」


 ツルギは中型のエクエリを構えた。

 蒲公英隊二人のバイクが通り過ぎていきそのあとを、金属片のように鈍く輝くいぶし銀の昆虫型の生体兵器が地面すれすれを低空で飛び追っていく。


『甲虫だね、細長い。カナブンじゃなくて、タマムシかな、廃屋の腐った木をかじっていた。でもやっぱり、人には襲ってくるみたい』


 バイクを追いかけていた昆虫型の生体兵器はコリュウの攻撃を受けて狙いを変える。

 その外骨格の硬さに物と言わせての体当たり、コリュウはそれをよけ羽に数発撃ちこむとエクエリの弾を受け羽がちぎれドスンと地へと落ちた。

 甲虫の千切れた銀色の前羽が地面に刺さる。


「さぁ、ここからキリギリ君に出番だ。生体兵器を倒して自分に自信をつけろ」

「ガンバ!」

『ガンバ!』


 声援を受け近くに精鋭がいるという安心感からしっかりと生体兵器に狙いをつけるツルギ。

 残った片羽を羽ばたかせなおも好戦的な生体兵器。

 木を貪り食う強力なあごが開き突撃してくる。


 しかし飛んでいるより明らかの速度は遅く、その速度は人が走る程度の速さこれならこれ以上攻撃の必要もないとコリュウとイグサは後ろに下がり、エクエリを構えたまま動けないでいるツルギが前に出された。


「よ、よし!」


 気合を入れ中型のエクエリを構えまっすぐ向かってくる生体兵器に銃口を向け引き金を引く。

 しかし震える銃口から放たれる弾はまっすぐ歩いてくるだけの生体兵器に当たらない。

 戦いに集中しなければならないのにツルギの頭の中には朝の戦闘、死への恐怖、向かってくる生体兵器への威圧感、当たらない焦りが渦巻き、冷静さと集中力を欠いていく。


「あ、あれ、くそ、なんで!」


 攻撃が外れるたびに焦りが募り、エクエリを構える型が崩れ逃げ腰になり最後には後ろに探し始め逃げ出す。

 たまたま当たった一発が硬い外骨格に穴をあけたが生体兵器は止まらない。


 見かねたコリュウが小型のエクエリを向け、生体兵器の足を飛ばし頭を飛ばし生体兵器を倒す。

 落ち込むツルギに誰も声はかけない。


『ダメだね、弱った生体兵器相手にこの状態。センスがない、精鋭やめた方がいいよ?』

「なんか強制的に精鋭になったらしい。ほら、王都の精鋭からの指名さえあれば試験なしで精鋭になれる奴」


『ああ、それで。でも、才能ない人が、精鋭になっても死ぬだけだよ?』

「だから、育ててるんじゃない。自分の意志で強くなりたいって言ったたし」


『え、でも逃げたじゃん。それもまだ距離があるうちに』

「逃げたね」


『ところで聞いた? 魔都攻略、今年の冬、すでに参加する精鋭の発表もされ始めたよね』

「うちの隊は参加、ノノのところは?」


『参加、一緒に行動できるといいね』

「そうだね」


 静かな戦場にイグサとノノの会話が響く。

 銀色の昆虫型生体兵器は頭を失ってしばらくもがいていたが戦闘続行は不能でコリュウ達にそのまま放置された。


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