初戦闘を終えて 2
診察を終え着替え終わったツルギたちは、精密な検査を受けていたハナビたちと合流すると朝顔隊が入ってくる。
すでに着替えを済ませていて普段着姿の3人は、向日葵隊の制服を見てハナビのもとへとあいさつにやってきた。
「よっ、体に異常はなかった? ここに来たっていうからとりあえず見舞いに、入院するほどじゃない見たいて良かった」
「ええ、フウカもキリギリ君も軽傷で数日中には治ると言ってました」
「こんなシェルターで精鋭になると大変だね。経験を積む時間ないでしょ」
「そうですね。初戦闘であの数の生体兵器と戦うのはきつかったです」
「それだけ。それじゃ、私たちは買い物して帰るかな」
「あの、あの後あの山の生体兵器は倒したんですか?」
「うん、先に行ったテルたちが住処潰して襲ってきた残りも倒してきた。あの辺はしばらく大丈夫でしょ」
「話には聞いていたけど本当に強いですね」
「倒したのは私じゃないから。私たちは統率の取れてない普通の生体兵器を倒しただけだよ」
そういって朝顔隊は手を振って病院を後にする。
朝顔隊の後を追うように向日葵隊も病院を出た。
「んじゃ帰るか、今日からセイランさんもキリギリ君も今日からうちの屋敷に泊まって行っていいよ。あの屋敷は向日葵隊の拠点として借りたんだから、ご飯どうしよっか。お昼どこかで食べていく?」
「悪い。俺はいかない」
「どうしたのキリギリ君? ここで別れちゃったら帰りの車ないよ」
「用事ができた。帰りはバスで帰るよ」
そういって帰路につくハナビたちから離れていくツルギ。
「逃げましたわ?」
「いんやぁ、そんな色はしてない。ニヒヒ、さぁて、お昼何食べようか」
訝しむセイランにハナビが答えた。
ハナビたちから分かれたツルギは朝顔隊のもとへと向かう。
「あの、朝顔隊の人ですよね」
そこに先ほどまでいた隊長のツバメはおらず、ツルギの声に振り返ったのは朝顔隊の男性隊員と女性隊員の二人。
「ん、ああ、今日一緒だった向日葵隊の……」
「キリギリ・ツルギです。今日は助けていただきありがとうございました」
「いやいや、こっちが寝坊したのが原因だから。ごめんな、寝坊しちまって。俺はサカキ・コリュウよろしく」
「あ、はい……」
勢いで声をかけたものの我に返りすこし沈黙しているとコリュウが切り出す。
「それで? 何か用があったんじゃないのか?」
「あ、ああ、はい。そのですね……生体兵器と戦う力が欲しくて。その、戦い方を教えていただけないかなと。話に聞く限りだとかなり強い精鋭だと聞いたので」
「いやいや、生体兵器との戦いは慣れだよ。基礎は体力と気合、後は運、それさえあれば戦い抜いていけるさ。向日葵隊は精鋭経験者は?」
「いや、一般兵だった人はいますが精鋭ではないので。できれば精鋭に教えてもらった方が」
「王都の精鋭の数を増やすやつか……精鋭経験者も入れず、新部隊を結成するなんて無理がありすぎる」
「俺もそう思います。俺もともと整備兵で生体兵器と戦うだなんて昨日まで思っていなかったので」
「そっか一般兵ですらないのか、怖かっただろ」
「それはもう、今日は寝れそうにありません」
「それな、一般兵で初めて生体兵器と戦った時は誰だって夢に見るさ。でも戦っていかなきゃいけない」
「わかってます……だから、戦えるようになりたい。自分が死ぬのも誰かが死ぬのもいやなんです」
「戦えるようになりたいと」
「はい」
横でずっと話を聞いていた眠そうな女性隊員が携帯端末を手にしコリュウのそばによる。
「どうするコリュー? ツバメ、テルさん所に行っちゃったし。今はわたしたちしかいないけど」
「北側はともかく南側なら比較的生体兵器は少ないって話だし、やるならそっちじゃないか」
「んじゃ、日も明るいうちに行くか。夕方まで自由行動だし何してても問題ないもんね」
「オッケイ。じゃあ君、私たち車の中で着替えてくるから待ってて。車で迎えに来るからこの辺にいてくれ」
二人の間で話が進んでいきツルギは返事をして待つ。
朝顔な精鋭の制服に着替えコリュウは軽装甲車で迎えにくると、ツルギを助手席に乗せて防壁へと向かう。
後部座席に乗った女性隊員がツルギに話しかける。
「車から落ちたってことだったけど、怪我はないの?」
「軽いかすり傷だけです。結構な速度だったけどこれだけで済むって強化繊維ってすごいですね」
「そういえば、エクエリないみたいだけど」
「あ! すみません、装甲車に置いてきちゃいました。戻ってる時間は……」
「まぁ、荷台にわたしのおにゅーのエクエリあるし。バッテリーは帰ってきたときに補給してあるしこれ使えば、ばっちおっけーでしょ」
「すみません。ご迷惑かけて」
防壁を出ると早速、軽装甲車を降り中型のエクエリをもって立たされるツルギ。
電源が入ってくることを二回しっかり確認しバッテリーの残量を頻繁に確かめる。
「んじゃ生体兵器を探しにいこう」
「お願いします」
「食堂でお弁当買ってきたから景色のいいところでみんなで食べよう」
小型のエクエリを持ったコリュウと何も持たない女性隊員が先を歩きそのあとを続く。
「防壁の目の前で戦うんですか?」
「いや、ここから少し歩く。さすがに生体兵器を倒すなら俺とイグサで問題はないけど、いざとなったときツルギ君を守りながら戦うのはきついから防壁の付近で生体兵器を探す。一般兵の増援任せだけどいいよな」
「なるほど。わかりました」
「少し探していなかったら、歩いて少し遠くまで行くけどそれでも出会えなかったらその時は今日は帰る。日が暮れてからだと生体兵器との戦闘は危険度がずっと増すから」
周囲を見回し生体兵器の警戒をすれど、軽いノリで買い物にでも行くかの用な朝顔隊の二人を見ているとツルギの緊張は少しずつとけていく。