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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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落とし物の奪取 5

 群狼がいなくなると装甲車がツルギたちの前で止まると運転席から勢いよくハナビが飛び出し地面に倒れるフウカのもとへと駆け付ける。


「フウカ!!」

「おねえちゃん!」


 フウカは泣きじゃくりながらハナビへと抱き着く。

 生体兵器を警戒し中型のエクエリを構えて降りてくるセイラン。

 群狼達がまたいつ襲ってくるかわからない中大声で泣くフウカを髪をなで強く抱きしめながらハナビがなだめる。


「キリギリさんは?」


 セイランはあたりを見回しすこし離れたところで向日葵隊の制服を着た人が倒れているのを見つけ恐る恐る近寄った。

 倒れて動かないツルギから少し離れたところで止まる。


「もし……生きて……いますか?」


 うつぶせに倒れるツルギの近くの草には少量血がついていた。

 もともとほかのシェルターから孤立し前線基地もなく生体兵器が昼夜を問わず襲ってくる極限状態のシェルターの前線で長年一般兵として戦ってきたセイランとしては、先ほどまで話していた人物が死んでいるというのは初めてではない経験。


「キリギリさん?」


 強化繊維の制服が破けた様子はなく潰されているようでもない、考えられる死因は頭部の損傷。

 意を決してセイランが構えていたエクエリを下ろしてツルギの体をひっくり返し仰向けにすると彼は鼻から血を流して気を失っていた。


「生きてますかキリギリさん?」


 ほっと胸をなでおろしセイランは気絶しているツルギの胸ぐらをつかんで頬を叩き体を乱暴にゆする。


「うぅ……死にたくない」

「生きてますよ、生きていますわ。だから目を覚ましてください、でないとここに置いていきますわキリギリさん」


 意識を取り戻したツルギを立たせセイランはエクエリを持ち直すとハナビのもとへと帰っていく。

 ツルギは意識が覚醒すると慌てて自分の手足があるのかをしっかり確かめ、流れていた鼻血を袖で拭くと立ち上がり左右の山を警戒しながら速足で装甲車のほうへと歩き出す。

 泣きじゃくるフウカに感化され泣いていたハナビが涙を拭きツルギを見た。


「ツルギも無事で、よかった」

「俺も、死んだかと思った」


 ぐすんと鼻を鳴らしハナビはフウカとともに立ち上がり、お互いが支えあうように装甲車に歩いていく。

 指示がなくセイランが困っていると遅れて中型のエクエリを持ったぼさぼさ髪の女性精鋭がやってきた。


「合流できた? んじゃ落とし物を早く回収して帰ろう。向日葵隊は生体兵器とも戦ったし向日葵隊の仕事は終わりでしょ?」

「あぶないところをありがとうございますわ。おつよいですわね……えっと、朝顔隊の隊長さん」


 セイランが頭を下げた。


「アオゾラツバメ。ツバメでいいよ。それに強いだなんてそんなことはないと思う、ただ単にこいつらが弱いだけだと思うけど?」


 ツバメはあたりに倒れる自分たちが倒した生体兵器を見ていうが、セイランは自分たちのことだと思いきゅっと心臓を掴まれる思いをし険しい表情をする。


「何はともあれ、ぎりぎりのタイミングでした。フウカちゃんも、キリギリさんも。あと少し遅かったら……」

「ほんと私たちも来て見てびっくり。一般兵逃げてるし精鋭は取り囲まれた襲われてるし。ところで先に出発したはずのテルたちはどこ行ったの?」


「皆山へと入って行きました。私たちは一般兵とともにここらで待機を命じられていて……」

「司令塔を探しに行ったか。まぁ、集団で動く以上、群れのボスや部隊長みたいなものはいるんだろうし」


 朝顔隊の男性の隊員がツバメへと近寄ってきた。


「隊長。紫陽花隊の隊長から連絡が、群狼の巣穴を見つけたと。爆薬で巣穴わ埋めるけど周囲に展開している見張りとかは見境なく襲ってくるかも」

「そう、んじゃここでこれ以上話しているのも危ないね。戻ろうか、返事しておいて」


「わかりました」


 男性隊員が軽装甲車へと帰っていきツバメはセイランに振り替える。


「というわけで、シェルターに戻るよ。まぁ、向日葵隊があれじゃこれ以上戦えそうにないし」

「そうですわね。今日はこれ以上は精神的に死んでしまいます」


 そういうと二人は自分の乗ってきた車両へと向かって歩きだす。

 落ち着きを取り戻したハナビが泣きつかれて寝たフウカに膝枕をし、ツルギもセイランにひっぱたかれた頬を押さえながら中型のエクエリを抱いて震えていた。



 セイランが装甲車に戻ってくるとハナビがフウカをおこさないように立ち上がり運転席へと向かう。


「帰るって?」

「はい、お二人の様子も心配ですしシェルターへと帰るそうですわ。一応病院によりますか?」


「そうね、フウカも怖い思いしたし走る車からも落ちたし」

「二人とも死んでいてもおかしくなかった状態でしたわ。朝顔隊が来なければ……そいえばおねえちゃんて呼んでいましたわね」


「普段あんまり呼ばないんだけど」

「どうしてですの?」


「私たち父親は一緒でも母親が違うの」

「あっ……王都の話ですわよね、私聞いていい話ですの?」


「いいんじゃない誰にも話さなければ。……なーんて、大丈夫王都の人間ならほとんど誰でも知ってる。聞いたってどうにかなるわけじゃないさ」

「また今度時間があるときにでも」


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