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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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落とし物の奪取 4

 目標に向かって放たれた矢のごとく駆ける群狼達は、早いものは遅れて走るフウカの後ろまで迫っていた。

 追ってきた群狼の一匹がフウカに追いつきロングスカートに噛みつきバランスを崩して彼女は地面に倒れる。


「通りました! フウカちゃんそのまま頭上げないで倒れてて」


 フウカが倒れたところで射線が通りセイランが彼女に噛みつこうとする群狼の頭を撃ちに抜く。

 大型のエクエリの出力も持ったまま小型化された中型のエクエリ、その一撃は小型の生体兵器の頭蓋骨を貫き命を奪った。


 解放され立ち上がったフウカは装甲車へと向かってまた走り出す。

 ツルギが手を伸ばし荷物と中型のエクエリを捨てずに最後まで抱えて逃げたフウカの手を取って装甲車に引っ張り上げた。


「よよっと、おっもいな。よし乗せた。怪我はないか」

「こわかった」


 ツインテールのリボンがほどけ乱れた髪についた枯葉を払うとフウカがツルギを強く抱きしめる。


「フウカちゃん乗せましたわ! 車を出してください!」

「待ってた、しっかりつかまっててよ! よかった、フウカは無事? 怪我はない!?」


 セイランの報告を受けてハナビは装甲車を急発進させた。

 ツルギたちは座席につかまり勢いよく発射した装甲車の揺れに耐える。


 しかしすでに装甲車は囲まれていて発進間際、開いた後部ドアにさらに追いついてきた生体兵器が二匹車内へと飛び乗ってくる。

 周囲の小型の生体兵器たちも飛び掛かったが、厚い装甲にひっかき傷をつけるだけで破壊することも飛び乗ることもできなかった。


「痛っ!」


 これで一安心と息と着いたのも柄の間、あきらめず飛び乗ってきた群狼に突き飛ばされるセイラン。

 倒れた体の上にまたがられ中型のエクエリを構えることができない。


「乗ってきやがった!」

「くっ、この。ツルギ、何とかしてください!」


 ツルギが倒れたセイランの首元に噛みつこうとしていた群狼の腹に穴をあけ注意を逸らす。


「当てたぞ! 生体兵器に」

「生きてますわ、死ぬまで撃って!」


 彼女は腹に穴の開いた群狼を下から力任せに蹴り飛ばし中型のエクエリを構える。

 セイランとツルギが戦っている間に新たに車内に乗り込んできた群狼がフウカの腕に噛みつき、そのまま車外へと引きずりおろそうとしていた。


「ふへ? ちょ、なに?」


 自分の腕が引かれるのを感じフウカは慌てて振り払おうとした。

 強化繊維のおかげで細腕を食いちぎられることはないが、その力は人の力で振り払えるものではない。

 群狼はフウカの腕に噛みついたまま力任せに走る装甲車から飛び降りる。


「やだっ!」

「フウカッ」


 助けを求めるフウカから伸ばされる腕に反射的に手を伸ばすツルギ。

 彼女の手を取って引とどめようとするが、しかしそれでも群狼の力には勝てずツルギともども装甲車から落ちた。


「フウカちゃん、キリギリさん!」


 ツルギが弱らせた生体兵器を倒しその亡骸を蹴り飛ばして起き上がったセイランが、群狼に引っ張られ装甲車から落ちていく二人を見て叫ぶ。


 落下したツルギとフウカは頭を守りながら地面を転がる。

 転がり終えツルギが顔を上げてみれば全速力で走っている装甲車は遠く小さくなっていた。


「怪我は無いか?」

「うん……」


 装甲車から落ちたツルギたちの近くに3匹、見える範囲に10以上の生体兵器がこの場にいる絶体絶命の状態に、ツルギは周囲を見回し自分の中型のエクエリを装甲車内に置いてきたことに気が付き冷や汗を流す。

 フウカは中型のエクエリを抱えていたが手足が震えたまま身動きせず戦う状態ではなかった。


「それを貸せ、俺が撃つ!」

「え?」


 フウカから中型のエクエリを受け取り群狼へと向け引き金を引く。

 群狼達は一瞬身がまえたがツルギの構える中型のエクエリから光の弾は出なかった。


「故障!? いやバッテリー切れか! 山に無駄打ちするから!」

「ごめんなさい!」


 新しいバッテリーを取り出そうともたついているとそこへ中型の群狼も追いつく。

 脅しに使えないかと中型の生体兵器の群狼を見てエクエリを向けるも、出ることのない弾を躱そうと体をひねりその後ろ脚で中型のエクエリを蹴り飛ばされるとツルギの手を離れ地面に落ちた。


 反撃をあきらめた二人、身を寄せ合い互い抱きあって生体兵器を見上げ震える。

 抵抗がないとわかると少し距離を取っていた群狼達は一気に飛び掛かった。


「無理だった、死にたくない、なんでこんなことに」

「ぐずっ。おねえちゃん……」


 フウカを押し倒しツルギが覆いかぶさって群狼の攻撃からかばう。

 それも一瞬、中型の生体兵器がツルギの足に噛みつくとそのまま軽々と持ち上げフウカから引きはがして首を横に振って地面にたたきつける。

 頭を守ったが強い衝撃を受け体を動かせなくなった。


「いやだぁ」


 そこへ光の弾が飛んでくる。

 群狼には当たらなかったものの生体兵器たちの注意がツルギとフウカからそれた。

 引き返してくる装甲車から身を乗り出したセイランが中型のエクエリを当てやすい中型の生体兵器に向け引き金を引く。

 光の弾は躱され当たることはなかったが群狼達は装甲車のほうに低く唸る。


「戻ってきた」

「ぐずっ。おねぇちゃん」


 向日葵隊の装甲車の横にもう一台軽装甲車の姿が見えた。

 軽装甲車からも誰かが身を乗り出しエクエリを構えていて発射された光の弾は群狼のそばの地面に当たり青い電流が流れる。


 脅威度を変更し群狼達はやってきた装甲車のほうへと向かう。

 小型中型合わせてその場にいた群狼すべてが一斉にとびかかった。


 軽装甲車は停車し運転手と助手席から強化繊維の制服を着た精鋭が出てくる。

 遅れて後部座席から一人おり、新たに戦場に来た三人組の精鋭は迫りくる群狼を一匹一匹確実に倒していった。

 移動手段を破壊されないように軽装甲車から離れると、囲まれないように少なければ生体兵器のもとへと向かっていき、数をそろえ一気に来るならば下がりながら生体兵器の相手をする。


 前に出た二人が牽制し群狼の動きを制限する、その間に背後の一人が強力な一撃で頭を撃ちぬく。

 一連の動作で小型の生体兵器一匹倒すのに5秒とかからず、束になり痛みを無視して突っ込んでくる生体兵器も正確に眉間を撃ち抜いて倒していった。


 小型のエクエリのききにくい中型の生体兵器には弾種を切り替え炸裂式電撃弾を撃ちこむ。

 体の自由を奪われ動きが止まったところに光の弾が眼球からその奥を貫く。

 半分近く倒したところで群狼達は山へと消えていった。


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