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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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落とし物の奪取 3

 二匹の大きな狼が精鋭たちの入った山の反対側から飛び出てきた。

 大きさは

 一般兵たちを見つけて走るのをやめツルギたちのほうを見る。


「来ましたわ! 数は二匹、小型の生体兵器!」

「よし、初戦果だ! 私のそばに集まれ、並べ! その辺いると誤射するぞ!」


 ツルギたち向日葵隊は隊長であるハナビのもとへと集まり、様子をうかがう二匹の生体兵器に銃口を向けた。

 一般兵たちも突然反対側の山から出てきた生体兵器に気が付き、戦車は砲塔を回し、回収作業をしていた者たちは小型のエクエリを構える。


「撃て!」


 ハナビの掛け声とともにツルギたちは一斉に引き金を引く。

 光の弾が出たのはセイランのエクエリだけ、生体兵器へとまっすぐ飛んでいった光の弾は生体兵器へと一直線に飛んでいったが二匹はこれを躱す。


「あれ、弾が出ない?」

「お三方、電源が入っていませんわ!!」


 そして向日葵隊に狙いをつけ一気に駆けよってきた。


「やばっ!!」


 慌てて電源のスイッチを探すツルギたち、電源を入れるとバッテリーの残量と現在の弾種が映し出される。

 電源が入ったことを確認すると向日葵隊は掛け声もなくお互いバラバラに撃ち始めた。


 だがそれらは一発も当たらず小型の生体兵器たちはジグザグに走り距離を詰めていく。

 次第に大きくなってくる生体兵器の姿に畏怖し後ずさりするツルギ。


「陣形を崩さないで、死にたいの!?」


 ハナビが怒鳴る。

 遅れて一般兵たちの射撃、無数の光の弾が飛んでいき二匹の体に穴をあけていく。

 二匹は山へと引き返していき、その後姿に戦車の主砲が直撃し先頭を走り多く被弾していた一匹が吹き飛ぶ。

 残った一匹は山の木々の間を縫って暗がりに消えていった。

 一般兵たちが射撃をやめた後もフウカは山に向かってエクエリを撃ち続けている。


「ニヒヒヒヒっ、あー怖かった。何とかなったね。ヒヒッ」


 興奮状態のハナビが中型のエクエリの銃口を下げ額の汗をぬぐって笑う。

 セイランも力が抜けエクエリを杖に地面にしゃがみ込むと戦場の真ん中で大声を上げた。


「何を笑って、基礎の基礎ができてなさすぎですわ! 今危うく死ぬところでしたのよ!」


 ようやくフウカが射撃をやめてハナビのもとに歩いていく。

 ツルギは中型のエクエリを構えたままの状態で固まり脚ががくがくと震えていた。


「しうかとおもっは」


 そういってツルギは膝から崩れて地面に座りこむ。


「ニッヒヒ、なんて? 呂律、ヒヒヒ」

「情けないですキリギリさん」

「あなた昨日の練習なにも生かされていませんわ!」


 立ち上がるとセイランは腰に下げた軍刀の鞘で放心状態のツルギの鞄を後ろから小突いた。

 それでも彼女の怒りは収まらない。


「今夜は反省会になりそうですわね。アマノガワ様達もしっかり戦闘のことを理解してもらわないと困りますわ! 今夜はしっかり説明致しますので朝まで付き合ってもらいますわ!」

「名前で呼んでくれていいよ、セイランさん。昨日精鋭との打ち合わせで私たちは後方で様子見ってあったけど、精鋭いなくなっちゃうんだもんびっくりだよ」


「エクエリの電源の付け方もわからない人が精鋭になるという方がびっくりですわ! これ一般兵がいなかったら私たち死んでますの!」

「悪かったって」


 セイランとハナビが一匹逃げていった森から生体兵器の遠吠えが聞こえ山にこだまする。

 一つ大きく響く鳴き声が消えた後、あたりは静まり返った。


「何の音?」

「さっき逃げていった生体兵器の鳴き声じゃないのか?」

「次はもっと初心者向けの生体兵器が出てきてほしいね」


 ハナビたちは逃がした生体兵器がいつ戻ってきてもいいようにエクエリを山に向けてまつ。

 静まり返った静寂を破ったエンジン音、ツルギたちが振り返れば軽戦車が向きを変えている。

 その横で回収作業をしていた一般兵たちが慌てた様子で車両に乗り込んでいく。


「なにぽけっとしていますの! 増援要請ですわ!」


 ハナビたちが何が何だかわからないでいると山に入っていった精鋭の声がする。


『ごめん、今のを聞いて何匹か中型の生体兵器がそっちに行った! 逃げつつ戦って!』


 連絡を聞いて慌てて向日葵隊の全員が装甲車のもとへと走る。

 精鋭たちと戦っていた生体兵器たちが木々の間から次々と出てきて、撤退を始めた一般兵に向かって走りだす。


「早くここを離れましょう、一般兵たちが逃げここに私たちだけが取り残されたら終わりですわ!」

「だから装甲車から離れるべきじゃなかったんだ! 何匹かって数じゃない」


 鍛錬で着いた体力もありエクエリと荷物を持っていても普通に走れるセイランが装甲車に乗り込み、次に日ごろから重い荷物をもっているため中型のエクエリを持っても早く走れたツルギが逃げ込んだ。


「早く、群狼が来ていますわ!」

「もう嫌だ、俺は精鋭をやめる」


 遅れてハナビが運転席につく。


「みんな乗った?」

「フウカちゃんが、まだ」


 最後に背の低く重い中型のエクエリに振り回されているフウカがよろけながら走ってくる。


「早く、フウカさん!」

「後ろ来てるって! もっと急げ!」


 エクエリを構えセイランとツルギがフウカを狙って走ってくる生体兵器を狙おうとする。

 しかし生体兵器はフウカの真後ろから迫っており、狙うにも彼女がどちら側にふらつくかがわからず引き金を引けなかった。


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