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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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落とし物の奪取 2

 シェルター付近の廃墟を抜けてツルギとしては昨日の早朝に通り過ぎざまに見た景色の場所へと戻ってくる。

 真新しい轍の跡をたどって走る一団。

 両サイドは太い木々の生えた山、木々が密集し大きく育っているため昼間であるにもかかわらず暗く少し奥の様子を見ることもできない。

 ツルギは中型のエクエリを抱えいつ戦闘が始まっても自分の身は守れるようにしていた。


「見えてきた。壊れたトラックが道の真ん中にあるね」


 ハナビが声を上げて間もなく一団は速度を下げ徐行して進む。

 横転したトラックを超えたところで精鋭から全体への通信が入る。


『すでに群狼の縄張りに入った。普段は夜行性だけど、私たちが侵入したとわかれば日が昇っていても襲ってくる。私たちは群狼討伐のため山へと入っていくけど、先ほど言った通り向日葵隊は一般兵とともに行動を』

「わかりました」


 最初にトラックを見てしばらく走ると大きく壊れひっくり返った二両の装甲車が見えてきた。

 再び精鋭から全体に連絡が入る。


『目標を発見。一般兵は回収作業を、私たち精鋭は周囲の警戒を蒲公英隊は先を見てきてくれ』


 全体停止の指示がかかり一般兵たちの乗った車両ががひっくり返った装甲車を囲むように停止し、積み荷を回収しようと一般兵たちが降りる。

 周囲には部品が飛び散っていて装甲車には燃えた後があった。


「さぁ、降りるよ。向日葵隊の初戦闘だ! 私に続け!」


 物資の入ったカバンを持ち中型のエクエリにバッテリーを差し込んで、戦闘準備を整え向日葵隊は装甲車を降りる。

 草の匂いに交じって物が焼けた匂いがしていた。


「ついたわ、戦場に。さぁ頑張っていこー。大戦果をあげ今夜は祝杯だー」

「生体兵器はどこさ? これから探すの?」

「おい、あんまり装甲車から離れると逃げられなくなるぞ」

「キリギリさんはまず装甲車から降りてください。それでは戦えませんわ」


 向日葵隊は中型のエクエリを持ち左右の山を警戒する。

 生体兵器が潜んでいるとは思えないほど、山は昨日起きた出来事が嘘であるかのように静まり返っていた。

 いつ襲い掛かってくるかという緊張の中、一般兵たちは周囲に散らばった輸送車の積み荷を集めてトラックに載せ始めた。

 少したって精鋭たちの中から大型のバイク二台がさらに先へと進んでいき離れていく。


「精鋭ってすげえなたった二人でこんなとこ普通に移動できるのか」

「キリギリさんはそんなところで何してますの?」


 装甲車の下に潜り込み襲撃に備えるツルギにセイランがあきれた声で問いかける。


「生体兵器がどこから来るかもわからないのに隠れないでいられるか」

「匂いや熱で追ってくるのでこんなところに隠れていてもすぐにばれますわ。背の高い茂みとか壁の裏とかなら何とかなりますけど、そこは絶対ばれますわ。それに生体兵器がこの車両の上に飛び乗ったとき潰れますわよ」


 ツルギが装甲車の下から這い出てくると、彼の目に精鋭たちは車両を降りエクエリをもって山へと入っていくのが見えた。

 ここから声は聞こえないが彼らは町に行くのと変わりないように談笑している。


「精鋭はみんな山に入っていくのか。はぁ、こっちはずっと心臓がバクバクなってるのに精鋭は余裕そうだな」

「住処を叩いて生体兵器の気を引いてくれるんでしょ、こっちが襲われないように。私たちは今日はこの戦場の空気感を覚えに来たと思えばいいのです。戦闘だって一般兵と協力してですし、あなたがへたっていること以外問題はないですわ」


 精鋭たちが山へと消えていった後も広範囲に散らばった荷物の回収作業は続き、その回収作業が終わるのをハナビがうろうろと周囲を歩き回って待ちそのあとをフウカが付いていく。


「あの二人は仲がいいな」

「私も、あなたといるよりあっちいたほうが安全そうですわね。私も行きます、キリギリさんは一人でそこに居ますか?」


 装甲車の前に一人置いていかれそうになりツルギは慌ててセイランを追いかけた。

 ハナビとフウカは向かってくる二人をみて立ち止まって合流待つ。


「やっと装甲車から離れてきた、大丈夫キリギリ君。落ち着きがないみたいだけど? ニヒヒ、顔真っ青で病人みたい」

「二人はよく落ち着いていられるな。まだ生体兵器がいないとはいえこんなところで……」


 その時、どこからか重たい重低音が聞こえてきた。

 木々が揺れ鳥が飛び立つ。


「なんだ」


 ツルギがエクエリを構え山のほうを向く。

 直後山のどこからか聞こえた生体兵器の咆哮。

 低く重たく地鳴りのような遠吠えは山をこだまする。

 その場にいた全員が動きを止め鳴き声の方向を向く。


「精鋭が生体兵器と戦いを始めた」

「そうみたい。ハナビ、少し戻ろ。一般兵たちから離れすぎてる」


 視界の先で木々が揺れ何本か木が倒れた。

 我に返った一般兵たちが作業を速める。


「セイラン、群狼は小型と中型合わせて百を超える数がいたはず、精鋭数体でなんとかなるものなの?」

「戦い方次第ですわ。私が見た中では精鋭一隊で複数匹の中型を戦うことなんてこともありましたし」


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