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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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落とし物の奪取 1

 防壁の前に集合と精鋭たちと別れ一度ハナビは装甲車のもとへと帰ってくる。

 運転席から装甲車に入りフウカとセイランがまだ帰ってきていないことを確認すると、一人残されたツルギのもとへと向かう。


「どう、キリギリ君。準備はできた?」

「さっき終わったところです」


 中型のエクエリは壁にたてかけられておいてある。

 それを見てハナビは満足そうにうなずきツルギの横に座った。


「バッテリーが届けばいつでも戦えるってわけだよね」

「そうなりますね」


 浮かれない顔のツルギをみてハナビはその肩を叩く。


「そう緊張するなって。兵器って言ってもたかが生物、ダイジョブだって平気平気。そのためのエクエリでしょ」

「そうだけども……」


 そこで一度会話が止まり、少したってからツルギが口を開く。


「アマノガワさんは生体兵器を見たことはありますか?」

「ないよ、生きているのは。ここに来るときもずっとフウカと装甲車の中にいたから。そうそう、キリギリ君と同じ時に来たんだよ。そっちは知らないだろうけど、私は来るときに君のことを見てる。そん時に君に目をつけた」


「そうだったんですか? アマノガワさんがいたことには気が付きませんでした」

「ハナビでいいよ。私のことアマノガワって呼ぶけどフウカもそう呼ぶ気だったの?」


「あ、いや。ところで、は、ハナビさんは香水か何かつけてますか?」

「ん? コロンなら、いい匂いでしょ緊張を和らげ落ち着かせる匂いがするんだってさ。王都出てくる前に私の親友が暮れたの。いい匂いでしょ。ニヒヒ、嗅ぎたい?」


 白い歯を見せてニィッ笑うハナビに近寄られ彼女から漂ういい香りが強くなる。

 互いの髪がふれあい吐息の音すら聞こえるほど近くに迫られツルギが困りながら後ろに下がり距離を取りながら話を続けた。


「えっと……匂いの強いものは生体兵器をひきつけると思うんで、できれば段ボールの中で消臭スプレーを見たので戦いに出る前に使っておいた方がいいと思うんですが」

「つまらないなぁ。今二人っきりなんだよ、も少し何かないの。これから戦いなんだからさ」


 胸を押さえて早まった鼓動を収めようとする。


「これから戦いだからこそです」

「ふぅん」


 ハナビはつまらなそうに席から立ちツルギから離れると中型のエクエリを一つ拾い上げ構えて見せる。

 電源も入っておらずバッテリーが入っていないため弾は出ない。

 その状態で彼女は仮想の敵を思い浮かべ銃口をいろんな方向に向け引き金を引く。


「軽量化したって言ってもおっもいなぁ。あと新型のエクエリはみんな同じだから、どれが私のかわからないね、弾種に散弾が入ってるのはどれよ。これでいいの? このシェルターで配ってる中型のエクエリは他の精鋭も子のエクエリと同じの持ってるだろうし。この戦いが終わったら整備場で塗装してもらおうかな……ああ、整備士ここにいたね。キリギリ君にやってもらおうか」

「俺はここで待ってたらダメなのですか? 俺が戦いに向いているとは思えないんで」


「大丈夫、私も生体兵器と戦うのは初めてだしさっき会ってきた精鋭たちも生体兵器を恐れている様子はなかった。きっと大丈夫さ、きっと」

「全然励ましになってないんですけど。身体能力に問題がありすぎて、整備兵に何を求めてるんですか」


「戦力」

「無理だ!」


「ニヒヒ、私と話すとき敬語になったりならなかったりしてるね。普通に話しかけてくれていいんだよ、仲間なんだし」


 ちょうど後部の扉が開きバッテリーの入った箱を抱えてセイランとフウカが戻ってきた。


「何が無理なんですの? 声が外まで漏れてましたわ」


 バッテリーの入った箱を車内の床に置き二人は装甲車に乗り込む。

 セイランたちが戻ってくるとハナビはエクエリを下ろして運転席のほうへと向かう。


「ちょうど帰ってきた。みんな出発だよ、席について。これからシェルターの外に出るよ。ニヒヒ、これからいよいよ戦闘だ」


 向日葵隊を乗せた装甲車は防壁へと向かう。

 すでに集まっていた精鋭と整列した状態で待機している、4両の軽戦車と2両の装甲車と4台の大型トラック。

 精鋭たちの車両は軽装甲車からハナビたちと同じ装甲車、大型のバイクなどバラバラであった。

 遅れて門の前についたハナビは装甲車の短距離無線につないでほかの精鋭と通話をつなぐ。


「私たちが最後ですか?」


 ハナビが無線に向かって話しかけると、山茶花隊の隊長と紫陽花隊の副隊長が返事を返してきた。


『いや、朝顔隊が来ていない。合流時間に間に合わなかったようだ、出発を少し遅らせてもらうか?』

『後で合流するらしいし、先に行っちゃう? おいていっても問題ないでしょ』


 防壁のあるシェルターと外とをつなぐ大きな門が開くと周囲の空気が変わる。

 精鋭たちの生体兵器の警戒と一般兵たちの緊張。


『それでは、出撃します。先頭は私たち紫陽花隊と山茶花隊、左右の警戒は蒲公英隊が行います。私たち精鋭の討伐対象は特定危険種、群狼。同行する一般兵たちは先日、特定危険種生息区域内を強引に突破したさい。被害にあった輸送車の積荷の回収。また結成して今回初の戦闘になる向日葵隊は一般兵たちと行動を共にし生体兵器と戦ってください』


 先陣を切って精鋭たちが出ていき、そのあとを一般兵たちが続いて門をくぐっていく。


 精鋭になり渡された携帯端末の使い方を確認しているフウカと、鞄に一つ一つ確認しながらバッテリーと消耗品を入れていくセイラン。

 ツルギは後部の扉の覗き穴から小さくなっていく防壁を見続けていた。


「しばらくはついていくだけ。戦闘になるのはもっと後みたい、今のうちに心の準備しておいて私のそばにいれば気も安らぐよ」


 前を走る精鋭たちについて運転をしていたハナビ後ろを気にしながら皆に聞こえるように話す。


「覚悟ならいつも門をくぐったときにしていますわ」


セイランのはきはきとした返事を聞いて我に返り、ふらふらと席に戻るツルギは空の鞄を手に取る。


--胃が痛くなってきた、帰りたい。


「俺も、鞄に物詰めておこう」

「キリギリさん顔色が悪くなりましたわね。精鋭もいますしこの戦闘で命を落とすことは考えにくいですけど、あんまり悪い方向に考えてばかりだとそれが実現になってしまいますわ」


セイランは気を使って話しかけるが今のツルギは愛想笑いが精いっぱいだった。

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