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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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季節外れの花 8

 フウカから投げ渡された箱を開けると、手のひらと同じくらいの金属片がいくつも入っている。

 こうしている間も装甲車は防壁に向かっており戦闘までの時間もないため、ツルギは不服に思いながらも工具を手にし中型のエクエリの外装をはずす。


「これがスロット、初めて見ましたわ。思ったより大きくカセットみたいですわね」


 ツルギの作業にセイランが少し興味を持ち少しだけ身を乗り出した。

 残りの中型のエクエリの包装もフウカは音を立てて破き、作業しているツルギの横の開いている席に置いていく。


「フウカ、荷物ほかに渡せるやつは今のうちに渡しておいて」

「わかった」


 段ボールから携帯端末、隊と同じ名前の花がかたどられたバッチ型の通行証、エクエリのホルダー、補給物資を入れるカバンなどを渡しフウカは自分の席へと戻っていった。

 ツルギは手にしたスロットを見て運転席側に聞こえるよう声を強めて話しかける。


「ところで、この散弾って今まで見たことないけど精鋭専用だったりするのですか?」


 声を聴いて鼻歌交じりに運転をしていたハナビが返事を返す。


「いや、それも新しくできたやつだよ。中型に合わせて量産して小型の代わりに一般兵の間にも普及させようとしてまだ試験途中だけど、開発者側の知り合いに頼んで送ってもらったの。だから精鋭でも持っているのは私か試験に協力してくれてる薔薇か桜の隊くらいじゃないかな。羨ましい? あげないよ」


 手にしたスロットをさすためハナビと話している間も中型のエクエリを分解しているツルギの手際の良さをセイランが眺めている。


「開発中?」

「撃つとエクエリの弾が前方向に複数飛び出すんだけど。これ、射程が短い、誤射の可能性がある、バッテリーの減りがやばいの三点盛。あ、あと狙った場所に飛ばないもあるや四点盛」


「え、そんなの大丈夫なの? 誤射って」

「散弾、前方向にしか飛ばないし位置取りさえしっかりしてれば問題ないはず。みんな中型だから前に出て戦うような人もいないだろうし横並びで撃ってれば問題ないはず」


「怖ええ、当たったら致命傷なのにどこに飛ぶかわからないって」

「そろそろ防壁前の基地つくけど、ちゃんと戦闘までにエクエリの準備済ませておいてねキリギリ君。ちょっと揺れるよ」


 出入り口で見張りの一般兵にハナビは精鋭の通行証の代わりにもなる真新しいバッチを見せ基地内へと入り駐車場で止まる装甲車。


「さぁついた。キリギリ君はここで待っててくれていいよ。フウカ、セイランと一緒にバッテリーもらってきて」

「わかりましたわ」


 そういって装甲車を降りて行くハナビたち、車内に一人残されたツルギは黙々とスロットの取り付けを続ける。



 工事の音がする防壁の前を歩きハナビは倉庫を目指すフウカとセイランと別れて、一人食堂へと入っていく。

 食事時を過ぎていて、一般兵の姿がまばらな食堂内を進み遠くからでも目立つ独特な精鋭の制服のもとへと向かった。

 精鋭たちは雑談をしながら時間を潰していてハナビを見て一斉にそちらを向く。


「おはよう。緊張してない、大丈夫? 私は紫陽花隊副隊長、アメノ・テル。今日はよろしくね。新部隊結成おめでとう、でいいのかな?」

「おはようございます。今日はよろしくお願いします」


 額や頬、鼻の頭、両手などに多くの絆創膏を張った女性、紫赤青の三色を配色した制服を着た紫陽花隊の副隊長が席を立ちハナビを迎える。


「そっちの筋肉集団が山茶花隊で、こっちの迷彩マント羽織ってる二人が蒲公英隊」


 テルの紹介を受け細目の大柄な筋肉の塊のような男性が会釈し、眼鏡をかけた男性も続く。

 軽く握手をし周囲を見回したハナビがテルに質問した。


「アオゾラさんは?」

「ついさっき起きたところみたい。後で合流するって連絡あった」


「おきたみたい、というのは?」

「寝てたの、今の今までぐっすりと。昨日みんなでカラオケ行ったから」


 生体兵器との戦闘の前の日に夜更かしして遊んでいた精鋭の話に思考の停止するハナビ。

 しかし、座っている精鋭たちは驚く様子も気にする様子もない。


「……そうですか」

「まぁ、朝顔隊の合流は後になるとして。向日葵隊も来たし、行くかね。コウガも待ってるし。一般兵のほうもあと10分か20分で集合時刻でしょ、待たせちゃ悪いし先に防壁前に行っとこうか。いつもトラブルおこす朝顔隊もいないし行きは問題なさそう」


 テルがそういうと座っていた精鋭たちが立ち上がり床に置いていた荷物やエクエリを持って食堂を出ていく準備をする。


「紫陽花隊、蒲公英隊、山茶花隊とここにいない朝顔隊にあなたたち向日葵隊を含めての5部隊。話に聞く生体兵器の数なら私たちと随伴する一般兵で討伐は問題はないはず。それじゃあ今日はよろしくね」

「あ、はい。よろしくお願いします」


「今日の任務はあなたたちは一般兵とともに後ろに下がっていてください。私たちは特定危険種である群狼の相手をしますので、あなたたちは後方であぶれたものの対処をお願いします。一般兵たちの用事が終われば彼らについて先にこのシェルターに戻っていてください。特定危険種の討伐はあくまで私たちがいたしますので」

「わかりました。お願いします」


 テーブルの上を片付け食堂を去っていく精鋭たちの後に続いてハナビも外に向かう。


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