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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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季節外れの花 7

 時間は過ぎ向日葵隊初戦闘の日。

 昨日言われたとおりに朝早く唯一の荷物である工具を抱えたツルギとセイランはハナビたちの屋敷の前に集まっていた。

 ツルギがインターホンを押すとセイランが近くに寄ってきて話しかけてくる。


「ちゃんと来たんですわね、ツルギさん。あのあと私が帰ってもまだ続けていたんですか?」

「一応、止まっている的には当たるようにはなった……」


「生体兵器は動くんですわよ? 知っていますか?」

「さすがに知ってるよ……。あっという間に自分のそばまで来たのをこのシェルターに来る時見たから」


「私は生体兵器に狙われても助けに行きませんわ。自分の身は自分で守ってくださいね」

「はぁ、死にたくないなぁ」


 二人が話していると屋敷の門が開く。


「開きましたわ」

「帰りたい……。胃が痛い」


「胃薬持ってますわ、いります?」


 屋敷の前には昨日はなかった茶色と緑の装甲車が止まっていた。


「シャキッとしなさい。いつまでも女々しいですわ」

「これから無駄に死にに行くって言われて、納得するわけないだろ」


 敷地内に入ると玄関が開き中からハナビが出てきて二人を手招き、精鋭の制服に着替えたハナビを見て二人は頭を下げる。

 制服は黒いセーラー服に赤みがかったオレンジ色のリボンをつけ、脛のあたりまであるロングスカートを着ていた。


「おはよ、時間通り来たんだ。ちゃんと寝れた? さぁ入って、制服が来てるから着替えてきて」

「おはようございます、ハナビ様」

「おはようございます」


「私を特別視しなくていいって。王都にいない限り今の私には価値ないんだから。中に入って二人の制服もあるから着替えて頂戴。案内するからついてきて」


 そういわれ二人はハナビに案内され屋敷に入りそれぞれの部屋に用意されていた制服に着替えにいく。


「キリギリ君はここ、これからしばらくこの部屋があなたの部屋になるから。セイランの部屋は隣で」


 案内された部屋の中央に畳まれた真新しい衣服が置いてあった。

 学生服を改造したような制服で膝下まである丈の長い学ランを着たツルギは部屋を出て、同じく着替えて部屋を出てきたセイランと顔を見合わして今一度自分の服装をいま一度見回す。


「サイズはぴったりだけど何か普通の制服と違くない?」

「生地は軽いのですが、私は動きやすいズボンがいいですわ。それにまだ暑いしもう少し生地の薄いものはないんですか?」


 そういってセイランも軍刀のぶら下げた長いスカートをひらひらとさせた。

 屋敷の前で待っているとハナビとフウカがやってくきて二人を追い越しざまに答える。


「他の精鋭より生地を多めにしてもらったの。なんたって私たちは生体兵器と戦ったことないもの、動けない分防御力を上げるしかないじゃない。さぁ車に乗って防壁に向かうよ、待たせている精鋭と合流するんだから」

「私は生体兵器と戦ったことありますわ」


 ハナビとフウカは屋敷の前に止めてあった茶色と緑の装甲車に乗り込む。


「香水の香り?」

「何しているのキリギリさん。置いていかれますわよ」


 8人くらいの乗れるほどの空間のある大型の車両、補給物資らしい段ボールの箱が運転席の後ろに置いてあった。

 ハナビに続いてツルギたちも装甲車に乗り込み彼女の運転のもと屋敷を出て防壁へと向かい走りだした。


 いよいよ生体兵器との戦闘が近づいてきて工具を抱え車内でうなだれているツルギ。

 向かい側に座るセイランもしきりに軍刀の柄を撫でていて落ち着きがない。


「そういえば俺エクエリ持ってないんだけど」

「防壁で借りればいいんですわ」


 畑の見える道を走っていると伝えておくことを思い出したハナビが声を上げる。


「ああ、そうそう、エクエリ、エクエリね。キリギリ君と一緒に来た輸送車に積んであった積み荷を渡しておく。まだ持ってる精鋭も少ないよ。フウカ、お願い」

「まかせて」


 そういうとフウカは助手席から飛び出し運転席の後ろに置いてあった荷物の中から細長いものを取り出す。

 包装紙がかけられていたがフウカは雑に破いて散らかしながら中身を取り出す。


「何ですの?」


 セイランの質問に答えたのはフウカではなく運転しているハナビ。


「新型のエクエリ。正確には大型のエクエリを小型化した中型って呼ぶのがいいのかな? 今まで、なんかできてなかった基盤の小型化ができたみたいで、スロットが二つある大型のエクエリの性能のまま小さく軽量化して取り回しもよくなった、らしい。わたし、そういうの興味ないし詳しいことはよくわからないんだけどさ」

「新型? それを、昨日今日精鋭になった私たちなんかが使っていいんですの?」


「いいのいいの、もうすでに私たち用に向日葵隊の模様も彫ってあるし。何より昨日のうちに他の精鋭にもわたっているはず。大型のエクエリよりだいぶ軽いんだってさ、それでも重いよねそれ」


 包装紙を床に散らかしたフウカから渡された中型のエクエリをセイランはまじまじと見る。

 小型のエクエリ大きく長い銃身、その分重量も増え支えるために体にかかる負担と使いづらさセイランは立ち上がり中型のエクエリを構えてみせた。


「でも装甲車の上につけられている大型のエクエリよりずっと軽いですわ。ところでこれバッテリーはないんですの?」

「バッテリーは防壁前でもらう。キリギリさん」


 二つ目の中型のエクエリを渡され今まで黙っていたフウカに話しかけられツルギが驚く。


「え、俺?」

「中型にはスロットが二つあります。一つは高出力の通常弾、もう一個のほうのスロットに今のうちに弾種詰め込んでおいてキリギリさん」


「ああ、そういうことかなるほど。スロットはあるのか」

「そのためにあなたがいるの」


 そういうとフウカから小さな箱と投げ渡される。

 頭の高さに飛んできたそれを反射的に抱えていた工具と中型のエクエリを落としてでも受け止めた。


「あっぶね、小さくても鉄の塊なんだぞ。戦う前から怪我するところだった!」

「しっかり受け取れたじゃん。ハナビには散弾、私は炸裂式電撃弾、あとの貫通榴弾と振動榴弾と炸裂式榴弾は好きにしていいよ」


 シェルター内で働いていた整備兵であるツルギには仕事で時折扱っていた弾種は見たことはあるがそれぞれどういったものかわからない。

 ツルギが何か言う前に話を聞いていたセイランが口を挟む。


「なら私は中型の生体兵器にでもダメージ与えられる貫通榴弾がいいですわ」


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