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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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季節外れの花 5

 高層区画からバスを乗り継ぎ防壁前までやってくる。

 もともとあった大きな防壁をさらに分厚くしている工事が行われていて工事の音が鳴り響いていた。


「やっとつきましたわ。さぁ、こちらですわ。時間的に二時間は大丈夫」

「農業系シェルターは人口は少ないけどシェルターが大きいから移動も一苦労だ」


 セイランに連れられ基地内を歩く。

 二人を止めるものはいなかったが軍刀を持ったセイランと整備兵であるツルギの組み合わせに不思議そうな視線を向けられる。


「私は他のシェルターを知りませんが移動を不便だと思ったことはありませんわ」

「別に悪く言ったわけじゃない。広い生産系シェルターがなかったらほかのシェルターに食糧を供給できないし、これくらいの広さは必要だ」


「それに生産系シェルターだから孤立しても生きていくことができたわけですし。災害種が入り込んだ時も防壁から町まで間に畑があったからその分逃げる時間もできたのです」

「そっか、そういえばここ災害種に襲われたシェルターだったな。ここに来る前の説明で聞いた」


「ええ、まだ一年と立っていません。あの戦いは一時期精鋭を軽んじた報道がなされていましたが一般兵と精鋭が協力し災害種を倒したのです。私はその時、前線基地設営作戦に参加していてシェルターにはいませんでしたけども、特定危険種でもやっとなのに災害種を一般兵だけで倒せるものではないということを知っていますわ。あ、演習場はあの建物ですわ」


 セイランが指さす基地の端にある小さな建物へと二人は向かう。

 建物に入ると壁に自販機が並びテーブルとイスが置かれた休憩室のような部屋がある、奥には扉がありその戸を開けると地下へと続く階段があった。

 部屋の様子を見てツルギが尋ねる。


「変な部屋だけど、こんなところでエクエリが撃てるのか?」


 階段の奥が暗いことを見てセイランがつぶやく。


「演習場は地下ですわ。今使っている人はいないみたいですわね。とはいえここを使うのは新兵か怪しい取引をする者くらいでしかないのですけど」

「詳しいな、もしかしてセイランさん、不良兵士なのか」


「心外ですわね、私は取り締まる側でしたわ。基地に持ち込み禁止の酒や賭け事遊戯、如何わしい本など毎月何十と取り締まっていましたわ。それも戦闘兵になる前の話ですけど」

「おっかないおっかない。俺も昔、仲間に頼まれて廃材から作った賽子持ってるときに取り調べ受けてでつかまりかけた」


「あなた、不良兵士でですのね注視しますわ」

「あれにこりてもうやってないって」


 階段を降り地下施設の電気をつける。

 明かりがつくと広い地下空間が照らし出され、同時に監視カメラが動き出した。


「こんなところにカメラ?」

「盗難防止ですわね。知ってるでしょうけど防衛任務や資材回収などの任務以外ではエクエリの持ち出しは厳禁、きちんと管理されますの。ここのは誰でも扱えるようにいつでも置いてあるから、でもバッテリー一つでも持ち出すと警報が鳴りますわ」


 降りてきた階段の近くの壁にはいくつものエクエリが立てかけられている。

 入り口近くに置いてあるエクエリと充電器に刺さったままのバッテリーの前に立ち止まり周囲を見まわす。

 休憩室同様に机とテーブルが並んでいて、部屋の広い空間の奥には天井から吊るされた大きな鉄板の的が並ぶ。


「天井低いな手を上げれば届きそうだぞ?」

「エクエリを上に撃つところではありませんもの。施設は横に広ければそれでいいのでしょう、さぁエクエリをもって」


 並ぶエクエリを見てツルギはセイランのほうを見た。


「小型でも見た目に違いがあるのがあるな。この違いはなんなんだ? 旧式とかか?」

「エクエリは内部の基盤を替えるだけですので外装すべてを変えるモデルチェンジはありませんわ」


「じゃあ、ここにある小型のエクエリの違いはなんだ?」

「形が違うのは同じ小型のエクエリでも威力によってデザインが変わっているからですわ。威力が大きければバッテリーの消費が激しいですから、バッテリーの補充に事欠かない威力重視の防衛用と限りあるバッテリーで継戦能力を求められる資材回収班用と二種類ありますわ。重さも性能も同じですけど火力用と経戦能力用、一目で見分けがつくようにと」


 ツルギは並ぶ小型のエクエリを一つ持ち上げ充電されているバッテリーをとりつける。


「そういうことか」

「一応ですけど、精鋭は特注でわざわざ強力な出力を変更させているから、ここにあるものほど使いやすいものではないですわ。精鋭によって戦い方が違うのもそのためとか、整備兵でしょそのくらいわからないの」


 エクエリを的に構えてみるも弾が出ないでいるとセイランがツルギの持っているエクエリを取り上げの電源を入れて突っ返す。


「前から違いがあるのは知っていたけど、整備兵の俺の仕事は傷のついた外装を取り換え既定通りの威力が出ているか調べるようメンテナンスするだけだから。威力どうのこうのはよくわからない」

「ふぅん。まぁ、私の付き合える時間もあるしそろそろ無駄話もやめて始めましょうか」


 そういうとセイランも小型のエクエリを持ちバッテリーを手に取ると的を狙う。


「よろしく頼む。俺が最低限自分の身を守れるように頑張るから」

「ふぅ……。撃ち方や狙い方というより、まずはそのへっぴり腰を直すところからですわね。自分の命を預ける武器を怖がってどうする」


 遠い目をするセイランに頭を下げて教えてもらうツルギ、二人が演習場にいるころハナビとフウカは町に出ていた。

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