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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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季節外れの花 4

 ハナビは顔を上げ自分を見る二人を見てめんどくさそうな表情をする。


「王都、それも王族の人間なんですか!?」

「なんでこんなところに!?」


 すべてのシェルターに指示を出し統括する王都。


 過去に死の演奏家、クラックホーネットに襲撃され崩壊した島国はその国民を海上や地下へと避難させた。

 そのうち地下に逃げたものは十数年後、地下から這い出し防壁を立てシェルターを作り上げる。

 しかし生体兵器の脅威は変わらない、人類が地下に逃げている間にクラックホーネット以外にも生体兵器は島国だった地に上陸し空も地上も安息の地ではなくなっていた。

 シェルターを守るため生体兵器と戦うためにも武器の生産は必要でそのためには大きな工場が必要になり、それは限られた土地を圧迫し水と畑の土を汚していく。

 工業問題に頭を抱えているとそこに試作型のエクエリと精鋭を引き連れ王都から精鋭が派遣されてくる。


 王都アマノガワ、その指示に従えば生体兵器に対抗する武器と工業の問題を解決すると。

 食料、生体兵器への対抗、狭い土地の問題そのすべての解決、精鋭たちの話を聞いたシェルターの統治者たちはその話にすがった。

 そこで食料も機械も各自のシェルターで作っていたものを王都は生産系、開発系、工業系の三種類に分割し、以降数十年にわたってすべてのシェルターへ指示を出し続けている王都。


 その王都の統治者である王族関係者であるハナビ。

 生体兵器なんて縁遠い堅牢な城塞にこもっていてもおかしくない人物が目の前にいる。


「王都の人間がどうしてここに、精鋭だなんて」

「今の話は本当ですの!」


 目の前にいる雲の上に住むような人物を見てツルギは口をパクパクさせていてセイランは目を輝かせていた。

 疑問と不信感を持っていた二人は驚いたまま質問し、二人の色を見てハナビはため息をつく。


「うるさいなぁ、私の勝手でしょ。ほら今日は解散、帰った帰った。私もこの後引っ越しがあるんだから。この屋敷を拠点にするからこれから街に出て買いそろえる。そうだキリギリ君荷物持ちについてきなよ」


「ご、ご命令とあれば!」

「私も私もお供いたしますわ!」


 その言葉を聞いてハナビは興味を失ったように視線を携帯端末に戻して二人に向かって追い払うように手を振った。


「これだから……私たちが王都の人間だからって諂ったら、怒るからね。はぁ……二人とも今日は帰っていいや。また明日、そんころには制服もエクエリも届くだろうからシェルターの外で仲良くなろうか」

「ほらハナビが出ていけって言ってるじゃん。ほら玄関はあっち!」


 ハナビの代わりにフウカが歩いてきて二人を押しやり、ツルギとセイランを部屋から追い出し戸を閉める。


 追い出されたツルギとセイランは屋敷を出て門をくぐったころで背後を振り替える。

 大きな建物に人の気配はなく来た時同様自動で門が閉まった。


「王都アマノガワの方……ああ、この目で見ることができるとは……」

「とわ言えなんか疑わしいものをあるけどな。王都から来た割りには周囲に護衛がいないとか、高そうな服だったけど並みのシェルターでも買えそうな感じの服だった。俺も見たことはないけど王都って世界に二着も無いような服を作る専門のデザイナーが付いてるんだろ?」


 ツルギは荷物を抱えて歩き出しセイランも歩き出す。


「ふむ、そういわれればそうですわね。話に聞いた程度で実物を見たのは初めて……舞い上がってましたが本当のところどうなのでしょう。仮に王都から来たというのは本当であったとして、本当にアマノガワ家の人間なのかもわかりませんものね」

「何で王都出身は確定なんだ?」


「こんな最前線のシェルターに並みのシェルターの高層の人間が来るわけがないですもの。知りませんの、もうこの区画の4割の人間は家と土地を売って移住費に変えこのシェルターを出ていってますのよ?」

「おいおい、まじかよ。頭のいい人間が出ていくと残されたものがつらいだろ」


「ええ、実際このシェルターは今現在とても不安定で相次ぐ前線基地の設営失敗、一般兵の死者は増えるばかりでその死者を狙って一度は減った生体兵器たちの出現率も上がる一方ですの。それに過去にあった一般兵の公募に精鋭を下に見る発言があったため作戦に参加してくれる精鋭が集まらなかったのですわ。私たちは自分たちで自分の首を絞め続けていた」

「そんなところに俺は来ちまったのか……いや、金払いがいいから絶対何かがあると思っていたけど。はぁ、戦って罰受けて精鋭にされて……不運が続くなぁ」


「まぁ、下層中層の人間がお金を欲するのは仕方ないことですわね。とはいえ決まったのは事実、明日から精鋭として戦っていくしかないですわよ」

「なぁ、セイランさん……でよかったよね。えっと、その……」


 言いかけてツルギは言いよどむ。


「なんですの? キリギリさん男なんだったらしっかりしなさいな」

「俺にエクエリでの戦い方を教えてくれないか。明日の戦闘で死にたくない」


「ああ、お安いことですわ。射撃演習場までここから遠いですけど。それで小型と大型どちらのエクエリを使いますの?」

「大きさで違いがあるのか?」


「ええ、役割が変わってきますわね。小型は一般兵の標準装備、威力は小さいけどしっかりと生体兵器にダメージは入りますわ。大型は装甲車に取り付けられている奴ですわ、強力な一撃と弾種を変更することで様々な状況に対処することができますの」

「話を聞くと大型のほうがいいような?」


「ええ、中型や大型の生体兵器と戦うにはそちらを使うほうが楽に戦闘を進められるわ。でもその長さと重さから披露することと狭いところでの戦闘で重心が引っかかるのと機敏な相手との戦闘は苦手ですの。それと援護するだけの広い視野ととっさの判断能力、後方担当になることから戦場を見て指示を出す指揮能力も必要能力になってきあすわ。あと重さから長時間の戦闘は疲弊が激しいこともありますわね。だからよほど体力に自信があるか、持ち運ぶ手段がない限りは素人にはしんどいことですわね」

「なるほど……。なら小型にしておくか」


「それが無難ですわね。ですけど小型も問題はありますわ。威力は小型を倒せる程度しかなく一般兵みたいな何十人と集まって数の暴力で肉を削るということができないから、できるだけ近づいて頭や心臓、神経の集まっている場所を狙っていかないといけない」

「……いやいや、俺は前に出たくはないぞ。どうすればいいんだ……」


「とりあえず一般兵の標準武器、小型の使い方を教えますわ。行きましょう」

「……ああ、なんでこんなことに」


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