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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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季節外れの花 3

「精鋭!? どうして俺が、俺は整備兵だ。精鋭って何かの間違いだろう!? 防壁の外になんか出たら俺なんてひとたまりもないぞ、生体兵器と真っ向から戦えっこない!」


 聞き間違いかと思って聞きなおすツルギ。

 しかし返事はなくハナビと呼ばれた女性は携帯端末を操作し続け、フウカと呼ばれた少女がツルギを冷たい目で睨むだけで答えはしない。


「うるさいなぁ。ハナビ、本当にこいつでいいの? 整備兵」

「もう決定して上にも今、書類送ったよフウカ。彼は今日中には承認されるとおもう。さて、そうと決まればあと一人か。連絡ではキリギリ君と同じくらいにつくはずだから、もうすぐ次が来るはず。シュゴウシェルターのごたごたのせいでいろいろ制限がかかって辛いところだけど、問題は今日中に無事にクリアできそう」


「男の整備兵なんかいらないのに……」

「なんせ新型のエクエリを使う分、調整が入用になるんだからそこはあきらめてって言ったでしょフウカ。不要でも必要なの、それに綺麗な色をしているんだから、不易ではないはず。男でも我慢して、というか制服は男物しかないし」


「……わかった、ハナビに従うよ……。でもこいつ勝手に逃げても私たちはこいつを守らないよ。こいつのために危険な行動はとらないって、ハナビも約束して」

「はいはい、わかってる。さすがに私たちに自衛以外の戦闘ができるわけもないし、キリギリ君が勝手に逃げたら見捨てるよ」


 本人を目の前にして勝手に見捨てられる話を聞いてツルギは唖然としていると、扉がノックされ一般兵の女性が部屋に入ってくる。


「失礼します! ハタタガミ・セイラン、ただいま到着いたしましたわ」

「噂をすれば来たね。キリギリ君、今度は彼女を面接するから席を譲って」


 白い手袋をはめた女性の一般兵で腰には指揮官が持つ軍刀が下げられていて、ハナビの案内に従いツルギのもとへと歩いていく。


「席を譲ってくださいな」

「あ、ああ」


 不服ではあったがツルギは席をセイランに譲った。

 背筋を伸ばし座るセイランを金髪の女性は携帯端末を操作する手を止めてまじまじと見た。


「ふぅん、あなたもいい色」


 ハナビはツルギの時と同じようなことを言い、セイランの頭に疑問符が浮かぶ。


「……なにがでしょうか?」

「ん」


 ツルギも思っていた疑問をセイランは口にし、ハナビは少し黙って携帯端末をテーブルに置く。

 テーブルに肘を置き頬杖をついてハナビは面倒くさそうに話し始めた。


「ほとんどの人は持っていないのだけれども、まれに特別な能力や技能、才能を持った人がいるのは知っている? 高層の住人や精鋭とかに多いのだけど、私のそれなの」

「ええ、精鋭の人で何人か見たことがありますわ。それに私も一応は能力持ちですから」


 二人の話に耳を傾けるツルギ。


「あらほんと? 集めた情報には何も書かれていなかったのだけれど、どこかに書いてあったりする?」

「いいえ。父に硬く口止めされているので、誰かに話したことはありません。ですが、必要であればお話しますわ」


「じゃあ話して頂戴。同じ変わった力を持った者同士仲良くできるかも。それで、ハタタガミさんあなたの力は何? あなたが教えてくれたら私も教えるから」


 ハナビに尋ねられてセイランは一度ツルギを見たが一呼吸おいてから話始める。


「私は感覚というか、自分と物との距離感がはかれるとかみたいなものですわ。ええと、目をつぶっていても物の位置がわかるとか、部屋の中に何人いるだとかがほんのりわかる程度ですけども。とはいっても……微弱な力で物と人を間違えることも……そこまですごい力ではないので得意げに話すと恥をかくといわれていまして、聞かれない限りはしゃべらないことにしていますわ」


 言い終えセイランはハナビの反応をうかがう。


「確かに目をつぶって戦いでもしない限りはあまり使いようがないね」

「かくれんぼとかスイカ割りとか、ゲーム性無視で圧倒できましたわ」


「ありがとう、それじゃ約束通り私も。私の力は人の本質、心の裏側を見ることができるというものらしくて、それでそこに居るあなたたち整備士のキリギリ君とハタタガミさんを見た。綺麗な色をしているってのわね、その感想」

「……そうですか」


「ピンと来てないでしょ、オーラだのそういうスピリチュアルなものに近いといえばわかるかなぁ。自分でもよくわかっていないものを説明するってむつかしい」

「ええ、最適な表現がなくて困りますね」


 そこまで言うとハナビはツルギとセイランを少しの間見て、机に置いた携帯端末を取りまた操作を始める。

 操作を続けながらハナビが話す。


「見える色で嘘かどうかも体調も何を考えているかもわかる。どう、気持ち悪いと感じた? 」

「いえ、それは戦闘の役に立つのかと疑問に思っただけですわ。それが生体兵器相手にその力はどうなるのかと」


「にっひひ、そうだね。確かに私の力は戦闘には全くいかされない、対人間用の力だから。でもそういうわけで、そういう理由であなたたち戦闘員二人を採用したの。あなたたちなら私の役に立つと思って」

「すみません、話を脱線させてしまいましたわ」


「別にいい、どうせこの力のことは話すし。ハタタガミさんも明日から精鋭ね。キリギリ君も二人とも明日自分の荷物をもってこの屋敷に来なさい。明日から早速、隊としての活動を始めるわ」

「ところで、私はまだここにいる誰のお名前を聞いておりません。一度自己紹介をしていただけないでしょうか。私はハタタガミ・セイラン、今は負傷し一般兵をやめてしまったけども父が元前線基地の指揮官でしたわ。戦いも父から習い、志願し何度も前線基地設営作戦に参加しているますわ」


 そういって下げられた軍刀をテーブルの上に置いた。

 金髪の二人がセイランの後ろに目を向け、セイランも振り返り皆の視線はツルギのほうに向く。


「俺か? 俺はキリギリ・ツルギ。今日ここに到着したばかりの整備兵で、生体兵器と戦ったのは今日の夜明け前が初めてで戦果は挙げられてない。そんな俺がなんでこんなことになったかわからない」


 ツルギの自己紹介が終わるとセイランはテーブルの向こうにいる金髪の二人のほうをみた。

 携帯端末をしまいハナビはセイランとツルギをみる。


「それじゃぁ、私たちね。私はアマノガワ・ハナビ。名前を聞いて察してくれたらうれしいのだけど、王都アマノガワの統治者の娘よ。まぁいろいろあってこのシェルターに来て精鋭をすることになったの、名前のおかげでシェルターのお偉いさんたちも協力的であなたたちを見つけるのに一役買ってくれた。んでこっちは妹のフウカ」


 紹介され横にいたフウカが一歩前に出る。


「……アマノガワ・フウカ。ハナビと一緒で王都生まれ。王都にいたくなかったからハナビについてきた。別に精鋭になりたかったわけじゃないけどハナビがなるから私もってだけ」


 王都、アマノガワ、その二つの単語にツルギもセイランも目を見開く。


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