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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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季節外れの花 2

 小さくなっていくバスに向かって叫ぶ。


「待ってくれよ!」


 バスに置いていかれ途方に暮れるツルギ。


 少し寝たこともあり怠さはとれ次のバスを待つより歩いたほうが早いと判断し、ツルギは荷物をもって誰もいない道路をとぼとぼと歩きだす。

 遠くから低いエンジン音が聞こえ次第に大きくなっていくと、ツルギの近くに来た時に後ろから声がかけられた。


「ねぇ、そこの赤毛の君」

「え? 俺ですか?」


 突然話しかけられツルギが驚いて振り返れば、大型のバイクに乗った男女が少し離れたところに止まっていた。

 短い髪をツンツンに固めた青縁メガネの男性とヘルメットかぶり毛先を黒く染めた長い金髪をゆったりと結った女性。

 二人とも暑い中迷彩柄のマントを羽織っていて金髪の女性は額の汗をハンカチでぬぐっている。


「ねぇ、君。ついさっきこの辺に私たちと同じくらいの歳の二人見なかった? 精鋭なんだけど、たぶん私服だったから制服じゃないからわからないか。さっき整備場から出てきたから、見てないか?」

「あ、えっと。多分バスに乗って。このままいった先のどっかで降りたと思います。何かあったんですか?」


 ツルギが聞き返すとヘルメットをかぶった女性が答える。


「携帯端末を、整備場に置いていっちゃったから、これから届けようと。多分、向こうも、今頃気が付いて困ってるだろうし」

「このまま真っすぐ行ったんだな。ありがとう助かるよ」


 そう伝えると眼鏡の男性は大きくうなずき横に止まっていたヘルメットの女性のほうを見た。


「このまま行った先は防壁……食堂か、ノノ行こう。どこかに行かれる前に」

「うん。教えてくれて、ありがとう。急いで、追いつかなきゃね。困ってる、だろうし」


 そしてバイクはツルギを追い越し走り去っていった。


「今日はよく話しかけられる日だな……」


 遠ざかっていく大きなバイクを見てぽつりとつぶやく。

 それから十数分間歩いて兵舎の前にたどり着いた。


 集合住宅のように同じような建物がいくつも立てられていて、よそのシェルターからやってくる一般兵のために迷子にならないようにわざわざ受付が設営されていた。


「お前はc棟の3階だ」

「ありがとうございます」


 受付で所属と出身シェルターと自分の名前を告げると部屋番号の描かれた紙を渡される。

 荷物を抱えて受付を出て紙に書かれた建物を探しに向かう。


「おい、そこの整備兵」

「え、俺ですか?」


 紙をもらい受付から出てすぐに軽装甲車から降りてくる一般兵がツルギの網に向かってきていた。

 ツルギには顔を上げ声をかけてきた一般兵のほうを見る。


「整備兵だな。よし、身分が確認できるものを」

「な、なんですか?」


 ワッペンを見て話しかけてきた一般兵に戸惑いながらもツルギは自分の手帳を渡す。

 受け取った一般兵はページをめくりタブレットで身元を確認すると手帳をツルギに返した。


「暗い部分は無し、まじめに働いているようだな。よし、ちょうど整備兵を探していたんだ。ついて来い」

「え、ちょ俺まだここについたばかりで休みたいんですけど!」


 戸惑うツルギの肩に逃がさないように手を回し一般兵は軽装甲車のもとへといざなう。


「そうか今朝来たばかりの輸送団のメンバーか! なおさらちょうどいい。まだ配属先が決まっていないな。よし、お前の配属先には口をきいておく。さぁ、来るんだ」

「俺、眠たくって、徹夜で……」


 途中まで言いかけたところでツルギはあきらめて軽装甲車に乗り込んだ。

 ツルギを乗せた軽装甲車はシェルターの都市部、中央区画へと向かう。





 何が何やらわからないまま高層区画までやってきたツルギ。

 軽装甲車が止まったのは高層区画の大きな屋敷の前。

 そしてツルギは下ろされ屋敷へと向かって歩かされる。


「よしついてぞ。行ってこい、この屋敷に入れば面接が始まる。帰りは自分で勝手に帰れ」

「え、ちょ。せめてなんだかの説明を」


 車両を下ろされ途方に暮れるツルギは荷物を抱え溜息をつくと仕方なく屋敷のほうへと歩いていく。

 呼び鈴を鳴らし門が自動で開くと敷地内へと入る。


「お邪魔します……何もない?」


 何が待っているのか不安に感じながら恐る恐る屋敷の中にはいるツルギ。

 大きな屋敷は電気が付いておらず、外からの明かりだけで廊下は薄暗い。

 何より屋敷には物がほとんどなく廊下は殺風景で人が住んでいる様子もない。

 引っ越していった後のようながらんどうな建物の中を歩き回り奥の部屋の扉を開ける。


 扉の向こうに月明かりのような柔らかい色の金髪をツインテールにした少女が仁王立ちして待っていた。


「部屋に入るときにノックもしない。マナー悪くない? ねぇ?」


 ツインテールの少女はツルギを睨みつけると奥へと歩いていく。

 部屋には長いテーブルが置いてあり机の向こうにツインテールの少女と同じ金髪の女性がツルギと向かい合うように座っていた。

 ツインテールの少女とは少し違い女性は強い太陽のような金髪をしていて、長い髪を肩にかけ胸元へと垂らしている。


「いらっしゃい。面接するからそこの席座って」


 女性に座るように言われツルギは席に着く。


「えっと……俺はここに連れてこられて……」

「ええ、私が頼んで整備兵を呼んでもらったの。私たちには整備兵が必要でね、ふうん。名前なんだっけ君は」


「え、あ、キリギリ・ツルギです。今日ここについたばかりでまったく何が起きているんだかわからないんだけど説明はしてもらえないんですか?」

「いい色している。君でいいや、今まで見た中で別格に綺麗だ。合格」


「何が何だか……俺の声届いています? そもそも何の面接なんですか、色って俺の髪の話ですか?」

「ああ、くすぶる炭のような赤髪も好きだけどそっちの色じゃない。んじゃ、キリギリで決定の報告送るから。うん」


 勝手に話を進められ金髪女性は携帯端末を取り出し操作し始める。

 ツルギは席を立ち金髪の女性たちに声を張って説明を求めた。


「ちょっと、しっかり説明あってもいいじゃないですか! 俺はなんでここに来たのかだけでもいいから教えてくださいよ!」


 しかし彼女は視線すらツルギのほうへとむけず携帯端末の操作に夢中。

 少ししてから彼女から返事があった。


「んじゃ明日から精鋭、向日葵隊のお抱えの整備士として私たちと防壁の外に出てもらうからね。んじゃ手続きあるしとっとと進めてくか、後回しにするのも怠いし」


 話が進んでいく中、ツインテールの少女は女性の横に座って黙ってツルギのことを不服そうな表情で睨んでいた。


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