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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
13章 最北の砦 ‐‐風を運び輝く太陽‐‐
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夜を駆ける 2

 ツルギ同様、一般兵たちはあたりを見回し戦況を確認する。


「囲まれてるぞ、大丈夫なのか俺たちはシェルターにたどり着けるのか!?」

「もっと速度は出ないのか? こういう不整地で荷物が乗っていてももっと速度が出ただろう」

「同行する車両見てなかったのかよ、戦車がいる。おいていくわけにもいかないし速度は戦車に合わせているんだろうが」


 生体兵器は車列の前と後ろ左右に分かれて4か所に現れていて、エクエリの弾はその4点を狙って集中していた。


「草の高さから足の長さを見て、おそらく小型の生体兵器だ。襲ってきたも車両が破壊されることはよほどのことがない限りないだろうけど俺らは引きずり落とされるぞ……」

「小型だろうが大型だろうがトラックに乗っている段階で、俺らは生体兵器を寄せ付けたらいかんだろ! こんな鉄板一枚で!」


 生体兵器から一般兵を守るのは、座っているときに背もたれにしていた膝下までの高さしかない薄い鉄板一枚。

 この程度の厚さの鉄板では小型の生体兵器の攻撃すら耐えるのは難しい。

 少しでも安全なところにいようと隅に座っていたツルギは荷台の真ん中へとずれる。


「暗い……照明弾でも上げてくれねえのか?」

「馬鹿言うな、ほかの生体兵器まで集まってきちまう! すでにここは元シュトルムも支配区域の近くなんだぞ、いまでも残党が飛んでいてもおかしくないんだからな」


 ツルギは揺れる荷台で戦闘兵たちの会話を聞きながら工具を握り、無事に生体兵器から逃げきれることを祈っていた。


 少しでも戦いから目をそらそうとツルギは気を紛らわすために月でも見ようと空を見上げる。


 空を埋め尽くさんとする星の海で、一か所星の光らない場所があった。

 それはどんどん大きくなっていき生き物の形を浮かび上がらせていく。


「生体兵器! 空から!」


 ツルギは震える声で叫んだ。

 その報告を聞きエクエリの弾が空へと向かって放たれ星の海へと飛んでいく。


「上から生体兵器、飛んでくるぞ!」


 発見に遅れ誰かが叫ぶと同時にトラックは片輪が浮くほど大きく揺れた。

 荷物はシートのかけられワイヤーで固定されていたが人は違う、何人かがツルギの目の前でトラックの荷台から消える。


「あ、ああ、人が……」


 一般兵の後ろで座っていたツルギが抱えていた工具を放しとっさにバランスを崩した戦闘兵へと手を伸ばす。

 しかし間に合わず彼らはトラックの荷台の向こうへと行ってしまった。


「くそ、そこの整備兵! これで戦え、使い方わかるな?」


 手を伸ばしたまま暗闇を見つめ放心状態だったツルギの腕が部隊長に掴まれた。

 驚くツルギに差し出されたのは床に落ちていた小型のエクエリ、持ち主はすでにトラックの荷台にはいない。


「えっ、でも。俺整備兵で……」

「死にたいのか、手数が必要だ。整備兵でもなんでも、外してもいい牽制できればそれで!」


 エクエリのバッテリー残量を確かめツルギはエクエリを構えた。

 すでに飛び掛かってきた生体兵器の姿はない。

 見えるのは明るくなっていく空にまばゆい光の弾が飛んでいく幻想的ともいえる光景。


 わずかに黒い影が森の中から出たり入ったりしながら走っているのが見え光の弾の雨に消えた。

 小型のエクエリを構えツルギはおろおろするばかりで、隣にいた一般兵に怒られる。


「何をやっている! 撃て!」

「ど、ど、どれを狙えば……どこにいるかわからなくて」


「見つけたやつだ、すでにそこかしこにいるんだ! 自分で探せ!」

「でも光の弾でほとんど視認できないんです」


「なら光の弾が飛んでいく方向を撃てばいいだろうが!」


 乱暴に言い放たれた無茶苦茶な言葉に竦みつつ、ツルギはエクエリを光の弾の向かう先に向ける。

 光の弾は生体兵器のいる前方と後方に別れ、何人かは上からの攻撃に警戒していた。


「中型の生体兵器だ! 最優先で倒せ!」


 森から出てきた中型の生体兵器、何型の生体兵器かは暗くてよくわからなかったが光の弾も少なくその姿がしっかり見えたツルギは中型の生体兵器に向かってエクエリを撃つ。


「くぅ、当たらない……」


 整備兵であるツルギの撃つ光の弾は狙う中型の生体兵器から大きく外れ見当違いのほうへと飛んでいく。

 小型生体兵器の倍以上の速度で走り、エクエリの弾が向かってくる中まっすぐ減速せず一直線に車列を目指す中型の生体兵器。

 すこし反応が遅れてからエクエリの光の弾が集まっていくが止まらない。


「ぶつかる、衝撃に備えろ!」


 同じトラックの荷台に乗っていた誰かの叫びに、振り落とされないよう一般兵たちは攻撃をやめて何かにつかまった。

 ツルギもエクエリを荷台に落として両手で近くの物にしがみつく。


 だが幸いツルギの乗っていたトラックは中型の生体兵器を通り過ぎた。

 そして中型の生体兵器はすぐ後ろを走っていたトラックに飛びついた。


 小型の生体兵器でさえ大きく揺れたトラックだ、今度は車体は揺れるどころではない。

 飛びつかれたトラックは片輪が浮き、ハンドルを取られ意図しない急カーブを切るとそのまま勢いよく転がる。

 人も荷物も何もかもを巻き込んで回転し速度を落としていき、後続のトラックの進路をふさぎ巻き込む。


 中型の生体兵器は転がるトラックを狙って止まり暗闇に燃える炎に影だけを残し炎上する二台のトラックが後方へと遠ざかっていく。


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