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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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地上、ドームの外へ 6

 マホロは目を覚ます。

 見えるのは天井のほかにユユキの顔と青い髪と胸元。


 当たりを見回すとカラフルな家具が並んでいて、マホロが寝かされているのは以前入ったユユキの部屋のリビングより奥にある寝室。

 ユユキのベットには書類の束と着替えが山と積まれていて人が寝れそうにないため、代わりにソファーで寝かされていた。


 強化繊維の制服を脱ぎ滅多に着ない普段着姿の彼女は、誰かと話しているようでマホロが目を覚ましたことに気が付いていない。

 意識が覚醒し自分の現状を理解するとユユキに膝枕されていた。


「……ゆゆきさん?」


 名前を呼ばれ膝元にいるマホロに視線を落とすユユキ。

 マホロの顔を見て笑顔を向ける。


「ああ、起きたかマホロ。濡れたままにしておけずマホロの服はチヤが着替えさせた。意識を失っていたから、無断で私の注射を打った。だから一見見えない部分の治療もできたと思う、痛むところはないか? 一応は医者に診てもらって大丈夫ということだったから」

「注射? これはどういう、膝……枕? 地下、戦っていた生体兵器はどうなったんですか」


 額の傷を指先でなぞりそのまま髪のほうへとのびマホロの頭をなでた。

 マホロは今の状態を理解できず素直に頭を撫でられている。


「逃げた生体兵器はほとんど倒した、地下に残してきた黄薔薇隊の二人が残った剣山と逃げたほかの生体兵器をすべて駆除したわ。もう戦いが終わって一日半たってるの。今、夜よ」

「終わったのか」


「このシェルター的には結構な痛手だけど、早く安全を確保できた。今、生体兵器の胃の中や繭の中を調べて被害者を調べている最中。それと、あの第七世代は逃げた……機動部隊の包囲を強行突破して防壁まで、どこに行ったか見当もつかない」

「そう、なのか」


 リビングでチヤがくつろいでいて、椅子に腰かけニマニマと二人の様子を見ている。

 マホロが腕を上げユユキの頬を撫でた。


「眼鏡が、ユユキさんコンタクトにしたんですか?」

「いいや眼鏡は壊れた、マホロが気を失った後に。この部屋に替えもあるけど、私の視力でぎりぎりマホロの顔が見えるからこうして」


 視線を逸らし顔を赤らめマホロの手を振り払う。

 二人の様子を楽しそうに隣の部屋から見ていたチヤが口を挟む。


「嘘だよ、兄貴。ユユキは目が悪くて、しまってある棚の中から見つけられなかった。私が手伝おうとすると煙たがるから。今探し疲れてこうして休憩してたの。膝枕の最中で目が覚めて良かったね兄貴」

「チヤ! 少し黙ってて」


 うれしそうに笑うチヤ、動けないユユキの怒りの矛先がマホロの額に叩かれる形で向けられる。


「ユユキさん眼鏡かけてないのを見るの初めて見る気がする。やっぱ綺麗な目でかわいい顔してるや」

「五月蠅い」


 一際強くペシッとマホロの額を叩いて頬をつねり黙らせた。

 頬をつねる手を放すとマホロは頬をさすりながら膝枕から体を起こしユユキを横に座る。


「そういえば懐かしい夢を見た、王都でユユキさんに初めて会った日のこと」

「奇遇ね、私もこのシェルターに戻ってくるときあなたたちと初めて会った時のことを夢に見たわ」


 ソファーから立ち上がりタンスへと向かうと、手探りで取っ手を引いて引き出しの中を漁り始めた。


「あの時ユユキさんに助けてもらって俺らはここにいる。ほんと、あの時助けてもらって感謝しかない」

「偶然よ。それに私もあなたたちに守ってもらえて、何度となく助けてもらった。今回だって、マホロが私を探してくれたからこそ生きていられているんだもの」


 マホロも立ち上がりタンスの中を漁るユユキのもとへと向かう。

 ユユキの隣に立つマホロ。

 タンスの中身も家具と同じで髪留めやブレスレットなどの女の子らしい色とりどりの小物が入っているのが見えた。


「体が軽い、生体兵器の攻撃をもろに受けたのに? 調子がいいくらいだ」

「注射のおかげね、気を失っていてくれたおかげで嫌な悲鳴を聞かずに済んでよかったわ。汗も、もともと濡れていたしすぐ着替えたから」


「それで、ユユキさんは何を探して?」

「替えの眼鏡よ。王都の紋章の入った眼鏡ケースを探して」


 自力で見つけられないユユキに代わりマホロが探し物をタンスの奥から見つけ彼女に差し出す。

 青と赤の小さなガラス玉がはまっていて二つの間を金の川をかたどった装飾で飾られている眼鏡ケース。


「ありがと」

「どういたしまして、ユユキさんかなり目が悪いんだな。治せないのか?」


 マホロに向き礼を言うとケースから取り出し耳元の髪をかけ上げ眼鏡をかける。

 眼鏡を上げてリビングへと向かうユユキ。

 彼女のを追い大きく伸びをするとマホロも寝室から出ていく。


「さてと。二人と最後に話せてよかった、マホロも目を覚ましたし。これで行けるわ」

「最後?」

「ユユキさんどこかに行くのか?」


「わたしは隊の皆を連れて王都に報告に行かないといけないから。第七世代が逃げたこととドーム内の設備が破壊されたことを、二人とは今度いつ会えるかわからない。それじゃ、しばらくお別れね」

「王都までの護衛は、うちの隊でするんだよな? 黄薔薇隊で」


「ほか二人の健康状態を見て考える。大丈夫そうなら護衛につけるけど、だめそうなら他の隊をつけるわ」

「わかった」


 椅子の背もたれにかけてあった白衣をまといユユキは部屋を出る。

 チヤとマホロもそのあとに続いた。


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