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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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地上、ドームの外へ 5

 第七世代がいなくなった観客席の端で近寄ってきた一般兵に支えられ立ち上がるユユキ。


「ありがとう、もう大丈夫です。第七世代を追いかけてください」


 近くでチヤの声も聞こえユユキは声の聞こえたほうを向いた。

 視界がぼやけユユキは自分の顔に触れて自分が眼鏡をかけていないことに気が付く。


「眼鏡がない、どこに行った」


 ユユキは手探りで周囲を探し青い淵の眼鏡を探す。

 わかりやすい色をした眼鏡は転んだ拍子に外れ第七世代に踏みつぶされ、捻じ曲がったフレームだけを掴む。


「ユユキ! 無事?」


 どこからか聞こえてくるチヤの声に掴んだ眼鏡のフレームを捨て返事を返す。


「何とか。眼鏡が壊れて良く見えない。マホロは無事なの?」


 ユユキは声の聞こえる方向へと座席の背もたれを掴み歩いていると客席通路の階段に躓いて転ぶ。


「わからない、まだ倒れてる……兄貴死んでたりしないよね」

「……私をマホロのところに連れてって」


 縦穴近くに倒れていて一般兵たちに気が付かれなかったマホロのもとへ、チヤは歩けないユユキに手を貸して向かう。


「ごめん……そっち痛めてるから反対側で」

「ごめん」


 エクエリを抱えて丸まるように倒れているマホロ。

 チヤが途中で立ち止まりユユキが彼のもとへと歩いていく。


「マホロ」


 そばでユユキが名前を呼んでも返事は返ってこず、しゃがみ倒れている彼にそっと口元に手をかざす。


「息はしているみたい」

「とりあえず兄貴は生きてるのねよかった」


 胸をなでおろし近くの座席に腰掛けるユユキ。


「そういえば、まだ生体兵器いるよね」

「たぶん、上がってきていないみたいだけど」


 そっと気を失っているマホロからスリングを取って大型のエクエリを持つチヤ。

 静かに呻き自分が肩を痛めていることを思い出すとその痛み耐えエクエリを構えゆっくり縦穴を除く。


「ギガンテスは?」

「いない、どこにいった。下に降りたのかな、どこか……」


 淵に沿って移動し反対側にいないかを確かめユユキのもとへと戻ってくると息を整え淵に半身を乗り出して穴の真下を見る。


「いた、落下したモニターに当たったのかも。穴の下まで落っこちてる。ちょっと遠いからわからないけど、見る限り動いてはいないみたい。落下死したかな、とりあえず撃ってみる」

「他に生体兵器は見えない?」


「穴にはいないよ格子も蜘蛛の巣もみんな壊れた」

「そう、でもここは危ない。ここから移動しよう。とりあえず私の部屋に、医者を呼ぶ」


 生体兵器がいないとわかるとチヤは生きていると確認の取れたマホロのもとへと向かい強化繊維の制服を脱がせ骨や内臓の様子を確かめる。


 ――


 4足で大理石の階段を勢いよく駆け上がり第七世代は正面に太陽の光の差し込む出口を見つける。

 第七世代を追い立てていた一般兵たちは巻き添えを食わないよう階段の途中で立ち止まる。

 連携を取り体の一点を狙ってこない分第七世代の鱗を貫通はしないがそれでも

 他の通路は防火扉が閉まっており一本道。

 出口を見つけ、より一層速度を上げた。


「来たぞ! ずいぶんデカいな外すなよ、撃て!」


 ガラスをを割り入り口を封鎖するように並ぶ三両の陣地防衛用の大型戦車が主砲を第七世代へとむけ真ん中の戦車のハッチから上半身を出した車長の合図と同時に光の弾を放つ。

 天井の高いロビー横に飛び攻撃を避け第七世代は壁に着地して壁を駆けだした。

 攻撃をかわされても冷静に砲塔を回し、戦車砲のエクエリの砲身は第七世代を追いかける。


「撃て!」


 戦車砲のエクエリの次発まで数秒、狙いとエネルギーの充填が終わり壁に向けての第二射。

 第七世代は声に反応し主砲が撃たれる前に飛び噴水を壊し受付を破壊し入り口正面に立つ。

 指示を出していた車長が戦車内に体を引っ込め、第七世代は入り口をふさぐ垂直な装甲に突進。


 重厚な鉄の車体は大型の生体兵器の攻撃を受けて揺れることはあってもひっくり返ることはない。

 その間に左右の戦車が砲塔を動かし、第七世代はその砲身を掴み力づくで狙いをずらす。

 真ん中の一両は第七世代に近すぎて砲身が伏せた背中の上より下を向かず、その巨体を狙えないため車体を前進させ轢き潰そうとする。

 砲塔の対処できず履帯に後ろ脚を轢かれすりつぶされ、第七世代は片足の鎌のような爪の生えた指を失う。


 しかし、一両だけ前に出たことで出口に空間が生まれ第七世代は直進し戦車の上を通ってそのまま出口へと向かった。

 乗り越えた戦車の車体を蹴り跳躍して破壊されたガラス戸から表へと出る。

 高く上る太陽と遠くに見える防壁、そして第七世代を待つ入り口を囲む7両の装甲車。

 銃座につけられた大型のエクエリがその頭を狙う。


 頭を守り光の弾は手や腕は大穴が開いていく立ち止まる暇もなく、正面にあった装甲車に抜けて体当たりをして横転させるとそれを踏み台にオブジェの上に立ち何もない防壁までの道を見回す。

 第七世代の視界内、正面にまっすぐ防壁まで伸びる道その両脇には広く浅い水たまり。

 正面に一台防壁へとむけて走る装甲車が見えるが、第七世代は出口へとむけて最短の道のりを走りだした。


 オブジェを迂回し逃亡する生体兵器の背中に向けて6両の装輪装甲車と3両の陣地防衛用の大型戦車が光の弾を撃ちその巨体を止めようとした。

 身を低く4本の足で走る巨体を追う光の弾は背中や脚、尻尾に当たりその部分の鱗が剥がれる。

 第七世代の向かう先の防壁からの攻撃はない。


 普段防壁にいる一般兵をシェルター内に招いたため、第七世代の接近に対し防衛する人数が足りていない。

 基地は防壁の外側にあり内側の様子は連絡がない限りわからず、防壁にいた一般兵は誰も防壁の内側の警戒をしていなかった。


 エクエリの弾は装甲車の装甲を貫かないため、光の弾は遠慮なく放たれ飛んでくる。

 第七世代に追われる形となった装甲車。

 背後から迫る巨体の影に気がつき慌てて速度をあげるが第七世代のほうが早い。


 体を削る光の弾から身を守るため目の前を走る装甲車を盾にしようとその天板に飛び乗る。

 大型の生体兵器の重量に耐えられず装甲車は真ん中からつぶれ、走る勢いのまま横に横転し眩しい火花を散らせ炎の塊になった。

 動きを止めた装甲車はしっかりと盾となり光の弾を防ぐ。


 装甲車が地面を転がり燃える音で防壁にいた一般兵は初めて第七世代の接近に気が付いた。

 真下へと向かって砲台のエクエリを動かす時間はなく、防壁までたどり着いた第七世代は爪を立てて扉をよじ登る。


 無数のエクエリの弾を体に受け、手足の動きが動きがぎこちなくなるがそれでも第七世代は防壁の上に上がると、逃げ惑う一般兵をしり目に傷ついた足を引きずり防壁を飛び降りシェルターの外へと出ていく。

 防壁内の混乱が収まり砲台のエクエリを動かせるようになるころにはその大きな体は小さくなっていた。

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