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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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地上、ドームの外へ 4

 倒した生体兵器たちを食し大きく育った第七世代。

 頭から尾まで12メートルほど、大型の生体兵器サイズになった第七世代は真っすぐマホロを見る。

 後ろに下がりすでに第七世代を待ち構えていたマホロは第七世代の胴へとむけて引き金を引く。


「この距離で避けるか!」


 エクエリの銃口が向くと同時に上に飛び光の弾を躱すと、縦穴の真上に取り付けてあった大きなモニターに飛びついた。

 真下の闘技場の様子をどの角度でも見れる巨大モニター。

 モニターは大きくひび割れ激しく煌めきながら音を立てて揺れ、天井の吊り具が軋みを上げると第七世代は横に飛んで客席へと降りる。

 大きく揺れるモニターは第七世代の重さに耐えかね天井から外れ真下へと落ちてきた。


「落ちたぞ、伏せろ!」


 マホロは銃口を下ろし後ろを向き強化繊維の制服の袖で頭を守る。

 激しい音を立てるモニターは閉じた縦穴の隔壁の上に落ち、大量のガラス割れて破片となって四方に飛び散った。

 飛び散ったガラス片から身を守ったのち、その際に見失った第七世代を探す。


「兄貴、第七世代は!? 一緒に落ちたの?」

「わからない!」


 落下したモニターの衝撃で隔壁が壊れ、開いた縦穴に壊れたモニターが吸い込まれるように落ちていく。

 少し離れていたユユキが第七世代を見失った二人に居場所を告げる。


「マホロ! 縦穴じゃない反対、客席のほうだ!」


 席を破壊しながら縦穴を迂回するように客席を大きく回り、マホロめがけて4足歩行で突進を仕掛けてきていた。

 迎え撃つようにエクエリを向けるも突進の勢いのまま跳躍、天井に背中をぶつけながらもマホロの背後に着地しエクエリを構え振り返るマホロをそのまま振り返ることなく太い尻尾で鞭打つ。

 振り返ったときには手遅れで防御も間に合わずマホロは弾き飛ばされ、勢いのままマホロは床を転がり縦穴の淵にぶつかり気を失った。


「マホロ!」「兄貴!!」


 遅れて客席の背もたれが転がり中に入っていた綿が宙に舞う。

 床に倒れたマホロが動かなくなると第七世代はチヤとユユキのほうを見る。


「こっちに来る!!」


 マホロを弾き飛ばした尾でバランスを取り二本の足で立ち上がると、一番近くにいたチヤに吠えた。

 咆哮に観客席全体が揺れるように響いて反響する。


「っく……私のエクエリは」


 耳を押さえ数歩後ろに下がり第七世代と向き合ったまま視線をマホロのほうに映すチヤ。

 大型のエクエリはスリングのおかげでどこかへ飛んでいくことはなく、吹き飛ばされてマホロともに縦穴の淵に落ちていた。


「少し遠い、取りに行けない、ダメか……あにき……」


 隙をついて倒れたマホロのもとへと取りに行こうにも、遠くチヤは痛む方を押さえると舌打ちをする。

 そしてユユキだけでも逃がそうと声を張り第七世代の注意を引いた。


「ユユキ! あんた、座席の陰に隠れて移動して出口のほうへ! にげて!!」


 そういってチヤがユユキが死角の外へ行くように駆けだすも、彼女の動きに反応し第七世代が障害物を踏みつぶしながら迫る。

 足音から接近を予測し急停止し向き直るチヤ。

 振り返れば二本の太い腕はすでに降りあがっていた。


「避け切るのは難しいか」


 後ろに引きそのまま倒れこむとチヤの目と鼻の先で大きく手を叩くように第七世代の手が重なった。

 続く追撃、太い前足で客席ごと破壊してマホロと同じように弾き飛ばす。

 両腕で頭を抱えるように防御するも大きな力になすすべなく彼女の体は宙を回転しながら壁のほうまで飛んでいった。

 観客席に静寂が訪れる。


「チヤ……」


 頼りにしていた二人がいとも簡単にやられてしまい、チヤが囮になってくれた間に床に伏せ客席の陰に隠れたユユキは震える両手を強く握りしめた。


 ――縦穴の扉を閉めに行ったあの子からの助けはない、どのみち彼女にできることはないため第七世代が上がってきた時点で裏口から逃げたか、その辺で息をひそめてことが終わるのを待っているか。どのみち私への助けは期待できない、か。


 精鋭二人を黙らせた第七世代は残ったユユキを探す。


 ――二人を食べない? 私を倒してからか、他に何か? 分析は後、守ってくれた二人のためにも私は逃げきらないと……。


 席が壊れる音と重たい足音はゆっくりとユユキに迫ってきて彼女の近くで止まる。


 ――大丈夫、見つかっていない。ここで息を殺していれば、通り過ぎていく……。


 隠れているユユキを発見できず客席の二列ほど先にいた第七世代は、彼女の思惑通りに追い越して通り過ぎていった。


 ――あとは、出口にこのままばれないように進むこと。大丈夫私の匂いを知らないから追えないし聴覚もそこまでじゃない。方向は分かっても何の音かはわからない、うまく逃げられるはず。


 緊張とプレッシャーから胸元を強く抑えた。

 そう考えゆっくりと地面を這って移動を開始したユユキの胸ポケットで携帯端末が鳴る。

 システム復旧の報告のための連絡だったがユユキは出ることなく切った。


「……うそでしょ」


 遠ざかっていた足音は急激に迫ってくる。

 もはや場所はばれてしまい伏せていたユユキは立ち上がり出口めがけ走り出す。


「死にたくない、死にたくない、死にたくない!」


 しかしチヤと同じように逃げ切ることはできず第七世代は前足を振り上げる。

 観客席は緩やかな階段と坂になっていて第七世代の腕が通り過ぎる直前、階段で躓き転倒しユユキはその勢いのまま前転。

 その頭の上を鎌状の爪が風切り音と立てて通りすぎた。


「ひゃふ」


 背後からおぞましい音と風圧を受けユユキが悲鳴を上げ仰向けに倒れたまま第七世代を見上げる。


 直後、観客席の出入り口の戸が開き一般兵が突入してきた。


「正面に生体兵器! 陣形を組め!」


 第七世代を見つけた一般兵たちが壁沿いに左右に広がり小型のエクエリを構えていく。

 突然のことで第七世代が動きを止める。


「人がいる当てるなよ! 撃て!」


 横一列に並んだ一般兵の持つ小型のエクエリから放たれる無数の光の弾。

 状況確認のため止まったもの一瞬、鬣を揺らし太い腕で頭覆い一般兵のもとへと向かっていく第七世代。

 まっすぐ突撃してくる第七世代の太い腕に守られた頭を狙い集中放火する一般兵たち。

 腕の鱗は剥がれ小さい穴がいくつも開いていく。

 すると第七世代は何かに躓き転倒するかのように前転し攻撃個所を頭、背中、尾と分散させる。


「回避!」


 一般兵が転がってくる第七世代から退きそのまま出入口へと通す。


「追撃と救助に別れ、行け。外にいる戦車隊に連絡! 頭を守り転がって避ける、なんなんだあれは?」


 一般兵たちは部隊長の指示に従い、部隊の半数を逃げた第七世代を追わせ残りは生存者の救助に当たる。

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