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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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地上、ドームの外へ 3

 ドームの地上階では暴れないように腕を拘束されているヒロノスケが椅子に座らされていた。

 彼のいる部屋にはゴム弾銃を背負った研究員が二人ドームの地上階だけを映すモニターを見ている。


 つかまり手を拘束された時点で彼は抵抗をやめおとなしくなったため、サーバーを破壊するために守衛室にヒロノスケの数人見張り残し皆ここを離れた。


「サーバーの破壊できたってよ」

「これでようやく濡れずに済むな」


 見張りをしていた研究者たちは濡れないように机の下にしまっていたタオルで顔や頭を拭く。


「誰か一般兵を下に案内しなきゃならないだろ」

「そうだな、サーバールームから正面入り口までは遠いし俺たちのどっちかが行くか?」


 そんな話を聞きヒロノスケはゆっくりと立ち上がる。


 ――このままここにいれば俺はあの生意気な餓鬼とまた話すことになる。くそっ、全部あいつが悪いのに、あの餓鬼が生意気なのいけないくせに。くだらない仕事を押し付けて、あの餓鬼はあちこち自由気ままに作業に参加しているだけ。俺がこのままこのシェルターで捕まったら最悪事故に見せかけて生体兵器の襲わせるつもりだ、そうだそうに違いない。生体兵器を逃がして俺を殺す気なんだ、逃げてやる。こんなところから。一般兵がこのドームに集まっているということは正面入り口には車両があるはずだ、それで門まで行けば門を開けてくれる、そのままここからおさらばだ。俺の能力を高く評価してくれるシェルターへと移住しよう、何枚も書類を書くのが面倒だが死ぬよりはましだ。


 見張りの二人は水にぬれても故障しなかったモニターを見て、正面入り口で待機している一般兵たちを見ていた。

 モニターが映すドームの外にいる一般兵たちはガラス戸を覆うように閉ざされた分厚い鉄板のシャッターが開くのを待ち、エクエリを構え三列に並んで突入の準備を進めている。


 映像に夢中になっている研究員たち気づかれずヒロノスケはこっそり部屋を出ていくつもりだった。


「おい何している!」

「なんだ? あ、おい、逃げる気か!」


 見張りを押しのけヒロノスケは走り出す。

 一度走り出すとひ弱な研究員の見張りでは止めることができない。

 目の前にいるにもかかわらず見張りの研究員二人はどちらもゴム弾銃で止めようとするのではなく他と連絡を取る。


「拘束していたやつが逃げ出した応援を頼む、こちらでは対処できない」

「突然暴れてだして、俺たちじゃ手に負えないんだ」


 怪我をするのが嫌で自分たちで解決する気のないうその報告をする見張り達。

 邪魔するものはなくヒロノスケはすんなり守衛室から出ることができた。

 目指す先はまっすぐ正面出入口、今まさに分厚いシャッターが開きガラス戸をたたき割り一般兵たちが流れ込んできていた。


「おい、そこの研究員。地下兵入り口はどこだ?」


 一般兵の一人がヒロノスケに近寄ってくるがいちいち説明も面倒なので怒なりつける。


「どけどけ! 邪魔をするな!」


 すごい剣幕で怒鳴りながら走るので近寄ってきた一般兵はそれ以上近寄らず通させた。

 まっすぐ突っ込んでくるヒロノスケを躱し道を開ける一般兵たち。


「気をつけろ生体兵器がすぐそばまで来ているのかもしれない。総員、弓の陣系を取れ!」


 ヒロノスケの慌てようから状況を誤解し、首をかしげながらも一般兵たちはロビーに広がり生体兵器を警戒する。



 地上でヒロノスケが逃げ出しているころ、観客席へと上がってくるとユユキと部下は大きく息をつく。

 長い縦穴を抜け肩を痛め遅れているチヤ以外は観客席へとのぼりきった。


「チヤ、もう少しだ」

「きっつ。兄貴、後ろ生体兵器来てない? 梯子がなんか揺れてる気がするんだけど」


 かなり下、進路をふさぐように張ってあった蜘蛛の糸をものともせず先ほど休んでいた格子をギガンテスがその鋏を振るいねじ切っていた。

 外骨格に無数のひっかき傷をつけても殻を割れず、全く反応しないため第七世代はその後ろをただついていく。


「来ている、エビみたいなやつだ。でも格子のところで止まってる。ゆっくり落ち着いて登ってこい」

「ギガンテスはヤドカリだ、脚が遅いが砲台のエクエリすら防ぐ高密度の外骨格を持っている。普通に戦えば第七世代でも倒せるはずだが、壁に摑まっていて本来の力を出せていないんだと思う」


 マホロのそばでユユキが下を覗き込む。

 格子は大きく捻じ曲げられギガンテスは格子を超えた。


「だそうだ、チヤ、登ってくるのはだいぶ先だろうけどその後ろに第七世代がいる。あいつはこっちに向かってくるかもしれない」


 二人の後ろでナユタがふらふらと立ち上がると客席の坂を上がっていく。


「ユユキ様。私、縦穴の非常用の門を閉めてきますね」

「ああ、そういえばそんなものあったわね。でも、あの格子より鉄板の厚さ薄いから閉めてもギガンテス相手なら無駄かもよ」


 ギガンテスが出ていき開いた空間から第七世代が後に続いて上に上がってくる。

 攻撃が通じないギガンテスを追い越し上へと向かってきた。


「閉めるの間に合うのか」

「いいや、間に合わない」


 やっと上がってきたチヤを引き上げマホロは大型のエクエリを第七世代へとむけるとその頭へと狙いをつける。

 飛んでくる光の弾に第七世代は異常な反応をし飛びのく。

 垂直な壁から離れたことで第七世代は落ちていくが、すぐに爪を立てて長い爪痕を残して落下の勢いを殺し再び上ってくる。


「兄貴、炸裂式雷撃弾」

「おう」


 エクエリの弾を身に受けずに一つ一つを躱しながら登ってくる。

 炸裂式雷撃弾はじかに当てないでも近くに着弾すれば、青白い電流が狙っている第七世代の行動を鈍らせ運が良ければ下まで落下させることができる。

 いくら体が丈夫でも100メートル近く勢いよく落下すれば助かることはできないと考えマホロは第七世代を殺すことではなく落とすことに集中する。


「数が、大型のエクエリ一丁じゃ予測されて避けられちまう。慎重なやつだな、1,2発受けてくれてもいいのに」


 初めは避けるたびに落下していたが、次第に横に飛んで躱し始め最終的には斜め上に避け登り始めた。


「ダメか上がられる! ユユキさん、チヤ、離れて!」


 逃げた生体兵器用の縦穴の扉が閉まり始めるが、それに間に合わず第七世代は観客席へと上がってくる。

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