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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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地上、ドームの外へ 1

 壁をよじ登っていった第七世代にエクエリを向けていたチヤが銃口を下に向けあたりを見回す。

 フォッシビバンもマホロたちと戦う余裕はなく注意を第七世代に向け、尾から長い毒針を出し糸玉を躱した迎え撃つ体制をとった。


「私も糸見たときに思ったけどさ、兄貴。何も言わずに行かれると心臓に悪いから、ちゃんと何するか今度から前もって言って」

「悪かった」


「で、第七世代が唯一の逃げ道である上に行っちゃったけどどうすんの」

「ユユキさんたちを逃がすなら倒すしかないんだろうけど、どうすっかな。エクエリ真上に向けると重さで狙いぶれるんだよなぁ。当てようにも向こうから近寄ってきてくれないと、俺、狙撃苦手なんだよ。はぁ、うっかり足滑らして落下死してくんないかな」


「知ってるけどさ、超大型のエクエリ持っておいて狙撃苦手って駄目だよね? しっかし私も真上は重くて狙うことすら危うい、どこかに移動して少し位置変えない? 重さのバランス的に上に向けるようにできてないんだよ、固定銃座欲しい」

「チヤ、後ろ。また来た。サイズ的に逃げた生体兵器だろうな」


 ユユキたちが来た反対側の通路から現れた茶色の固まり、中型の生体兵器であるブレイクタイラントが現れた。

 ふさふさとした茶色の毛はスプリンクラーの水で濡れ体に張り付いている。

 振り返って新たに現れたブレイクタイラントの姿を確認したチヤは軽い舌打ちをした。


「出口がここしかないから次々と集まってくるみたいだ」


 デスサイズとの戦闘の邪魔にならないように伏せていたユユキが、チヤとマホロの会話から顔を上げ戦闘が終わったのを確認して立ち上がった。

 周囲を見回し糸に絡まって第七世代に潰されて息絶えたデスサイズを見て安堵し、背後にいるブレイクタイラントをみて表情をこわばらせる。


「エレベーターの縦穴が上に続いているから、上を目指す生体兵器がここに集まってくる。とどまるのはあまりよくない」


 同じく伏せていたユユキの部下も立ち上がりマホロたちのそばへと寄りユユキの肩を掴む。


「早く倒しちゃってくださいよ、もうすぐ出口なんですから。ユユキ様、一緒に居ましょう!」

「あなたは私を盾にしたいだけでしょう?」


 デスサイズ同様、広い闘技場内の状況を確認していたブレイクタイラント。

 チヤが大型のエクエリの銃口を向けるとそれに反応して広げていた脚をたたみ体のそばに寄せ攻撃する構えを取る。


「とりあえず上の蜘蛛は第七世代の相手で忙しいでしょ、あいつの相手をする」

「俺がやろうか?」


 マホロが手を伸ばすがチヤはそれを拒んで大型のエクエリを体の後ろに隠す。


「兄貴に任せてるとまどろっこしい、私がやる私のエクエリだし。兄貴はユユキを守ってて」

「そういわれてもなぁ、とりあえずユユキさん何かあったら盾になるから俺のそばにいて」


 ユユキと女性がマホロのそばによりそれに反応して飛び掛かってくるブレイクタイラント。

 短く太い脚を機械の部品のように激しく動かし距離を詰めてくる。

 チヤが頭を狙ってエクエリを撃ちこむもチヤめがけて走ってくる巨体が止まることはない。

 マホロが非戦闘員二人を抱えて、チヤも横に飛んで勢いのついた突撃をかわす。


 巨体は小型の蜘蛛が張った糸を切りチヤのいた場所を通り過ぎて、勢いで床を少し滑ったがすぐに避けたチヤたちに向き直る。


「はっや!」


 尻もちをついて躱したチヤがその速さに驚く。


「脚が短くてよかった、足が長かったら蹴り飛ばされて孤立する」

「短い脚は狭いところを自由に行き来できるようになっている。捕まえたのは廃墟の都市で別の生体兵器を追っている最中たまたま罠にかかったと報告にあった。通路や閉所、瓦礫の間などの狭いところでの戦闘に特化し、姿の割にかなり旋回性能が高い」


 再び突撃される前にチヤは目の前まで迫ってきたブレイクタイラントへとエクエリを撃つ。

 光の弾は確かに命中したがひるんだ様子はない、体に穴をあけられながらも再び突撃してくるブレイクタイラント。


 攻撃すれば距離を取ると思っていたチヤが回避が間に合わずブレイクタイラントに摑まった。


「チヤっ!」

「このくそっ!! 放せ!」


 腕を差し出したことで頭から噛まれることはなかったが、のしかかられ身動きを封じられてエクエリを持つこともできず、頭を守る以外にできることはない。

 床に張り倒されたチヤの強化繊維の制服の袖から服を伝って体へと注入される予定だった溶解液が流れる。


「アッツ!!」

「強力な毒だ、蜘蛛は蟷螂のように食べながら溶かすわけでない。溶かしてから吸うんだ、筋肉や内臓を溶かす。毒は皮膚をすぐに溶かすほどではないから傷を負っていなかったら大丈夫、相手は対生体兵器用の生体兵器、強化繊維でも長くはもたないかもしれない。熱いのはただただ生体兵器自体の体温が高いからと水にぬれて私たちの体温が低いからそう感じているだけ、まだ皮膚が解けているわけでない、目や口に絶対に入れないで!!」


 小型の蜘蛛の死骸の脚を掴んでマホロがブレイクタイラントへと向かっていくと、それを振り回して茶色の体にたたきつけた。

 エクエリに大穴を開けられ脆くなっていた体が何度も殴っているうちに千切ればらけて床へと散らばる。


「チヤを放せ! くそ、ユユキさんなんかないのか!!」


 ユユキがポケットをあさり制服に手を突っ込んだままうなだれる。


「力になれない……」


 足を内またにハの字にして小鹿のように震えさせたナユタが肩をがっちりと掴んでユユキを盾にしていて前にも後ろにも移動できない。

 ブレイクタイラントはエクエリによる反撃はないとわかると安心して抵抗するチヤを殺すため毒を注ぎなおすがそれも制服を伝って床へと流れていく。


 チヤとともにブレイクタイラントの下敷きとなって大型のエクエリが使えない以上、この場から逃げてもエクエリなしでは生体兵器から逃げ切ることはない。

 それをわかって逃げたい女性もユユキたちから離れず震えている。


 そんな時に4人の目の前に巨体が落下してきた。

 長い脚が四方に広がりマホロたちとユユキたちを分断された。


「ひゃあ!!」「なに、なんなの!?」


 ブレイクタイラントに集中していて完全に意識の外にいたフォッシビバンの登場に腰を抜かすユユキたち。

 フォッシビバンの本数の減った長いの一本の脚がブレイクタイラントに当たり、驚いた巨体がチヤを放し退くと前足を大きく上げて威嚇する。

 その隙を見てマホロがチヤの肩から下がっていた大型のエクエリのスリングを掴んで自分のもとへと引き寄せた。

 ユユキが上を見上げれば脚の何本かが巣に引っ掛かったままで、体から離れた脚が振り子のように揺れている。


「第七世代は? どこに行った、上? 湯気であまり上は見えない、どこにもいない」


 上を見てもう一匹の生体兵器を探すユユキの呼びかけに返事をするようにフォッシビバンの陰から姿を現す第七世代。

 仰向けに起きてきたフォッシビバンの頭を踏み砕き、その腹に噛みつくと体を裂き勝利の咆哮を上げる。

 頭を失ったフォッシビバンはゆっくりと四方に広げた長い足を体のほうへと丸めていく。

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