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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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糸の結界 9

 マホロがフォッシビバンへとむけてエクエリを撃つも、大きな体に数発当てても動きを止めることはない。

 降下中にマホロが炸裂式雷撃弾で倒した小型の蜘蛛の死骸を引き上げ盾として活用し攻撃を防いだ。


 フォッシビバンの掴んでいる糸を切って床へと落下させようにも、一本一本の糸は極端に細く肉眼で見るには困難でしかも複数本立体的に張られているため、まぐれなどで数本切ったところで巣には影響はなく巨体が落ちてくる気配はない。


「細い糸はあんな巨体が乗っているのによく耐えるな」

「生体兵器だから」


「それで説明できちゃうのか」

「それ以外に説明できない」


「そんな説明でいいのか生体兵器研究家」

「今専門的な話をしている場合でもないでしょ、話すと結構長いんだから」


 闘技場の光がいくつか減ったことで眩しくなくなり、見えるようになったフォッシビバンのいる巣には白い繭のようなものがいくつもくっついていた。

 ユユキは眼鏡をかけなおすと目を凝らしそれをよく見ようとする。

 他の生体兵器のものかと警戒したが繭の糸が薄い部分からエクエリの銃口や戦闘服の端が見えた。


「あの白玉の中身は人だ……地下にいた一般兵と地下の作業員」

「生きていると思うか?」


「無理だろう、毒針も刺されているはず。もしかしたら繭の中身は食しやすいようにどろどろになっているかもしれない」

「なら悪いけど躊躇はできない、流れ弾で当たるかもだけど遠慮なしで行く」


 周囲の様子をうかがっていたデスサイズが動き出す。


「兄貴、百足も動き出した!」

「オッケー、どっちも仕留めてやる」


 床に頭を抱えて伏せるユユキたちをちらりと見て近寄ってくるデスサイズへと銃口を向け、赤い頭が銃口から体を逸らそうと向きを変える。


「思いのほか反応いいな、援護なしじゃ厳しい速さだ」

「兄貴が倒せないなら私がやる」


 何かを考えスリングを取ってチヤに渡す。


「そうだな、なら、ちょっと任せていいかチヤ」

「何するの兄貴」


 疑問符を浮かべながらも大型のエクエリを受け取り素早くデスサイズに向けるチヤ。

 そしてマホロはデスサイズへと向かって慎重に歩いていく。


「兄貴!?」「何してるどこに行くマホロ!」


 一人離れていくマホロにチヤとユユキが心配し声を上げる。

 いくら丈夫な強化繊維でも顔や手などは保護されておらずそこらを狙われれば普通に死ぬ。

 また掴まれたり投げられたり吹っ飛ばされたりなどの攻撃にはダメージを軽減するだけで勢いだけは対処できない。


 一歩づつ慎重にそして十数歩進んでチヤたちから完全に孤立しマホロは上からの水が滴ってできた滝の前に立つ。

 一人でノコノコと出てきたマホロをデスサイズはわざわざ見逃したりはしない。

 触角が細かく動き素早くマホロに狙いをつけ飛び掛かった。


「避けて!」


 チヤが大型のエクエリで狙いをつけるも間に合わない。

 しかしデスサイズはマホロに当たることはなかった。

 デスサイズは見えない壁に当たったかのように空中で急停止し驚くチヤとユユキ。


「チヤ!」


 驚いたが攻撃のチャンスは逃さないチヤは動きの止まったデスサイズの触角を狙って撃つ。

 片方の触角が吹き飛び床に落ちた。


「何が起きたの?」

「見えているこれは滝じゃない、糸を伝って水が流れている。さすが生体兵器の糸、びくともしない。いや、少しヒヤッとしたけどさ」


 触角を失い全速力で距離を取る、触覚を片方失った代償は大きくふらつき軸がぶれるように移動していた。

 触角を失いデスサイズの注意がマホロたちに向いていて勢いよく迫ってきた存在に気が付かなかった。


 フォッシビバンの糸玉はデスサイズを狙いその黒く長い体に張り付く。

 反射的に身をよじり糸玉をはずそうとするデスサイズ。

 しかしほかの脚を巻き込み体に引っ付きデスサイズが自ら糸にくっついて身動きができなくなると、その糸玉を引き上げる。


「潰しあってる、百足は……あれはもう逃げられないな」

「兄貴はさっさとこっちに戻ってきて。今なら上のやつも油断している」


 フォッシビバンは糸を引き上げるのに夢中、そのすきを狙おうとチヤがエクエリを真上に向ける。


「オッケー、引き上げるため下に降りてきてる」


 口元が緩み引き金に指をかけるチヤ、だがエクエリの銃口が狙った先のフォッシビバンが大きく揺れる。

 強力な力で下へと引っ張られたようで巣の糸から足が外れ下に落ちかけたが、糸玉とつながっていた糸を切り体を支えていた二本の脚が引っ張られる力に耐え抜きかろうじて巣にとどまった。


「だいななせだい……」

「下であった時より大きくなってないかユユキさん?」


 ユユキのつぶやきにチヤはデスサイズへと視線を向ける。

 その腕の強力な一撃でデスサイズの頭を潰していた。


「自分から糸玉に触れに行った」


 マホロたちを出会ったとき下の廊下でもあった巨大な咆哮を一度上げると、両手でつかみデスサイズの死骸を掴み口へと運び入れる。

 第七世代は上へと引き上げられていたデスサイズへと飛びついたときに粘着性の糸が腕や顎に絡みついたがそれを力ずくで引きちぎった。


「おいおい、丈夫な糸を引きちぎりやがった」

「粘着性の糸のほうはちぎれやすい、捕まえて糸で丸めるのに強度は邪魔でしかないから。ま、それでも人の力ではどうにもできない硬さだけど」


 周囲を見回し瞬発力は数十メートルを一気に駆け次の獲物にせまる。

 太い腕と足で壁を上り第七世代はフォッシビバンのもとへと昇っていく。


「俺らなんで無視されてる?」

「大きければ強いって判断だと思う。それに私たち大型エクエリをまだ第七世代に撃っていないから、脅威もわかっていないはず。だから糸玉を作るフォッシビバンのほうが危険と判断したのかも」


「うまく利用すればあのでかいやつを落とせるな、高いところのやつは倒しずらかったんだ。第七世代なら近距離攻撃しかなさそうだし大型一丁でも当たればダメージを受けるだろうし、昆虫型と違って頭潰しても動くことなんてないから倒せるはず」

「倒すイメージはできているのか」


 生体兵器同士の戦いに横やりは刺さず成り行きを見ているマホロたち。

 上ってくるのを黙ってみているわけでもなくフォッシビバンは再度糸玉を作り登ってくる第七世代へとむけて投げ落とした。

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